Yahoo!ニュース

【河内長野市】そもそもなぜ秘仏?河内長野・観心寺の恒例行事、国宝・如意輪観音公開を前に調べてみた

奥河内から情報発信奥河内地域文筆家(河内長野市・富田林市)

河内長野には由緒ある寺院があり、様々な行事が行われています。その中でも、観心寺で4月17日と18日の2日間にのみ公開(御開帳)される本尊・国宝の如意輪観音(にょいりんかんのん)は、特に有名ですね。

ここで私は素朴な疑問が沸き起こりました。そもそも如意輪観音はどういった仏像で、なぜ秘仏という扱いなのか?それ以前に、そもそも秘仏とは何かということです。そこで公開を前にその意味を調べてみました。

画像提供:観心寺
画像提供:観心寺

1、秘仏とは何か

「秘仏」の意味を辞書で調べると「信仰上の理由により非公開とされ、厨子(ずし:仏像などを安置する仏具)などの扉が閉じられたまま祀られる仏像」とありました。読んで字のごとく、秘められた仏ですね。

ここで面白いことがわかりました。東アジアに広がっている仏教圏でも、「秘仏」は日本独自の特徴であることだとか。

ではそんな日本独特の風習である秘仏がいつから始まったとか、その明確な要因についてはまだ研究が進んでいないとのこと。さらに日本古来の宗教である神道の神社からの影響があるという説もあります。

さらに観心寺の如意輪観音を紹介した本では、秘仏について次のようなことが書かれていました。一部を引用します。

この仏さまの厨子は、奈良時代までは仏殿、宮殿、仏台などと呼ばれていましたから、仏殿(お堂)のなかに仏殿(厨子)を置いたはずはありません。しかし我が国では昔から尊い高貴なものを視覚から遮蔽する風習がありますから、仏教が国風化されていく過程のなかで、仏像の尊厳をより高めるために、秘仏という発想が起こってきたのでしょう。
引用元:西村 公朝 , 永島 龍弘 , 西川 杏太郎著  魅惑の仏像 如意輪観音―大阪・観心寺

画像提供:観心寺
画像提供:観心寺

ちなみに秘仏の中には次のような区分があるようです。

  1. 宗派別(真言宗及び天台宗の寺院に多く、浄土系や禅宗系の寺院は少ないが存在する)
  2. 公開時期は、年間の一定期間公開のものや特定の日に決められた日のみ公開したもの。数年・数十年に1度、原則非公開、さらに写真すら公開されていない絶対的なものまである。
  3. 仏像の種類により秘仏が特定されておらず、鑑真や聖徳太子など仏像ではない像も秘仏扱いになっているところがある。
画像提供:観心寺
画像提供:観心寺

といろいろあるようです。観心寺の本尊・如意輪観音がなぜ秘仏になったのかまでは、明確にはわかりません。ただ秘仏になったことで外気に触れることなく、保存状態が良くなったことで、当時ままの採色も鮮やかに残った美しい姿が見られるのは確かです。

ここで、観心寺さんに直接確認したところ、永島住職より秘仏に関する寺伝を教えてもらいました。以下引用します。

弘法大師空海が高野山の真北のこの土地に、天変地異を鎮める働きの七星如意輪観音をお祀りしました。観心寺の如意輪観音は密教(秘密の教え)の特に大事な仏様であるために秘仏として祀られ、当時から33年に一度の開帳でした。その後も歴代の天皇に庇護され、後村上天皇は大地震後に鎮魂と復活を願い如意輪観音を祈願されました。

画像提供:観心寺
画像提供:観心寺

2、如意輪観音とは

次に如意輪観音とは何か確認しましょう。仏像にはいろんな種類があり、如来(にょらい:阿弥陀如来など)、菩薩(ぼさつ:弥勒菩薩など)、明王(みょうおう:不動明王など、天部(てんぶ:帝釈天など)があります。

この中で如意輪観音は菩薩の範疇に入り、その菩薩の中にも次のような種類があります。

  1. 観音(観世音)菩薩
  2. 弥勒菩薩
  3. 文殊菩薩
  4. 普賢菩薩
  5. 虚空蔵菩薩
  6. 地蔵菩薩 など

ここで如意輪観音は、観音菩薩のグループに入りますが、調べると観音菩薩の変化身(へんげしん:仏が衆生<しゅじょう:人間をはじめとするすべての生物>を救うために、姿を変えて現した身)とのこと。

六観音というものの一尊(いっそん:尊は人とか神道の柱のような意味合いを持つ仏様の単位)にはいるそうです。

画像提供:観心寺
画像提供:観心寺

さらにこの如意輪観音を調べてみると六道(ろくどう:衆生が輪廻転生する6つの世界)の苦を抜き、世間、出世間(しゅせけん:煩悩などのけがれに汚染された世間を超越しているもの)利益を与えてくれるとか。

また観心寺の如意輪観音は、独自の特徴があります。それは北斗七星とセットとなっている七星如意輪観音ということ。

かつて空海がこの場所に北斗七星を勧請(かんじょう:霊を呼び寄せた)し、星塚として祀った観心寺だからこその大きな特徴ですね。

3、4月17・18日公開の意味

最後に、1年間でこの2日間だけ公開している理由です。結論から言えば秘仏になった理由も含めて明確にはわかりません。ただヒントになるものがありました。それは縁日です。

例えば富田林市の瀧谷不動尊(明王寺)の本尊・不動明王の縁日は28日。毎月28日は滝谷不動駅からの参道が歩行者天国になるほど縁日は重要な日。(注:2022年5月以降は内容が変わります)

弘法大師(空海)の縁日とされる21日もそうで、京都・東寺の弘法市も有名ですね。いずれも曜日の配置とは無関係に日付の数字として重要な日が縁日です。

ここで観音菩薩の縁日が毎月18日(加えて17日も縁日のように記述している寺院も)ということがわかりました。また先ほどの永島住職も次のように教えてくれました。

旧国宝では日本で五番目の国宝で、新国宝制定から毎年4月の観音さんの縁日の18日と前日の17日の年に2回の御開帳になり現在に至ります。

かつては33年に1度だったものが、今では年に1度拝観できるようになったのは、それだけでもありがたいことですね。

また如意輪観音菩薩の写真が入った、観心寺KU-RIプロデュースチームによる御朱印帳の予約も受け付けているそうです。

このほか観心寺では次の重要文化財の公開も予定しているとのことです。

  • 鎌倉時代の大随求菩薩画像(金堂内)
  • 白鳳期の金銅制の観音菩薩と釈迦如来(宝物館内)
  • 後村上天皇念持仏の愛染明王(宝物館内)
  • 中尊寺経(宝物館内)
画像提供:観心寺
画像提供:観心寺

ということで、今年の観心寺如意輪観音の公開を前に秘仏の意味や如意輪観音とはどういう仏なのか、あるいは4月17・18日に公開している理由などについて、いろいろ調べてみました。

今では河内長野で4月の恒例行事ではありますが、ただ「年に一度見られる珍しい国宝」というのではなく、秘仏の意味や如意輪観音のことを意識しながら参拝してもよさそうです。

檜尾山観心寺(外部リンク)
住所:大阪府河内長野市寺元475
電話:0721-62-2134
国宝公開日:4月17・18日
国宝公開日受付:10:00~16:00(8:30から整理券を配布)
国宝公開特別拝観料:1000円
アクセス:南海・近鉄河内長野駅からバス 観心寺バス停から徒歩3分

奥河内地域文筆家(河内長野市・富田林市)

河内長野市の別名「奥河内」は、周囲を山に囲まれ3種類の日本遺産に登録されるほど、歴史文化的スポットがたくさんある地域です。それに加えて、都心である大阪市中心部に乗り換えなしで行ける複数の大手私鉄(南海・近鉄)と直結していることから、新興住宅団地が多数造成されており、地元にはおしゃれな名店や評判の良い店なども数多くあります。そして隣接する富田林市もまた、歴史文化が色濃く残る地域。また南河内地区の中核都市として、行政系施設が集まっています。これを機会に、奥河内(一部南河内含む)地域に住んでいる人たちのお役に立つ情報を提供していければと考えています。どうぞよろしくお願いします。

奥河内から情報発信の最近の記事