2020年は「狭い3LDK」マンションが新しい? 4人家族でも60平米台選ぶ理由
千葉県柏市のつくばエクスプレス沿線や埼玉県川口市内の埼玉高速鉄道沿線で、駅から歩いて5分程度で分譲される新築マンション……これまでなら、70平米以上のゆったりした広さの3LDKが分譲されるものだった。
それが、今は50平米台の2LDKが増え、3LDKでも60平米台の専有面積が多くなってしまった。70平米に満たず、60平米台でおさめた3LDKは、これまで「圧縮プラン」と呼ばれた。面積を圧縮し、居室3つとリビングダイニングを無理矢理押し込んだ間取り、という意味だ。
「圧縮プラン」は、分譲マンションの価格上昇期に生じやすい。
たとえば、マンション価格が上昇し、70平米の3LDKを売ろうとすると、6000万円を超える場所があったとする。そのとき、3LDKの広さを60平米にすると、5000万円前後で売ることができる。「その価格であれば、購入できる」という人が増えるので、マンションの分譲価格が上がってしまったとき、苦肉の策として「圧縮プラン」が生じたわけだ。
そして、今はマンション価格の上昇期……なのだが、今「60平米台の3LDK」が生まれているのには、別の理由もありそうだ。
4人家族が減ったので、そんなに広くなくてよい
2013年以降、新築マンション価格は大きく上昇したが、それは都心マンションと郊外駅近マンションに限った話。郊外で、駅から少し離れるだけでマンション価格の上昇は緩やか。千葉県の柏市内や埼玉県の川口市内で、駅から5分程度ならば、3LDKが4000万円台〜5000万円台で購入することができる。面積を圧縮しなければ商売にならない、というほどではない。
それでも、60平米台の3LDKが生じるようになったのは、「広い3LDKでなくてもよい」という世帯が増えたためだろう。
20世紀まで、分譲マンションを買うのは、子ども2人の4人家族が主流だった。だから、70平米以上の3LDKがふさわしかった。
それが、今、分譲マンションを買う世帯は「4人家族」ばかりとは限らない。一人暮らしにDINKS、シニアの2人暮らし、そして子どもひとりの3人家族も増加している。少子化に歯止めがかからないため、これからの日本、特に物価や教育費の高い首都圏では3人家族が主流になる可能性がある。
3人家族ならば、2LDKで事足りる。もしくは、2LDKとして使うこともできる3LDKで十分。それが、コンパクト3LDKが増えている理由だろう。コンパクトサイズの3LDKは収納スペースが少なくなるのだが、今はミニマリストの生き方があるし、外部のストレージを活用する手もある。
だいたい賃貸の3LDKは50平米台、60平米台が主体なので、分譲で60平米台3LDKに移っても、違和感はない。
さらに、4人家族のなかにも、狭い3LDKを求める人たちがいる。面積が狭ければ、分譲価格が安くなるし、入居後の管理費と修繕積立金も抑えられる。4人家族といっても、子ども2人が巣立てば、夫婦2人の生活となる。そのとき、2LDKとして使うことができる間取りがちょうどよい、と考えるからだ。
コンパクトな3LDKであれば、将来、中古で売るとき、賃貸に出すときも有利だ。というのも、4人家族、3人家族、そして2人世帯と幅広いニーズに応えることができるためである。
以上の理由で、2020年は60平米台のコンパクト3LDKが首都圏での主流になりそうなのだ。
「あえてコンパクトにした3LDK」という発想
60平米台の3LDKは、かつてのように「圧縮したプラン」から「あえてコンパクトにしたプラン」に変わったきた。
新世代のコンパクト3LDKの特徴は、3LDKにも2LDKにも使いやすいこと。そのため、リビングダイニングと隣り合う洋室の間に大型のウォールドア(引き戸)を設置。それだけでなく、ウォールドアを開けたときにリビングダイニングと居室の一体感が生じるようにしている。
具体的にいうと、ウォールドアを天井から吊す(天吊り、という)形式にする。さらに、横に設けられる袖の壁(方立・ほうたて)も小さくする。つまり、ウォールドアの「額」に当たる部分を極力小さくする。これで、ウォールドアを開けたときに、写真のように2室の一体感が大きくなるわけだ。
20世紀のマンションでは、リビングダイニングの隣に和室が設けられ、2室間には背の低い襖を設置。襖のまわりの垂れ壁、袖壁が大きかったため、襖を開けても2室の一体感は生じにくかった。ウォールドアにより、リビングを違和感なく広げられること、それが新世代「コンパクト3LDK」の特徴でもある。