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会員が少ない結婚相談所に入会しても「いい人」と出会えないのでは?~結婚相談所の現実(1)~

大宮冬洋フリーライター
結婚相談所の現実を「所長」に直撃取材する新シリーズです。イラスト:つぼいひろき

データベースにいる2万人以上の異性とのお見合いが理論上は可能

 婚活というよりもっと気軽な出会いを目的としたアプリが全盛の時代だ。一方で、昔ながらの「お見合いおばさん(おじさん)」が経営する結婚相談所も残っている。会員一人ひとりの性格や事情を把握して、お見合いを組み、相談に乗り、結婚というゴールを一緒に目指していく仕事だ。彼らは具体的に何をしてくれるのか。料金は妥当なのか。そのやり方で本当に結婚できるのか。いろんな疑問がわいてくる。

 筆者は全国の結婚相談所を訪ね歩く連載を始めている。顔を合わせて話してみると、意外な現実を知ることが多い。こちらが率直な質問をすると、期待以上に赤裸々な回答が戻ってきたりする。本連載ではその一部を読者と共有したいと思う。

 第1回に登場してくれるのは、東京・神楽坂を拠点に女性5人で運営している「東京世話焼きおばさんの縁結び」。2009年の活動開始以来、試行錯誤しながら現在に至る。会員をカウンセリングする際は、スタッフの主観が出過ぎるのを防ぐために必ず2人1組で対応するというユニークな相談所でもある。今回のインタビューにも創業以来のスタッフである小野寺優子さんと下間瑞紀さんが2人で応じてくれた。

――会員数が20人ぐらいしかいない結婚相談所に入会しても、自分が理想とする結婚相手はそもそも在籍していないのではないか。こんな風に感じる独身者もいると思います。東京世話焼きおばさんの縁結びの会員数から教えてください。

小野寺 現在、80人弱です。5人のスタッフで一人ひとりをちゃんとお世話するには適正な人数だと感じています。100人を超えると多すぎますね。自会員同士のお見合いを組むこともありますが、うちは2017年11月から日本ブライダル連盟(※多くの結婚相談所が会員を共有するデータベースの一つ)に加入しているので、会員さんは2万人以上の異性のプロフィールを見て、お見合いの希望を出すこともできます。

下間 ただし、実際にはそんなにたくさんのプロフィールを見る必要はありません。むしろ、見ないほうがいい。例えば、年収6千万円のイケメンのプロフィールを見た後では、年収200万円の男性からお見合い希望が来たとしても受けたくなくなってしまうでしょう。

小野寺 ネット通販のカタログを見ている気分で「何でも選べるお客様感覚」になってしまうのです。でも、実際は相手からも自分が選ばれなくてはいけません。客観的に考えてもらうと、プロフィールがピカピカの男性が選ぶのは女子アナみたいなタイプだと気づいたりするのですが……。

入会して5カ月間ぐらいで10人弱の異性とお見合いして決める

――いろんな異性と会ってみたい、高望みしたい、というのが人情だと思います。でも、誰にしようか迷ったりお見合い自体を断られたりしているうちに年齢を重ねてしまいそうですね。

小野寺 その通り。今まで迷って来たから独身のままでいる人たちを、(たくさんの候補者を見せることで)さらに迷わせてはいけないと感じています。現状では会員さんがすべての異性のプロフィールを閲覧できてお見合いを希望できるシステムです。でも、閲覧できるのは多くても月に30人までにしたほうが良い気がします。

下間 申し込まれる場合も同様です。多すぎるのは良くありません。例えば、若々しい外見の美人が新たに会員になると、プロフィールを会員向けに公開した直後に100件を超える申し込みが殺到したりします。率直に言って、彼女の希望にはまったく沿わない男性も「ダメ元」で申し込んでくるのです。そのすべてを本人に見せると疲弊させてしまうので、どう考えても無理なお申し込みは私たち相談所の判断でNGを出すようにしています。

――数をこなせれば良いわけではない、と。

小野寺 結婚が決まる人は、入会して5カ月間ぐらいで10人弱の異性とお見合いしてから決めるパターンが多い。何十人も会う必要はありません。最初のお見合いで結婚を決める人もいます。お見合いは無料ではないし、時間も労力もかかります。月5件とかは多すぎますよ。お見合いは多くても月に3件ぐらいにして、それぞれとじっくり向き合うことをおすすめします。最終的に結婚する相手は1人なのですから。

「婚約しそうなのに気持ちが高まらない? そんなものだよ。いいんだよ、それで」

――意外と短期間での勝負なんですね。「この人」に決める際は相談所による的確なアドバイスも重要だと思います。会員にはどんな言葉をかけてあげていますか。

下間 最初はあまりアドバイスをしません。例えば、自分がアラフォーなのにアラサーの美人との結婚を望む男性がいたとします。お見合いができたとしても話が合わないことなどを繰り返して、自分の収まりどころを知るのです。交際を始めた会員さんの気持ちが6割ぐらい結婚に向かっていることがわかったら、「その人はあなたに合うと思うよ」「婚約しそうなのに気持ちが高まらない? そんなもんだって。いいんだよ、それで」などと声をかけてあげることが多いですね。結局のところ、正解かどうかは結婚してみないとわからないのですから。

 以上が東京世話焼きおばさんの縁結びへのインタビュー内容だ。婚活をしていると、知らず知らずのうちに「選ぶ側」に回ってしまうことが多い。そして、自分のことは棚に上げて「いい人がいない」などとボヤき始める。

 無数の他人の中から「いい人」を選べることよりも、誰かに選んでもらえる自分になることのほうが重要かつ有効なのだと思う。縁あって一緒にお茶や食事ができることになった人には感謝しながらきちんと向き合いたい。そのすぐ先に、想像もしなかった良縁が待っている気がする。

フリーライター

僕は1976年生まれ。40代です。燦然と輝く「中年の星」にはなれなくても、年齢を重ねてずる賢くなっただけの「中年の屑」と化すことは避けたいな。自分も周囲も一緒にキラリと光り、人に喜んでもらえる生き方を模索するべきですよね。世間という広大な夜空を彩る「中年の星屑たち」になるためのニュースコラムを発信します。著書は『人は死ぬまで結婚できる』(講談社+α新書)など。連載「晩婚さんいらっしゃい!」により東洋経済オンラインアワード2019「ロングランヒット賞」を受賞。コラムやイベント情報が読める無料メルマガ配信ご希望の方は僕のホームページをご覧ください。(「ポスト中年の主張」から2017年3月に改題)

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