殺処分回避の声殺到で「ケープくん」は動物園へ なぜシカはペットとして飼えないか?
東京都足立区で捕獲されたシカが、ネット上で話題になっています。
愛らしいシカの様子や殺処分の可能性が各メディアで報じられたこともあって「引き取りたい」との問い合わせが殺到し、結果、千葉の動物園「市原ぞうの国」に引き取られることになり、名前も「ケープくん」になるそう。そこで、 いまの日本におけるシカの現状やペットとして飼えない理由を解説します。
シカはペットとして飼えない
シカを「引き取りたい」という人が多かったようですが、ペットとして飼うことはできません。それは、鳥獣保護管理法により、野生動物であるシカを飼うことが禁じられているからです。
シカは、多数捕獲されていることを知っていますか?
足立区で捕獲された1頭の殺処分をめぐる是非について、ネットで話題になっています。
しかし、現実問題として、シカは数十万頭が狩猟やその他の方法で捕獲されて殺処分されているのです。
シカの捕獲頭数の推移(環境省調べ)
平成30年でシカは、狩猟で約14万頭、狩猟以外の方法で40万頭以上が捕獲されているのです。
シカは害獣って知っていますか?
野生鳥獣による農林水産被害の概要では、以下のようになっています。
・野生鳥獣による農作物被害額は158億円(平成30年度)、全体の約7割がシカ イノシシ サルです。
・森林の被害面積は全国で年間約6千ha(平成30年度)で、このうちシカによる被害が約3/4を占めます。
つまり、シカが増えてすぎて農林産物の莫大な被害が出ているのです。
日本に生息するシカ
日本に生息するシカの数は、北海道を除いても、グラフから2017年では244万頭いることがわかります。
1989年と比べると約9倍にまで増えています。なぜ、こんなに増えているか。ひとつの原因は、銃猟免許の取得者が大きく減少していることにもあります。つまり、ハンターの数が減少しているのですね。
他には、少子高齢化が続き、大都市圏に経済や人が集中しました。その結果 山里が過疎化して耕作地の荒廃が進行したので、野生動物は、人がいるところまで出現するようになりました。さらに、温暖化になり冬季の積雪量が減り、生息できる環境が増加しました。野生動物をめぐる状況が大きく変化しています。
捕獲されたシカの利用方法
・ジビエ料理などの食肉用
・ペットフード
などです。
シカ肉を食用にするときの注意点
野生のシカ肉の刺身を食べてE型肝炎を発症した事例があります。
シカ肉を食べるときは、よく火を通してくださいね。
まとめ
シカの映像をメディアで見ると、かわいいので殺処分をやめて欲しいという声が出たように思います。
私も動物が好きで、映像のシカが殺されるとなると、なんとかできないものか、と思います。今回のシカは、ケープくんと名前をつけてもらって、「市原ぞうの国」でみんなにかわいがられて暮らすことでしょう。この機会に、シカの現状と自然について考えてみませんか。野生動物の生息する自然環境を適切に保全しながら、生態系全体のバランスを保ってゆくことが大切ですね。
参考サイト