長時間ゲームの悪影響は妥当 親の不勉強も… 「ゲーム障害」調査の生データ見て思うこと
10~29歳のゲーム利用状況に関する全国調査結果が発表されました。簡単に言えば、ゲームを長時間遊ぶほど実生活に良くない影響があるという内容で、ネットで話題になりました。ただどんな調査項目があり、どんな結果なのか、直接データを見た人は意外といないのではないでしょうか。
依存症対策全国センター「ゲーム使用状況等に関する全国調査」の掲載ページ
調査は、厚生労働省の補助事業で、国立病院機構久里浜医療センターが今年の1~3月に実施し、10~29歳の男女を9000人を対象に5096人(男性2546人、女性2550人)から回答を得ました。今回の調査は、多くのメディアで取り上げられ、新聞など社説にするメディアも目に付きました。「授業中や仕事中などでよくゲームをする」「学業に悪影響が出たり、仕事を危うくしたり失ったりしてもゲームを続けた」という人が1割以下ですが、一定数存在していました。そして報道の結論は「ゲームを遊ぶ時間が長いほど、現実生活に悪影響を及ぼす」というものです。
ですがそれはゲームに限らないことです。どんな趣味でも、酒でもギャンブルでも度が過ぎれば、実生活で問題を起こしますから、ある意味妥当な結果です。むしろ資料を見ると、さまざまなことが見えてきますので、紹介していきます。
まず、資料にある「ICD-11」ですが、これは世界保健機関(WHO)の国際的な診断分類「ICD」の最新第11版のことです。今年約30年ぶりに改訂され、「ゲーム障害」が疾患として加わりました。
・ゲームの時間や頻度をコントロールできない
・ゲームを行動の最優先にする
・現実世界で問題が起きているのにゲームを続ける
これらの状態が12カ月以上続き、社会生活に重大な支障が出る場合に「ゲーム障害」と診断される可能性があるわけです(適用は2022年から)。
調査は若者が対象なのですが、その中でも、10~18歳のサンプル数が多くなるよう設計して無作為抽出をしています。小学生高学年から高校生まで、判断力が心配な世代にゲームの悪影響がないかを心配しているのが伝わってきます。逆にいえば30代以上の調査ではないわけですね。
そして、調査の主目的はゲームですが、ネット全般の利用状況についての質問もあります。1位は動画サイトの80.2%、続いてニュースが77.6%、SNSが76.0%で、これがぶっちぎりのトップ3でした。「ゲームは?」というと、選択できる回答に「オンラインゲーム」しかないためか、同項目を選んだ人は46.2%とトップ3に大きく差を付けられての4位でした。
◆回答一覧(複数回答可)
情報やニュースなどの検索
メール
チャット・Skype・メッセンジャー
ブログ・掲示板
SNS
オンラインゲーム
動画サイト
その他
この回答一覧では、「オンラインゲーム」にスマホゲームのアプリが該当するかは、回答者の捉え方に大きく左右されそうで微妙なところです。ネットワークに接続しているオンラインゲームと、プレー自体にネット接続がなくても遊べるオフラインゲームを、正確に分けたい狙いがあるのかもしれません。しかし今のスマホゲームは、ネットワークに接続しないと実質的に遊べないのが普通なので、素直に「ゲーム」としたほうがより実態調査に近いでしょう。実際別の質問で「12カ月以内にゲームをしたか?」という質問には、85.0%が「はい」と答えています。
なお「ゲームをしている機器は」という質問は、スマートフォンが80.7%。据え置き型ゲーム機が48.3%、携帯ゲーム機が33.6%ですから、スマホが突出しています。今回の調査を考えた側に、基本利用料無料のスマホゲームと、買い切り型の専用ゲーム機は、ゲームの設計上ほぼ別物という認識がないのでしょう。ゲームの依存性を気にするならスマホゲームをマークするべきですね。オンラインゲームとオフラインゲームの違いも必要ですが、無料のスマホゲームとダウンロード買い切り型のスマホゲーム、専用ゲーム機の違いにも目を配ると調査の精度が高まりそうです。
自分専用の携帯電話とスマートフォン、PC(タブレット型)のいずれも持たない人は男女とも1割以下で、9割以上が持っているということになります。ちなみに「ネットを利用したことがない」と答えた人はわずか0.4%でした。そして有害情報を遮断するためのフィルタリングですが、保護者が設定しているのは21.5%。自分でしている人も15.4%いました。「利用していない」が37.9%でした。デジタルツールの活用は若い世代には当たり前ですが、親の能力が追い付いておらず「親の不勉強」という実態が数字から見えてきますよね。もちろんフィルタリングも完ぺきではなく抜け道はありますが、それでも親が子供の使うツールに対して、より興味を向ける必要はあるでしょう。
調査の後半は、ゲームのプレー時間ごとに「ゲームを自主的に止められるか」「実生活に影響を及ぼしているか」などを、丁寧に質問しています。「ゲームのやりすぎで家庭に暴力を振るったか」「ゲームのやりすぎで昼夜逆転はあったか」も聞いています。質問は似た内容が多く、質問に対する回答の傾向も概ね予想通りでした。ゲームの依存性を確認するデータの収集という要素が全面的に出ていましたから、調査の本気度合いが推し量れますね。
今後は「ゲームの依存性が高い」と思われる人を対象に、より精密な調査になるでしょうか。そのときも大きな話題になることは間違いなさそうです。