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21世紀枠はどこに? きょう、センバツ選考会

楊順行スポーツライター
昨年優勝の大阪桐蔭も出場が確実。史上3校目の春連覇がかかる(写真:岡沢克郎/アフロ)

 ワタクシゴトで恐縮だが、2003年、母校の柏崎高校(新潟)が21世紀枠でセンバツに出場した。父母会長は同級生で、その息子がエース。ついでにOB会事務局長も同級生だった。01年夏は県ベスト8、02年秋は県3位で北信越大会に出場。そこでは小松市立(石川)に初戦で惜敗したが、21世紀枠でのセンバツ出場が早くから有望視されていた。というのも02年、小泉純一郎総理のもとで北朝鮮拉致被害者の蓮池薫さんが帰国しており、蓮池さんは同校のOB(ちなみに、私の2学年上である)。そういう話題性も、導入3年目の21世紀枠として選ばれる追風だっただろう。

 03年1月31日、午後3時30分。授業の終了とともに、「柏崎高校の選抜高校野球大会出場が決まりました」という校内放送が流れた。学校創立から100年以上を経て、初の甲子園である。卒業から25年もたっていたが、なかなかに感慨深いものがあった。その晩はエースの父、OB会事務局長らと、派手に祝杯をあげたことを覚えている。本番はよりによって開幕戦で、斑鳩(奈良・現法隆寺国際)に敗れたが、結果はまあ、いい。

 第90回選抜高校野球大会の選考委員会はきょう、開かれる。で注目は、どこが21世紀枠で選ばれるか、だ。

 候補は、以下の9校。

・函館工(北海道)

・由利工(東北・秋田)

・藤岡中央(関東・群馬)

・大垣西(東海・岐阜)

・金津(北信越・福井)

・膳所(近畿・滋賀)

・下関西(中国・山口)

・高知追手前(四国・高知)

・伊万里(九州・佐賀)

 このうち北信越までの東日本、それ以西の西日本から1校ずつが、さらに地域を限定せずに1校の計3校が選ばれる。それぞれ工夫した練習や地域密着、困難克服……などなどの特徴があり、どこが切符を手にしてもおかしくない。

取材当日の"空振り"もある

 巷間飛び交うのは、

「岐阜の大垣西は、昨年多治見が21世紀枠として出場しており、2年連続は苦しいか」

「滋賀県からは一般選考で近江と彦根東が出場有力で、3校目の膳所はなさそう」

「四国は明治神宮大会で明徳義塾が優勝し、ただでさえ神宮枠で1校増えるため、高知追手前はないのでは」

 などという憶測だ。いずれももっともらしいのだが、たとえば同一県から2年連続で選ばれたこともあり、こと21世紀枠に関してはなにが決め手になるかわからない。わが柏崎高校のときは、蓮池さんの存在もあり、かなりの確信を持って選考会当日の取材に出向いたが、「有力」とささやかれながら、吉報が届かないこともけっこう多いのだ。実際僕も、選考されることを見越して当日取材に出向きながら、空振りに終わったケースが何度かある。

 たとえば01年は選考会当日、境港工(中国・鳥取、現境港総合技術)に出向いた。00年秋の県大会中に、鳥取県西部地震が境港市を直撃し、大きな被害があったが、県大会での活躍が明るい話題を提供した、というのが推薦理由。だが、選出はならなかった。10年は、新潟(北信越)。新潟県下トップの進学校で、OBには有力者がずらりとそろう。さらに「野球」の名付け親である中馬庚が、旧制中学時代に校長を務めた縁もあり、これは有力……と思ったのだが、ここも「ご縁」がなかった。

 そもそも、

「選ばれなかったとしても、選抜高校野球大会はインビテーションですから」。

 これ、何年か前に事前取材に訪れながら、一般選考に漏れたチームの監督の言葉である。そう、センバツは招待試合なのだ。ウィキペディアによると、英文表記はNational High School Baseball Invitational Tournament。選考されるか否かは、すべて選考委員会の一存で、選考にあたっては、前年秋の大会の成績は、建前上あくまで「参考」だ。つまり、上位から機械的に選ぶのではない。たとえば00年のセンバツで準優勝した智弁和歌山は、前年秋の近畿大会では初戦敗退ながら、初戦突破の2校をさしおいて選出されていたのだ。

電話が鳴るか、鳴らないか

 21世紀枠もしかり。話題性や、毎日新聞の拡販策といった都市伝説で予想しても、3校ずばり的中というのはなかなかむずかしい。で近年は、無駄足覚悟で選考会当日に候補校に足を運ぶのではなく、決定してからあらためて取材の段取りを組むようにしている。

 それと、もうひとつ。選考されると、その旨を伝える電話が学校にかかってくる。「ありがとうございます。謹んでお受けします」などと校長が受け答えするシーンは、ニュースなどでもおなじみだろう。一方、選ばれなければ、残念ながら電話は鳴らない。だから選考の当落線上とされるチーム(かりにA高校としよう)は、野球部員だけではなく学校中が、いまかいまかと電話を待つことになる。

 そんななか、いち早く情報を知るのは、A高校で取材しているメディアだ。選考会の現場から「B高校は出場、A高校は残念……」という連絡が即座に入るわけだ。

 すると、ですね。心ここにあらずで練習している選手たちを横目に、早々と撤収作業に入る人々がいるのである。それを見る選手たちのワクワクドキドキの心情を思うと、罪作りだよなぁ。目ざとい子なら、「ダメだったのか……」と気づくだろうから。遅かれ早かれわかることとはいえ、せめて監督や部長が選手に伝えるまで、聞かなかったことにするのが大人の配慮というものではないか。

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スポーツライター

1960年、新潟県生まれ。82年、ベースボール・マガジン社に入社し、野球、相撲、バドミントン専門誌の編集に携わる。87年からフリーとして野球、サッカー、バレーボール、バドミントンなどの原稿を執筆。85年、KK最後の夏に“初出場”した甲子園取材は64回を数え、観戦は2500試合を超えた。春夏通じて55季連続“出場”中。著書は『「スコアブック」は知っている。』(KKベストセラーズ)『高校野球100年のヒーロー』『甲子園の魔物』『1998年 横浜高校 松坂大輔という旋風』ほか、近著に『1969年 松山商業と三沢高校』(ベースボール・マガジン社)。

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