侍ジャパンU-15代表でアジアNo.1の上加世田頼希・渡辺優斗が再びバッテリーを組み甲子園目指す
大阪の強豪軟式クラブチーム・門真ビックドリームスの右腕・上加世田頼希(うえかせだ・らいき)と捕手・渡辺優斗(わたなべ・ゆうと)のバッテリーは、昨夏に揃って侍ジャパンU-15代表に選出された。
彼らが戦ったのは2018年8月19日から25日まで中国広東省深セン市で行われた第10回BFA U15アジア選手権。
同選手権では、アジア地域における野球の普及と発展のため、硬式球に近い性質でありながらも安全性が高く、表面が革でなくゴム素材のため雨の多い国でも長持ちするKENKO WORLD BALL(通称Kボール)を使用。そのため、U-15代表の選手たちは一般財団法人日本中学生野球連盟が主管し、中学校の野球部やクラブチームで軟式野球をしている選手たち約18万名から18名が選ばれた。
その狭き門を突破したのが昨春の文部科学大臣杯全日本少年春季軟式野球大会で4強入りを果たした上加世田と渡辺だった。
初めての海外で躍動
強化合宿時から2人の存在感は大きかった。実力もさることながら明るい笑顔が仲間や指導陣を和ませる一面もあり、実力面・精神面ともに中心選手として海を渡った。
ともに初の海外。特に上加世田は「環境に加えてご飯も違うので、だいぶ酷いホームシックだったと思います」と苦笑いで振り返るが、今度は仲間たちが「今から本番や。今落ち込んでどないすんねん」と力をくれた。
そして大会に入ってからはその異国の慣れない環境で試合することをむしろアドレナリンとするような獅子奮迅の活躍を見せる。
エース格を任された上加世田は山場となる台湾戦と韓国戦に先発。130キロ台後半のストレートとスライダー、チェンジアップ、スプリットなどを制球良く投げ込んだ。
昨年のU-15W杯で日本を破り3位に入るなど身体能力の高い台湾戦では「ストレートとスプリットが良かったです」と振り返ったように、4回1安打無失点で試合を作った。また、韓国戦では長打や四死球で出塁を許し大会規定による球数制限がある中で苦しい投球にはなったが、味方の好守や要所を締める投球を見せて3回途中までの登板で相手にホームを踏ませなかった。
その両試合では正捕手の渡辺も大きな存在感を見せた。台湾戦では好投手たちから2安打を放ち、韓国戦ではショートバウンドの送球を上手くすくい上げて走者にタッチし先制のピンチを防いだり、盗塁を刺すなどして上加世田ら投手陣を強力にサポート。好リードで大会無失点の快挙に導くなど、大会の最高殊勲選手にも選出された。
2人の活躍は日本勢として初となる大会連覇と海外開催での優勝に欠かすことはできなかった。
再びバッテリーで目指す大舞台
アジアNo.1の栄冠に輝いた2人だが慢心は一切ない。
「いろんな人が侍ジャパンとして見ると思うので人間性や当たり前のことを当たり前にするように意識しました」(上加世田)
「日の丸を初めて背負ったので、いらんこと・恥ずかしいことはできないなと感じました」(渡辺)
年始に訪れた門真ビッグドリームスの練習で、2人はこの日の練習場所となった河川敷のグラウンドでハツラツと白い息を吐きながら変わらぬ笑顔で練習に励んでいた。
「これが高校野球1回目の冬季練習になるように」
2人はこう口を揃えた。そして、ともに福井県の敦賀気比高校に進む。侍ジャパンの吉田正尚(オリックス)やNPB通算1366安打を放った東出輝裕(広島一軍打撃コーチ)らを輩出し、2015年のセンバツ甲子園で全国制覇を果たした全国的強豪だ。
そこで競争に勝ち抜き、ともにバッテリーを組んで再び大舞台を目指す。
「一番の決め手は(上加世田)頼希とまたバッテリーを組みたかったからです。侍では優勝できましたが、全国優勝はできなかったので、高校で日本一になりたいです」(渡辺)
「侍では捕手がナベちゃんだから、いろんなことを知っていてくれて助かりました。良きパートナーって感じですね。甲子園にバッテリーで出たいですし、2人でまた侍ジャパンに入りたいです」(上加世田)
2人のこの弾ける笑顔を次は甲子園で、そして再び日の丸を背負う国際舞台で見てみたい。
文・写真=高木遊