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“冷遇”か“構想外”か?ベンチ外続くG大阪MFチュ・セジョン W杯出場のため移籍も視野に入れるべき?

金明昱スポーツライター
ベンチ外が続いているガンバ大阪所属の韓国代表MFチュ・セジョン(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

 韓国代表MFがJリーグでベンチにも入れない状況が続いていることが、どうしても気がかりでならない。ガンバ大阪MFのチュ・セジョンの事だ。

 2021年からガンバ大阪に加入し、J1リーグ22試合に出場。アンカーとしてFWとDFの間で“潤滑油”の役割をこなし、前線への正確なロングフィードでチャンスも演出。日本のサッカーのスピードやテンポへの適応力が備わった1年目を過ごし、2年目となる今季はさらなる活躍が期待された。

 だが、フタを開けてみると今季J1リーグ戦出場は5試合(先発2試合、途中出場3試合)と厳しいシーズンを過ごしている。

 4月6日の第7節(京都サンガ戦)からはベンチ入りさえままならず、片野坂知宏監督の下では完全に序列が下がり、冷遇されている印象がある。

 彼のプレーを最後にピッチで見たのは、ルヴァンカップ(4月13日、大分トリニータ戦)の途中出場が最後。もちろん片野坂監督が使わないのには、それなりの理由があるのだろう。

チーム内でのポジション争い

 直近のルヴァンカップ(4月23日、セレッソ大阪戦)とリーグ戦(4月29日、FC東京戦)を現場で見たが、個人的には、中盤のハードワークがかなり求められている印象を受けた。

 今季加入したブラジル人MFダワンの豊富な運動量と献身的なプレーやMF山本悠樹も24歳と若さ溢れる動きもチームに活力を与えていると感じる。

 つまり現時点では「ポジション争いに敗れた」というのが一つの理由だろう。結果が問われるシビアなプロの世界だけに、チュ・セジョンもそこは覚悟していたに違いない。

 とはいえチュ・セジョンに物足りなさを感じるのか、と言えばそうでもない。戦況を見極める目や的確なパスと判断、ボール奪取能力も高く、長らくタフなKリーグで戦ってきたフィジカル面には31歳とはいえ、自信を持っているはずだ。

 ゆえに今、なかなかチャンスを与えられず、宙ぶらりんの状態にしておくのはかなりもったいないと感じるのは、筆者だけだろうか。

遠のく韓国代表とカタールW杯

 チュ・セジョンは4年前のロシア・ワールドカップ(W杯)に出場しているが、今年11月に開催されるカタールW杯に韓国代表として出場を狙っている。

 前回大会で韓国代表はグループリーグ最終戦でドイツと対戦し、2-0で勝利。2点目のソン・フンミンのゴールを正確なロングフィードからアシストしたのが、チュ・セジョンだった。このシーンは今でも韓国では語り草になっているが、この時の経験がW杯への思いをさらに強くしている。

 去年1月にチュ・セジョンにインタビューした時、こんな思いを語っていた。

「韓国代表に呼ばれ、またW杯に出たいという強い思いがあります。2018年のロシアW杯では、自分の思うようなプレーをすべて見せることができませんでした。それが残念で悔いが残ります。だからこそ、次のカタールW杯に出場するためにも、日本でまた新しいサッカーを学んで成長し、W杯で自分の力を試したい。そのためにもJリーグに来たんです」

 中盤の層が厚いJリーグにあえて飛び込んだのは、自分の実力をさらに高めて、チームの勝利に貢献すると共に再びW杯の舞台に立ちたいという思いがあるからだ。

 しかし、MFの中では完全に序列が下がり、このままでは実力を示す場もなく、時間だけが過ぎてしまっている。韓国代表入りも遠のく一方だ。

プレーできるクラブの模索も必要か

 カタールW杯で日本がドイツと同組になったこともあり、4年前のドイツの印象やJリーグでの現在のこと、さらには韓国代表への思いを聞きたいと思い、先月、チュ・セジョンに個別のインタビューオファーをしたのだが、クラブ側から断りの申し出があった。

 広報からの返事は「リーグ戦への出場機会も少なく、最近韓国代表へ選出されていない」というもので、これは本人の意向という。気持ちの整理がつかないチュ・セジョンの現在の心境が透けて見えるが、今も自分と戦い続けている。

 チュ・セジョンにとってはこのまま終わるわけにもいかないだろう。歯を食いしばりガンバ大阪でレギュラーポジションを勝ち取るか、このままベンチ外が続くなら、もっとプレーできるクラブを模索してもいいのではないだろうか。

 いずれにしても韓国代表としてカタールW杯メンバーに選ばれるには、試合に出続ける必要がある。実績と実力は証明されているだけに、まずはチームでより多くのチャンスを与えて、我慢強く起用してほしいものである。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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