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ハリー杉山、羽田美智子が語る「父の死」と看護師に伝えたいこと【看護の日】

なかのかおりジャーナリスト(福祉・医療・労働)、早稲田大研究所招聘研究員
ハリー杉山さんと羽田美智子さん。看護の日イベントかんごちゃんねるで、なかの撮影

 1月の能登半島地震では、延べ約3000人の災害支援ナースが尽力したという。公益社団法人日本看護協会(高橋弘枝会長、会員76万人)は、看護の日の5月12日に、現場で活躍する看護師と高校生に加え、スペシャルサポーターとして女優の羽田美智子さんを迎え、看護の日イベント「かんごちゃんねる」を開催した。 現場で働く看護職から募った「忘れられない看護エピソード」表彰式があり、司会のハリー杉山さん、羽田美智子さんがそのエピソードを朗読。若い人に看護の担い手になってもらおうと、高校生の企画や、オンライン配信もあった。
 イベントの中から、父を看取ったハリー杉山さんと羽田美智子さんの対談を、抜粋して紹介する。筆者も、コロナ禍に父を亡くし、仕事では看護師や終末期医療の取材をしてきた。ハリーさんはラジオで、羽田さんはテレビで親しんできた方々だ。おふたりの言葉を、共有したい(敬称略)。

【ハリー】

 スペシャルサポーターの羽田美智子さんです。

【羽田】

 こんにちは。女優の羽田美智子です。今日は看護に関して、皆さんと一緒に理解を深める時間になるように努めていきたいと思います。私は普段、看護職の方たちを大変リスペクトしておりまして今回、スペシャルサポーターという大役にちょっと緊張していますが、貴重な機会をいただいたこと、ありがたく思っております。

父の他界、アドバイスに救われた

 私の個人的な話になりますが、2年前に父が他界するときに、病院にお世話になったんです。そのとき私にとっても家族にとっても、初めての出来事だったんですが、看護職の方たちの適切なアドバイス、そしてこれからこうなるだろうという予測、それがもう本当に的確でしてね。心身ともに救われたという経験があるんです。

 つい最近も、母と兄が怪我をして同時に入院してしまったんです。仕事しながら介護に入ったんですが、看護職の方たちに私のことも気にかけていただいて、ここまでは病院の仕事だから任せなさいとか、とっても救われたんですね。看護師さんは専門職のプロフェッショナルで、エキスパートですよね。本当に頼りになる存在で、心から尊敬して、私、生まれ変わったら看護師さんになりたいなって思いました。入院先には若い看護師さんの男性の方も多くて、素晴らしかったです。日々こうやって学習をして、将来的には患者さん、家族を救う存在になっていくんだ、命のそばでともに生きていく尊い仕事だなっていうことを痛感しました。

患者の大切な人にもケアの言葉が

【ハリー】

 僕も2年前に父親を亡くして。皆さんがおっしゃっていた、患者の方のケアっていうのはもちろんそうなんですけれども、周りの人、その患者にとっての大切な人や家族がいますよね。こっちに対しても、ケアの言葉が来ると思っていなかった。これがあると、心が落ち着いたりとか、人生を長い目を通して見ることができる。僕のお父さんの場合は、電話がかかってきて、危ないので来てくださいって。そのときに、自分の心のコントロールは難しくて。お父さんの病院に行きまして、ちょっと一段落したタイミングで、看護師さんからの一言に救われましたよね。

【羽田】

 差し支えなかったら、どんな一言ですか?

【ハリー】

大丈夫ですかとか、休んでくださいねって。休んでいいの?寝ていいの?自分の父親が、生死をさまよいながら戦っているときに。しかも、コロナという状況でそばにいられない。休んでくださいね、ご飯食べていますか、ごく普通のことなのに、でもこの言葉があることによって、ちょっとだけ焦っている自分が落ち着けたり、仕事に集中できるようになりましたね。

なかのかおり撮影
なかのかおり撮影

苦しいことも…これも人生だと思えた

【羽田】

 私は、父との残された時間が大体どのぐらいかっていうことを教えていただいて、十分にその気持ちが落ち着くまで、一緒にいて手を握ってあげてくださいとかアドバイスがすごく的確だったので、父が旅立った後も、おかげで悔いっていうものが残らずに、すごく清々しいと言ったらちょっと語弊があるんですけども、気持ちに整理がついて気持ちよく旅立ってもらったなっていうのがあるんですね。本当に、看護師さんたちのおかげでした。

【ハリー】

 もう全部やれることをやれたんだな、自分自身も看護師さんやドクターたちと同じチームとして。愛する人を支えることが、最後までできたんだなって考えると、いろんな思い出が、苦しいこともあったかもしれないけど、これもこれで人生なんだなって。後悔の念がない。それだけで、明日の迎え方が変わってくるじゃないですか。

【羽田】

 また看護師さんたちは、たくさんの患者さんを一斉に診ていらっしゃるわけなんです。だけどそれを感じさせないように、私達ファミリーに寄り添ってくれて、それをどの家族にも平等にやっている。見せないところが、すごいなと思うんです。

【ハリー】

 そう思うと、看護師さん、医療従事者のみなさんを社会で支えなければならないって感じますよね。

【羽田】

 本当に頭が下がる思いで、その看護師さんたちが幸せであってほしいと同時に思います。

【ハリー】

 この後、登場する高校生が医療の現場を訪ねたVTRがありますね。

【羽田】

 実際にその高校生の学生さんたちが、医療の現場に行って見学して、目の当たりにする体験の素晴らしさ。その医療に対する、看護という仕事に対する理解が深まって、興味を持っていただけるんじゃないかなって、興味深く拝見いたしました。

看護師長を演じた…若い人も興味を

【ハリー】

 日本中の看護師さんに、感謝したいですね。このかんごちゃんねるを見ている世代にメッセージをお願いします。

【羽田】

 私は普段、エンターテインメントの世界でお仕事をしていますが、映画の仕事で救命救急センターの看護師長という役を演じたことがありました。そのときに実際、救命救急センターに行って、1日見学をさせていただいて、その仕事の内容は多岐にわたるもので、医師と同じ目線で、医療に対しても専門知識があり、そして患者側に対する思いやり、気遣い、的確なアドバイス。退院後のお世話まで、命に寄り添うすごく尊いお仕事だなっていうことを感じて、やってみたいなと思うようになったんですけども、若い方たちに命に寄り添う仕事の尊さを理解していただいて、看護の仕事に興味を持っていただけたらと思います。

日本看護協会サイト

ジャーナリスト(福祉・医療・労働)、早稲田大研究所招聘研究員

早大参加のデザイン研究所招聘研究員/新聞社に20年余り勤め、主に生活・医療・労働の取材を担当/ノンフィクション「ダンスだいすき!から生まれた奇跡 アンナ先生とラブジャンクスの挑戦」ラグーナ出版/新刊「ルポ 子どもの居場所と学びの変化『コロナ休校ショック2020』で見えた私たちに必要なこと」/報告書「3.11から10年の福島に学ぶレジリエンス」「社会貢献活動における新しいメディアの役割」/家庭訪問子育て支援・ホームスタートの10年『いっしょにいるよ』/論文「障害者の持続可能な就労に関する研究 ドイツ・日本の現場から」早大社会科学研究科/講談社現代ビジネス・ハフポスト等寄稿

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