「異次元の少子化対策」の財源論の前にやるべきこと
報道によれば、経団連は、少子化対策などの財源について「消費税も含めたさまざまな税財源の組み合わせによる新たな負担も選択肢とすべき」とする報告書をまとめたそうです。
社保財源、消費税も選択肢 経団連「国民全体で負担」(2023年4月26日 共同通信)
サステイナブルな資本主義に向けた好循環の実現~分厚い中間層の形成に向けた検討会議 報告~(2023年4月26日 一般社団法人 日本経済団体連合会)
少子化対策の財源については、経団連以外にも、財界や学識者、労働界でつくる「令和国民会議」(令和臨調)は「消費税を軸とした安定財源が必要」としていますし、財政制度等審議会もやはり、「税を含めた安定財源の確保」を主張しています。
令和臨調、社会保障改革で提言 「少子化対策の財源は税を軸に」(2023年4月25日 毎日新聞)
少子化対策「税含め安定財源」 財政審、新会長に十倉氏(2023年4月14日 時事通信)
このように、昨年末の防衛増税に続き、少子化対策でも、増税、増税のオンパレードとなって、日本中増税で覆い尽くされようとしています。
3月末に「異次元の少子化対策」のたたき台が公表されて以降、「異次元の少子化対策」を行うために財源が必要で、その財源をどうするか、社会保険料(社会保険税)の引き上げなのか、消費税なのか、その他の税なのかという財源論に関心は移っていますが、しかし、よく考えてみてください。
今提案されている「異次元の少子化対策」は本当に効果があるのでしょうか?いや、そもそもこれまで講じられてきた少子化対策は効果があったのでしょうか?
少なくとも、これまでの少子化対策の効果は、出生対策としてみれば、出生率も出生数も駄々下がりなことからも明らかなように、控えめにみても効果はなかったと言えるでしょう。
にもかかわらず、政府も有識者も財界もこれまでの延長線上の施策を、増税してまでやろうとしているわけです。
ただでさえ控えめな賃上げの成果が社会保険料負担によって損なわれているのに、これ以上の増税に子育て世代も、結婚・出産予備軍世代も耐えられるわけがありません。
政府や有識者が増税の前にやるべきことは、これまでの少子化対策の総括と「異次元の少子化対策」の費用対効果を明らかにすることです。そしてその検証結果が適切かどうか、在野の研究者などが検証して「異次元の少子化対策」が本当に出生増につながるという証拠が挙がってからやっと財源論だと思うのですが、なぜか政府も有識者も財界も一足飛びに財源論をやっています。もし、すでに検証結果や政策効果分析があるのなら公表するべきでしょう。
いまの日本には効果のない少子化施策に時間とお金をつぎ込む余裕もありませんし、そんな馬鹿な話もないと思いますが、読者の皆様はいかがお考えでしょうか?