ノルウェーのフィヨルドをゴミ箱にするな!若者の異例の抗議で逮捕者続出
ノルウェーといえば、美しいフィヨルドが有名だ。環境問題に熱心な国で、今若者たちが政府の決断に大きな抗議の声をあげている。
環境省はフォルデ・フィヨルドにエンゲブー山からの尾鉱を投棄することを許可。「海の生態系を破壊する」と多くの左派政党や環境団体が抗議した。10~20代の若者たちは声をあげるだけではなく、自ら行動にうつした。
4~10時間の無抵抗の抗議活動、工事会社は作業を中断
ノルウェーの「自然と青年」団体が中心となり、国内でもめったにおこなわれない非暴力の市民的不服従運動を開始。代表のイングリ・ショルヴァール氏(20)に問い合わせたところ、警察がくるまで18~25歳の若者60人以上が、毎日4時間ほど交代で抗議活動をしているという。長い時には1日10時間に及ぶことも。工事する人々のトラックに座りこむため、工事会社は作業の中断を余儀なくされる。
逮捕され、30万円以上の罰金命令。「法的手段で戦うよ」
2月2日から、最大政党である労働党を含め、左派社会党、緑の環境党、赤党の4党の青年部の代表と連日抗議。労働党以外の青年部代表たちは、警察にも逮捕された。すでに2度逮捕されたショルヴァール氏は、「警察官は親切なので、怖くはなかった。問題は罰金ね。私だけでも32万円は払わないといけないのだけれど、他の青年部代表も支払いは拒否しているから、一緒に法的手段で対抗することになると思う」とさらりと話した。
投棄を許可した環境大臣に批判殺到
抗議する団体に、環境大臣が立ち寄り、説得する姿も。しかし、投棄を許可した環境大臣に若者たちは抗議をし続ける。連日の活動は、国営放送局など、多くのメディアで報道されている。
「市民的不服従」はノルウェーでは通常はおこなわれないが、「自然破壊活動への最終的な抗議手段」だと、緑の環境党の青年部代表ラーゲ・ヌスト氏(24)は取材で語る。工業資源企業のノルディック・マイニング社と環境省が、「短期的な利益のためだけに」決定したことに、「自らの反対の意思を表示したかった」と話す。
左派社会党の青年部代表ニコラス・ウィルキンソン(27、写真冒頭)は、「フィヨルドに鉱山の尾鉱を投棄すること自体が、ノルウェーでは普通ではない。若者が抗議するのは当たり前のこと。警察は怖くなかった、彼らは彼らの仕事、僕たちは僕たちの仕事をしただけだからね」。
全ての若者がこの動きに同調しているわけではない。与党・進歩党の青年部の代表アトレ・シモンセン氏は、この産業活動は300~500人の若者の新たな雇用を意味すると主張(framtida.no)。左派政党の「緑政策」と抗議活動は、経済活動を促進させないとしている。
ショルヴァール氏は、抗議活動はいつまで続くかわからないと語る。
Text:Asaki Abumi