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「綺麗」目指しサンウルブズに苦戦の日本代表、B&Iライオンズ戦では覚醒?【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
新生ジャパン、出港(写真右はリーチ マイケル主将)(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

 2019年のワールドカップ日本大会以来約1年7か月ぶりに活動を再開したラグビー日本代表は現在、欧州遠征中だ。

 日本を離れる前の6月13日、藤井雄一郎ナショナルチームディレクターが12日の強化試合、8日までの約2週間にわたる別府合宿を総括。ツアーの展望も語っている。

 まず、「JAPAN XV」の名で戦った12日の一戦について。対するサンウルブズは、別府合宿に参加していた日本代表勢や今後の代表入りが期待される若手、同クラブがスーパーラグビー(国際リーグ)へ挑んでいた時期に在籍の海外出身者らで編成されていた。

 以下、共同取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

——強化試合では海外勢との試合も検討していたが、サンウルブズとの対戦となった。

「サンウルブズ側にも一緒に合宿していた人(別府合宿で汗を流した日本代表選手)が出ているので、(「JAPAN XV」の)サインプレーも読まれることもあった。違う(あらゆる)意味でプレッシャーがかかってよかったんじゃないかと思います。

(強化試合は)まったくの知らないチームとやるのが一番よかったんですけど、コロナの影響でこういう状況でしか試合ができなかった。そのなかではコンタクトも激しかったです。サンウルブズの選手にとってもしっかりアピールする場所でもあった」

——キャンプ、強化試合を通じての収穫と課題は。

「短い期間での合宿でハードなことをやってきた。自分たちの一緒にやってきた仲間と試合をやるのは難しいことだと思うんですけど、そのなかで見えてきた課題もある。課題が見つかったのが収穫。

 試合の始めは、ちょっと、綺麗にラグビーをやろうとし過ぎたというか。実戦的なことからは2年間、離れていた。ワールドカップでいいイメージで終われたところから、もう一度、泥臭いこともやらないといけないとも見えた。その部分は、コーチ陣、選手、特にリーダー陣が話し合って修正していくと思います」

 この日は静岡・エコパスタジアムで32―17と勝利も、前半は3―14とビハインドを背負った。特に肉弾戦では、日本代表からサンウルブズへ派遣されたベン・ガンターらの圧力を受けた。

 日本代表は、スペースへ大体にパスやキックを放つのを特徴とする。しかしこの午後は、戦術を機能させる前提としての「泥臭いこと」の重要性を再確認できたようだ。

 さらに、こうも言う。

——別府合宿はタフだったと言われています。サンウルブズ戦は、疲労が残った状態で戦っていたのか。

「100パーセントの状態ではなかったと思いますが、そこも織り込み済みでトレーニングしている」

「(別府では)順調だった。そういう意味では、(試合内容が)何となくすっきりしていないのが逆に良かったと僕は思っている。何となく、ロシア代表戦みたいな感じ。ここから目覚めていくんじゃないかと」

 2019年の日本大会でも、格下のロシア代表との初戦では緊張からミスを重ねた。しかし、ここで何とか白星を得ると、2戦目以降では強豪のアイルランド代表などから勝利。予選プール4戦全勝で決勝トーナメントに進んでいる。

 今度のツアーでも、「目指すところはブリティッシュ&アイリッシュライオンズ(B&Iライオンズ)戦」。6月26日、スコットランド・マレーフィールドでぶつかるのは、イングランド、ウェールズ、アイルランド、スコットランドの4協会によるドリームチームだ。続く7月3日にはアイルランドのアビバ・スタジアムでアイルランド代表と対戦する。

——現地入り後のスケジュールは。

「向こうに着いてからの隔離はないんですけど(国内での活動もバブルに近い形で実施)、(グラウンドでの練習時以外は)ホテルから出られない。現地ではコロナ対策の方が1人、つくので、その人の指示に従って制限のなかで、練習、生活を送ると聞いています」

——現地での息抜きは。

「外には出られないので、できる限りバブルのなかでできる遊び、イベントをコーチ陣とマネージメントチームで考えているところです。

 ゲーム機みたいなの持って行って。ひとつの画面でミニチームごとに戦うみたいなのを考えているところです」

——ニュージーランドのハイランダーズに所属する姫野和樹選手の合流時期は。

「彼も最後(スーパーラグビートランスタスマンの決勝)まで出てから合流するので、ちょっと、最初の試合(B&Iライオンズ戦)は難しいんじゃないかという話にはなっています」

——フランスのクレルモンでプレーする松島幸太朗選手については。

「松島も試合の結果次第。基本的には終わったらすぐ来たいということだった(結局、6月中旬までにシーズン終了)。彼の場合はニュージーランドと違ってすぐ来られるし、身体も仕上がっていると思うので、合流して、戦術だけ頭に叩き込めば大丈夫じゃないかなと。(B&Iライオンズ戦に間に合う可能性は)十分、あると思います」

——2試合ともベストベストメンバーで戦うか、もしくは2試合で全選手を起用するか。

「出来る限り、皆、使いたい気持ちはあるんですけど、1戦目終わってどうするか。1番のターゲットはB&Iライオンズ戦。そこを終えた時点で次のメンバーを…となっていくんじゃないかと思っています」

 2019年といまとの変化を聞かれれば、「若い選手の試合に出たい、アピールしたいという気持ちがあったので、次に繋がっている感じはしました」。サンウルブズに挑んだ「JAPAN XV」では、クレイグ・ミラー、齋藤直人、シオサイア・フィフィタらが後半から出て躍動した。

 これがB&Iライオンズ戦のメンバー構成に影響しそうかと問われれば、ジョセフと親交の深い藤井はこう応じた。

「ジェイミーの頭のなかでは考えていると思います。(強化試合の)後半に出てきてインパクトのある選手が多かった。それらが先発で出るか、後半から出るかはわからないですが、いい評価はされていたと思います」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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