Yahoo!ニュース

子どもの病気、上司の理解なく壮絶な日々

なかのかおりジャーナリスト(福祉・医療・労働)、早稲田大研究所招聘研究員
子どもの病気による遅刻早退、欠勤の多さに評価はがた落ちだった(写真:アフロ)

春に育児休暇から復職する人は準備の時期だ。娘は1歳の時に保育園に入り、4歳ごろまで病気が多かった。私は会社を遅刻早退したり、欠勤したりと支障が出て、退職につながった。子どもは病気をして免疫をつけるので、悪いことではない。だが復職の前に、よく病気をすることを知っていれば、親子も周囲の人も大変さを少しは減らせると思う。体験レポートの2回目は、さらに激しくなって対処法を変えた3歳からの様子を紹介する。

1回目はこちら→育休から復帰、どうする子どもの病気

「子どもの病気2」(子育て支援NPOのサイトで連載した「アラフォー初めてママのときどきドキドキジャーナル」より)

4月に、育児休暇から復帰のママも多いでしょうか。

3年前、私が復帰して一番、苦しかったのは娘の病気でした。初めての病気は、生後6カ月のときのかぜ。娘がかわいそうだし、ママはどうしていいかわからず不安でいっぱい。

だけど、1歳で保育園に入ってからのほうが強烈。夏、高熱で熱性けいれんが起きて救急車に。2歳の春は胃腸炎でけいれん。ママもうつって親子で救急外来へ。夏はヘルパンギーナの高熱でけいれんが起き、けいれん止めを常備するようになりました。

毎月、病気がやってきた3歳

その後、3歳クラスの1年間を振り返ると、病気が減ったわけでもなく…。だいたい毎月、何かがやってきました。4月は発熱と初の中耳炎。夜に「お耳が痛い」と言い出し、痛み止めと冷たいまくらで応急手当て。

6月は発熱。7~8月はリンゴ病2回と手足口病。熱はなかったり、すぐ下がったりでしたが、やはり「夏は夏かぜ」でした。下痢やけろけろのない胃腸炎にも。9月は旅行先で繰り返し「おなかが痛い」と泣き、救急外来に。

アデノウイルスで登園停止

10月にはアデノウイルス。同じクラスのお友達ふたりとクリニックで一緒になり、検査したところ娘だけ陽性。初めての「登園停止」です。検査しないでわからないケースもあるでしょうけど、わかってしまったので。

熱はすぐ下がり、それから数日、自宅で療養。気がまぎれるドリルや食料を買い込み、大人が交代でお留守番です。娘にしてみれば、元気なのにお出かけできないの?とストレス。病気の合間に、夏のお祭りや運動会、遠足といった行事は参加できたのでラッキーでした。

胃腸炎で「マーライオン」

師走は、胃腸炎が続けて来ました。熱が出るタイプの胃腸炎にかかり、治って保育園のクリ

スマス会に参加。その後すぐ、症状が違う胃腸炎に。夕方、保育園から「吐いた」と連絡があり、自宅で様子を見ると、どんどん激しくなりました。

「口から噴水のマーライオン」みたいにぴゅーっとなったので、タクシーで夜間小児科へ。待合室に、別の親が書いたであろう「5回、おうと」などのメモが落ちていて、はやっているのね…としみじみ。

担当はベテランのドクター。「赤ちゃんのときから吐きやすいのね。その子によるからね」。話をするだけで、看病で舞い上がっている親が冷静になれます。

「ママ、お仕事行かないで」

次の日はお休みして、水を飲んでも吐きました。3日目はけろけろが止まったので、保育園に連れて行こうと思ったら、「ママ、お仕事行かないで」「保育園に行きたくない」と繰り返します。

病院に行ってから考えようね、とクリニックに行くと、脱水になっていました。「けろけろが止まったから大丈夫。ママは会社も休めないし」って思い込んでいた。

確かに前日からほとんど水分をとれていない。点滴は、いやがってできず。吐き気止めを使って、幼児用のイオン水を飲ませてお昼寝したら、少しずつ食べられるようになりました。

親もうつってさらに欠勤

薬やドリンクについては賛否ありますが、このときは役立ちました。脱水で体がきついのを「お仕事、行かないで」って、必死に訴えていたのね。ごめん。

このあと、私がうつって激しい胃腸炎になり、倒れました。看病で半休ばかりだったのに、また?って自分でつっこみながら会社へ電話。職場の人にうつしたら困るので、無念の病欠でした。

100円ショップで買っておいたおもちゃ。子どもが持て余す病気療養の時に出した
100円ショップで買っておいたおもちゃ。子どもが持て余す病気療養の時に出した

一度は陰性もやはりインフル

この2月には娘が初めてのインフルエンザにかかりました。予防接種も2回、受けたし、保育園で大流行のときはセーフだったのに。急に高熱が出て、1回目の検査では陰性。翌朝に吐いてあまりに機嫌が悪いので、救急に連れて行きました。「検査はどうしますか」と言われ、決着をつけたいと再び。プラスが出ました。

インフルと診断されてしまうと、熱が下がっても3日間は登園停止。少なくとも1週間、お休みです。ふだん保育園にいる時間が長いので、ここぞとばかりママにべったり。チュウするし、寝るときもママのまくらに乗ってくる。

「仕事が中途半端」と言われ

奇跡的にうつらなかったけど、薬や水分をどうやって飲ませるかで気をもみ…。回復して「うどん食べる!」と言われたときは、看病疲れのママも胸きゅん。休み明けは保育園でぐったり、調子が出なかったみたいです。

クラスのお友達と比べ、病気が多い娘。1~2歳のときは「高熱でも、病児保育に預けて出勤」が基本でした。それでも手配や通院で遅刻しますし、「熱が40度に上がったから帰って来て」と連絡があれば早退になります。職場で「仕事が中途半端」「遅刻や早退が多くて困る」と言われたのが悲しかった。

試行錯誤、「1日目はママが休む」

親子で頑張ってみた結果、いまは「1日目は、ママが休む」ことが多いです。顔なじみのシッターさんに何人か連絡し半日でも可能な人を探しますが、急だと難しい。病児保育のシッターは高額で、預けるストレスがあり、断念しました。

娘の自我が強くなって「ママがいい」と主張します。大人だって体調が悪いのに初めての人に気をつかうのは疲れますよね。病院の病児保育室も利用したものの、タクシー代がかかったり、ほかの病気がうつったりでした。先輩ママに言われたように、出だしに親子で休むと治りも早い気がします。

必死に預けて出勤した理由

1~2歳のとき、なぜ必死に預けて出勤していたのか。「欠勤すると怒られる」というママの気持ちが上回っていたのです。そして、「ちゃんと仕事しているという評価(あくまで、他人からの評価)」をもらい、産前に長く携わっていた職種に戻りたかった。

実際はそんなに単純な話ではありません。子どもの病気が、こんなに多いなんて知らなかった。慣れないし心配だし、看病で寝不足。病気がうつってママも倒れる。前は免疫力に自信があったのに。

子どもの病気、知らない上司

そう、初めてママがわからないのと同じで、職場で「知らない」人は多いのです。病気をあまりしない子もいるし、頼める身内がいて会社を休まないママもいる。

「よほどの病気でなければ休まずに」「子どもの体調も管理しないと」とも言われました。症状や熱があれば保育園に行けないんですが…。子どもたちは密着しているので、うつってしまうのだけど…。看病して全方位に頭を下げていると心身がきゅうっと縮んで、ママは強く言えなくなってしまうのです。

セーフティネット用意して

育児のため大幅に給料が減っているとはいえ、「十分に仕事できていない」という雇用側の評価もわかる。だけどこのきゅうくつな空気では、少子化って言われながらふたり目もつくれないし、ママたちが実績やスキルを生かしにくい。これから子どもを、と考える人にも希望を持ってほしいのに。

同じ保育園のママは、子どもの病気のときどうしているのか聞いてみました。「親や身内に来てもらう」「夫と交代で休む」「職場の理解がある」「自宅で仕事をする」「割り切って病児保育を利用する」など、それぞれ。

みなさんは、どんなセーフティネットがありますか?

この記事は、サポートを頼める人が少なく、子育てに慣れていなかった数年前の私が書いた。記録として当時の熱量のまま、内容を変えずに紹介した。医学的な治療や食品についても、その時に戸惑いながら選択したもので、これが正解という例ではないことを追記する。

ジャーナリスト(福祉・医療・労働)、早稲田大研究所招聘研究員

早大参加のデザイン研究所招聘研究員/新聞社に20年余り勤め、主に生活・医療・労働の取材を担当/ノンフィクション「ダンスだいすき!から生まれた奇跡 アンナ先生とラブジャンクスの挑戦」ラグーナ出版/新刊「ルポ 子どもの居場所と学びの変化『コロナ休校ショック2020』で見えた私たちに必要なこと」/報告書「3.11から10年の福島に学ぶレジリエンス」「社会貢献活動における新しいメディアの役割」/家庭訪問子育て支援・ホームスタートの10年『いっしょにいるよ』/論文「障害者の持続可能な就労に関する研究 ドイツ・日本の現場から」早大社会科学研究科/講談社現代ビジネス・ハフポスト等寄稿

なかのかおりの最近の記事