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韓日議連の役員改選で日韓関係は好転するか?議連会長は「対日融和派」で幹事長は「対日強硬派」

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
前列左から3番目が鄭鎮碩会長、2番目が尹昊重幹事長(鄭会長のフェイスブックから)

 韓日議員連盟の新会長に与党「国民の力」所属の鄭鎮碩(チョン・ジンソク)国会副議長(61)が就任した。前会長の金振杓(キム・ジンピョ)議員は尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権誕生で野党となった「共に民主党」に所属していた。議連会長のポストは日本同様に政権与党が担うことになっている。

 鄭新会長は「今年で創立50周年を迎える韓日議連は両国関係が苦境に陥るたびに潤滑油の役割を担ってきた」と述べ、「冷え込んだ両国関係改善の活路を探るため最善を尽くす」と強調していた。早速、秋に日韓議員連盟との合同総会をソウルで計画しており、そのために来月4日に東京で合同幹事会議を開くことにしている。合同幹事会議では議連創立50周年記念式に関しても話し合われるようだ。

 李明博(イ・ミョンパク)保守政権時代に大統領政務首席秘書官(2010年7月~2011年6月)を務めたことのある鄭新会長は日本にとって実に与し易い人物である。「親日」と批判されても意に介さないほど日本に融和的な人物である。何よりも前任者の金前会長とは異なり、「竹島(韓国名:独島)上陸」の過去がない。日本にとっては望ましいことである。ちなみに金前会長は李明博政権時代の2008年7月に文在寅(ムン・ジェイン)政権で総理を務めた丁世均(チョン・セギュン)民主党代表(当時)らと共に上陸した過去がある。

 また、昨年11月に金昌龍(キム・チャンリョン)警察庁長官(当時)が竹島を電撃上陸したことに日本が猛抗議し、米国で開催していた日米韓外務次官会談後の共同記者会見をボイコットしたことがあったが、鄭会長が金警察庁長官の行動を批判したことはまだ記憶に新しい。

 金警察庁長官が竹島に上陸したその日(16日)に韓日議員連盟朝鮮通信使委員会訪日団を引率して来日した鄭会長は「薄氷を踏むごとく気を付けながら訪日した当日にソウル発のニュースが我々(朝鮮通信社一行)の寝首を搔いた」とツイートし、文前政権の対応に露骨に不満を表したが、この発言が「日本寄りである」と韓国内で批判を浴びたことも周知の事実である。

 高麗大学卒業後、15年間韓国日報で記者生活を送っていた鄭会長は2000年に出身地・忠清南道のドンこと、金鍾泌元首相に誘われ、この年の国会議員選挙に自由民主連合(自民連)から出馬し、初当選を果たした。その後、「国民の力」の前身である「ハンナラ党」に鞍替えし、2007年の大統領選挙では李明博候補の支持に回り、次の朴槿恵(パク・クネ)政権下では党No.2の院内代表(2016年5月)に上り詰めた4回当選の政界実力者である。尹大統領が昨年6月29日に大統領選出馬宣言をした際には権性東(クォン・ソンドン)現党院内代表と共に傍らに付き添うなど尹大統領当選の立役者の一人でもある。

 イデオロギー的には右翼で、文政権の初代総理に任命された李洛淵(イ・ナギョン)氏の人事聴聞会で激しく詰問した同僚議員に対する文政権支持者らのSNSによる集中砲火を「左派ゾンビらの無差別な文字爆弾」という表現を使って反撃するほどだった。

 また、問題発言も多く、廬武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領が後任の李明博政権からのスキャンダル追及を苦にして自殺したことについても「盧武鉉の自殺は李明博のせいではない。盧武鉉は夫婦喧嘩で自ら命を絶ったのだ」とブログで書き、盧元大統領の長男から名誉棄損で訴えられたこともあった。さらに、2018年に全国地方自治体選挙で大敗した際には修学旅行生が乗船した「セウォル号」の沈没事件を引き合いに出し、「(我が党は)セウォル号のように沈没してしまった」と発言し、国民の顰蹙を買ったこともあった。

 直近では自身のフェイスブックに載せた安倍晋三元首相への哀悼文が問題にされている。「安倍元総理は明治維新を成し遂げた長州藩の嫡子である」と書いたからだ。

 安倍元総理は吉田松陰を思想的な主としているが、韓国では朝鮮を付属すべきと征韓論を主張した吉田松陰が長州藩の出身で、初代朝鮮総督の伊藤博文を含め彼の思想を継承した弟子らが明治維新を起こし、帝国主義日本を形成してきたとの解釈に立っていることから鄭新会長の発言は「不適切な発言」と受け止められているようだ。

 このように日本からすると、対応し易い人物が韓日議連会長に就任したことで日韓議連では歓迎の声が上がっているが、逆に幹事長となった尹昊重(ユン・ホジュン)議員は日本に対しては厳しいスタンスの持ち主である。

 野党「共に民主党」に属する尹新幹事長は日本が首脳会談開催に条件を付けたことで夏季東京五輪の開会式に出席予定だった文前大統領の訪日が流れた際、菅義偉政権(当時)に対して「無責任で信頼性を欠いた、誠意のない外交がもたらした惨事である」と批判し、また、東京五輪のホームページの地図に竹島が表記された問題や東京五輪での旭日旗の使用問題で韓国政府は断固とした対応を取るべきと声を上げていた。

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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