国民民主党が発表した48兆円の経済対策 後手後手の菅政権に一喝か?
48兆円の経済対策を発表
国民民主党は11月27日、「追加経済対策」を発表した。「感染拡大防止と経済を両立して国民の命と生活を守る」と銘打っている。
内容は、48兆円の「コロナ国債」を発行して財政措置をとるもの。第1次補正、第2次補正の58兆円とあわせて、100兆円規模のものにする。この“100兆円”が重要だ。
「アメリカでは大統領選の最中ながら、民主党は2.2兆ドルもの経済対策を提案。人口比で考えれば、日本も1兆ドルほどの対策が必要になる」
記者発表の前日に、玉木氏は事務所で筆者にこのように語っている。実際のところ、日本の情勢は非常に厳しい。昨年10月に消費税を増税したため、10‐12月期の実質GDP(年額換算)は539.4兆円から529.6兆円と、10兆円も減少した。そこにコロナ禍が追い打ちをかけた形になっている。2020年4‐6月期の実質GDP(年額換算)は、1‐3月期と比して、年率換算で28%も減少。第1次、第2次補正で持ち直したものの、いまだ32兆円ものGDPギャップが存在する。
いまだ地盤沈下から抜け出せない日本経済
そればかりではない。このままではますます日本の地盤低下が顕著になる危険性がある。参議院で国民民主党・新緑風会に所属する上田清司議員は11月26日の予算委員会でこう述べた。
「賃金ベースで見ると、1997年を境に下がりっぱなしだ」
「2人以上の勤労世帯の可処分所得、月額ベースでピークの1997年が49万7000円で、2019年は47万7000円。年間でいえば、24万円少ない」
「(所得層を)100万円きざみで見ていくと、(年間所得が)一番多い層は1997年では300万円から400万円の層でした。ところが今は、一番多い層が200万円から300万円。一番多い国民の所得層が100万円もさがっている」
実際に現在の1人あたりのGDPは世界の33位。香港やシンガポールはもちろん、韓国にすら負けている。それどころか、とても先進国とは言えないの状態だ。
こうした現状にもかかわらず、政府は楽観にすぎるとはいえないか。新型コロナウイルス感染症の第1波と第2波が来たために、第1次と第2次補正予算を組んだ。ところがまだ7兆円もの予備費を消化していない。第3波が来ることは確実だったのに、無策という状態だった。
しかも菅義偉首相は10月26日の所信表明で、「バブル崩壊後、最高の経済状態を実現した」と言い放った。新規感染者数や重症者数が第2波を上回っているにもかかわらず、ただ「マスクをしろ」「3密を避けろ」などと一方的なコメントを述べるのみで、国民に対して会見すら開いていない。第203回臨時国会が開会された時、「第3次補正を作る」という話が流れたが、いつの間にか翌年の通常国会に持ち越されている。
低所得者に20万円、現役世代に10万円の所得税還付
「このままでは未消化の予備費7兆円は第3次補正に組み込まれてしまいかねず、数字だけ大きくなって『やった感』だけが出てしまう」
経済を救うためには“真水”が大事だと、玉木代表は主張する。国民民主党が主張する経済対策の目玉は、消費税を1年間5%に戻し、ひとり親家庭など低所得者向けに20万円、現役世代の所得税を10万円還付するもの。全て“真水”だ。前回の定額給付金(10万円)は国民民主党(当時)が牽引したが、あれでコロナ禍に喘ぐ多くの国民が、一息付けたに違いない。
後手後手にまわる政府を、衆参合わせてわずか16名(統一会派では衆参合わせて25名)の小さな政党がどのように引っ張っていけるのか。「政府が出してくる経済対策が楽しみだ」と、経済対策を発表後に玉木代表は述べた。「重要なことはブレーキをかけながら、コロナ禍が治まったらアクセルをぐっと踏み込むこと。現在の政府の方針では、アクセルとブレーキを同時に踏みこんでいる。それでは空転するばかりだ」。その警告は官邸に届くのか。
衆議院の任期満了まで11か月を切った今、各政党や各政治家がコロナ禍に喘ぐ国民に対していかに真剣に向かうのか、その姿勢が問われている。