誰が付け足した?ハリケーンの予報円に疑惑の線
先週からアメリカでは、ハリケーン・ドリアンを巡る、ある騒動が話題になっています。ウォーターゲートならぬ「シャーピーゲイト」と名付けられたそれは、非難する者があれば、笑う者ありの、様々な反応をもたらしています。
シャーピー=アメリカ定番のマーカー
一体「シャーピーゲイト」とは何でしょうか。
シャーピーとは、アメリカで定番のペンの商品名です。食品用ラップをサランラップ、絆創膏をバンドエイドと呼ぶ人がいるように、アメリカの油性マジックペンで大きなシェアを占めているシャーピーは、ペンの一般名詞として使われています。
このシャーピーを使って、ある人がハリケーンの予報円を勝手に書き加えた可能性が出ています。そしてこれがウォーターゲートをもじって、「シャーピーゲイト」と名付けられているのです。
疑惑の線
問題となっているのが、今月4日(水)にトランプ大統領が行ったハリケーン・ドリアンの会見です。
この時大統領は、国立ハリケーンセンターが発表したドリアンの予報進路図のフリップを見せていました(タイトルの写真)。ハリケーンの中心が通る可能性のある地域が白い線で囲まれています。しかしよく見ると、手書きのいびつな線がアラバマ州に書き足されているのがわかります。
トランプ大統領が当局の予報を無視して、これを勝手に書き加えたのではないかという疑惑が出ているのです。
アメリカ政府の忖度?
この会見が行われた直後、アラバマ州バーミンガムの気象局(NWS)は、アラバマにハリケーンの恐れはないとツイッターに投稿しました。
しかしその後、海洋大気庁(NOAA)が、当時の予想ではアラバマにも影響が及ぶ恐れが多かれ少なかれあった、という声明を公式に発表し、大統領を擁護し、アラバマ州の気象局を強い表現で批判しました。
いわゆる忖度かと思っていましたが、ニューヨークタイムズによると、NOAAを所管する商務省の長官がNOAAの幹部に直接圧力をかけていた可能性があるようです。
一方NOAAには権力にも屈しない立派なリーダーもいるようです。
ワシントンポストの記事によると、NOAAのチーフ科学者は、この公式声明は「政治的」で「公衆衛生と安全に対する危機」であるとし、調査し始めているようです。
(↑アラバマ州の気象局が投稿)
シャーピーでいたずら書き
このシャーピーゲート事件が起きてからというもの、シャーピーで線や絵が書き足された滑稽な写真や図がSNSに投稿されています。
例えば下の図は、アメリカの領土線が引き延ばされて、トランプ大統領が欲しがっているグリーンランドも包含してしまっています。
さらにトランプ大統領がゴルフ好きであることから、線を引いてホールを大きくしてみたり、トランプ大統領の就任式の写真を黒く塗って、オバマ大統領の時よりも多くの聴衆がいるように加工しています。
罪に問われる?
大統領はこの疑惑の進路図について「知らない (I don’t know)」と発言していますが、アメリカのコーネルロースクールのウェブサイトによると、もし虚偽の気象予報を意図的に発表した場合、90日以下の禁固刑や罰金が科される可能性があるそうです。