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「タイトル獲得数自体は意識していることではない」タイトル通算10期を達成した藤井聡太王位会見全文

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

――王位戦3連覇について。

藤井聡太王位「まだ対局終わったばかりで。なんというか、結果よりも対局のことを振り返っているという感じではあるんですけど。今期の王位戦も、どれも本当に、難しい将棋ばかりだったんですけど。その中でなんとか結果を出すことができたのはよかったかなと思っています」

――牧之原での対局を振り返って。

藤井「今回の対局では地元のお店でメニューを用意していただくなど、本当に歓迎していただきまして。本当にうれしく思いますし、また気持ちよく対局することができたかな、と思っています」

――シリーズを振り返って。

藤井「今シリーズ、すべて角換わりの将棋だったんですけど。特に第1局と第2局は定跡形の進行で。かなり早い段階で終盤になる将棋だったんですけど。ちょっと第1局はその中でうまくバランスを取ることができなかったのかな、と思います。3局目以降はけっこう、中盤のねじり合いのような展開になって。やっぱりなんというか、考えていてもちょっとよくわからない局面が多かったので。なんというか、そのあたりの判断の精度を高めていかなくてはいけないのかな、というふうに感じました」

――いちばん印象に残った対局は?

藤井「まずは第1局、途中かなり攻め込まれる展開だったんですけど。そのあといったん受け止められはしたんですけど、ちょっとまたその局面が難しいという。非常に、かなり判断の難しい将棋だったのかなと思います。あと本局もそうですね、なんか、かなり早い段階から見慣れない形になって、常に指し手の方針であったり、形勢判断っていうのが非常に難しい将棋だったかなと思います」

――タイトル獲得通算10期達成について。

藤井「あまりタイトル獲得数自体は意識していることではないので。また、来月から竜王戦などもあるので。どの対局にもよい状態で臨めるようにというのを意識してやっていけたらと思っています」

――角換わりが5回続いたことについて。

藤井「これまでの自分のタイトル戦だと角換わりと相掛かりの将棋が多かったですけど。今回5局すべて角換わりだったということで。豊島九段とテーマとする局面がある程度重なっていたところはあったのかな、というふうには感じています」

――もし第6局(藤井先手)があったら角換わりだった?

藤井「いや、そうですね、えっと・・・(苦笑)。基本的に次の一局というのを意識してるので。そのあとのことというのはあまり、なんというか、特に想定はしていませんでした」

――シリーズを制した理由、どういうところがよかった?

藤井「今期の第1局では豊島九段の深い研究にこちらがついていくことができなかったので。2局目以降、もちろんその、対局に集中して臨むことがいちばん大事ですけど、その上でやっぱり準備というのをしっかり意識してやっていかなくてはいけないのかなというふうに思って取り組んでいました」

――来月から竜王戦。今回のシリーズをどう活かしたい?

藤井「王位戦と竜王戦では同じ持ち時間なので、今回の王位戦で感じた課題などを竜王戦までに修正して臨めればな、というふうに思っています」

――持ち時間の使い方で意識することはあった?

藤井「王位戦、持ち時間が長い棋戦なので、特に決断よく指そうという意識はなかったんですけど。ただ、第1局ではやっぱり、かなり消費時間の差が途中大きくなってしまったので。ちょっとそういう展開になってしまうと少し厳しいのかな、というのは意識していました」

――第2局以降、決断よくというか、使い方を変えたということは特にない?

藤井「特段、決断よく指そうという意識ではなかったんですけど。まあただ、相手との時間差というのは少し意識しようかなというふうには思っていました」

――王位戦七番勝負では1敗から4勝。棋聖戦五番勝負では1敗から3勝。星取りについて。

藤井「棋聖戦第1局のあたりは内容的にもあまりうまくいっていないな、という感じではあったんですけど。そのあと対局を重ねていくうちになんとなく、少しずついい状態で臨めるようになってきたのかな、というふうには感じています」

――対局のペースについて。

藤井「今年ですと3月から4月の間に対局が少ない時期があって。その間にあまりいい状態を作れなかったのかな、というところはあったので。ただ、対局のペース自体は、こちらでは選べないので。そのあたりの調整というのは、また今後の課題なのかな、とは思っています」

(藤井王位の言葉はできるだけそのまま、記者からの質問は簡略化して表記)

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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