頭脳・外見・性格の「三冠王」だけが大企業に入れる時代
●今朝の100円ニュース:就活生の「キレイ」を指南(朝日新聞)
「頭もルックスも性格もいい『三冠王』だけが大企業に入れる時代になった気がします。昔は、頭はいいけれどむさ苦しかったり性格が最悪だったりと社員に多様性があったのですが……」
インフラ系の大企業に長く勤める知人が、最近の新入社員たちを見て驚嘆交じりのため息をついた。「性格」に関しては主観が入る余地があるが、大企業に入る新人たちは挨拶や受け答え、マナー、礼儀、笑顔などで人の気持ちを逸らさない人が多いことは確かだ。「ケータイとゲームで育った世代は対面でのコミュニケーション能力が低い」などという一般的な指摘は彼らには当てはまらない。
むしろ、同じく大企業で働く高齢層のほうがコミュニケーション能力は低いと感じる。他人の話を聞かずに自分の言いたいことだけを大声で話して悦に入ったり、男尊女卑や学歴意識などが露骨すぎたり。男性ばかりの学校で高等教育を受け、総合職は男性ばかりの組織で長年働いていると人格が歪んでしまうのかもしれない。自分の外見への無頓着とセンスのなさは言わずもがなである。
現在は、大企業の採用基準にルックスや性格が大きく考慮される。広報や人事の担当者は「そんなことはありません。当社は人物本位で採用しています」と否定するだろうが、新入社員の顔と表情という結果を見れば明らかである。
なぜ採用基準が変わったのか。一次、二次産業から三次産業への移行、サービスや商品の多様化と高度化、女性の社会進出など、理由はいくつも考えられる。いつの間にか政治家ですらルックスや演出力が重視されている。「美しさ」の価値がひたすらに高まっている時代なのだ。
頭脳・外見・(表面的な)性格の三冠王は、仕事仲間や友人、恋人、結婚相手にも三冠王を求める。差別意識があるというよりも、自分と同じようなバランスを保っている人と付き合うほうが安心で心地良いからだ。働く場所、外食で選ぶ店、旅行先、住む地域や建物、子どもの教育機関。すべてにおいて同種の人が集うところに引き寄せられていく。「三振王」たちが集まる場所には決して近づかない。このようにして社会は少しずつ分断されていくのかもしれない。経済的な格差よりも、生活文化の格差のほうが大きいのだ。
朝日新聞の記事によると、宝島社が就職活動中の女子学生向けの付録つきの雑誌『キレイでつかめ!就活ビューティBOOK』を発売した。キレイでつかめるのは大企業の内定だけではないことを女性のほうが敏感に察しているのだろう。いずれ男子学生版も発売される気がする。