次の試合を観に行くためのトップリーグ週間ベスト15(第3節)【ラグビー雑記帳】
日本最高峰のラグビートップリーグ第3節(9月9日~10日)の私的ベストフィフティーンを紹介します。これからラグビーを好きになってもらう方の見どころ探しに活用していただければ幸いです。備考は文末にございます。
昨秋のワールドカップなどで何となく勝手を知った方向けにまとめております。もしわからない箇所がありましたら、「まぁ、要は、そういう感じなのね」と読み飛ばしていただいてかまいません。きっと、実際の観戦時に照らし合わせられることと存じます。
1 左プロップ
稲垣 啓太(パナソニック)…快勝した近鉄戦で生来の真骨頂が出たか。突進、突進する人を援護する動き、突進する相手を止めるタックル。この3つで、相手を敵陣方向へ押し込む。最前列でスクラムでも、時に近鉄の仕掛けにあおられながらも概ね姿勢をキープ。相手を掴んでいる側の脇を締め、フラットバック(首から尻にかけてのラインが地面と平行)を保つ。ちなみに山崎基生(神戸製鋼)も、コカ・コーラに勝った日の後半5分に相手ランナーをひっくり返すビッグタックルに成功。ホンダとの接戦に前半29分から出場した浅堀航平(トヨタ自動車)も、自陣でのジャッカル(密集の球に絡むプレー)や接点への援護など八面六臂の活躍。物質的負荷のかかるポジションの選手が動きのある場面で働くと、周りのメンバーは助けられる。
2 フッカー
日野 剛志(ヤマハ)…ラインアウトは13本中3本失敗も、スクラム成功率は100パーセントをキープ。調子のいい右プロップを軸に塊となって前へ出続けた。森太志(東芝)はキヤノン戦ではスクラムで後半からレフリングとの相性に戸惑うも、後半12分に敵陣中盤右中間を突っ切るなどフィールドプレーで魅せた。
3 右プロップ
伊藤平一郎(ヤマハ)…サニックスを前半から圧倒し、ハーフタイムで交代。スクラムではためのある膝と真っ直ぐな背中で相手の深部へ侵入。塊となった他の7人を前に引っ張り出した。前半14分のトライに繋がったモール(立ったボール保持者を中心とした塊)のなかでも、相手が腕をねじ込みそうな隙間へ頭を突っ込む。攻守逆転を未然に防ぎながら、モール全体の推進力を高めた。なお、後半から登場の山村亮も出色。スクラムでは伊藤平と同じく先陣を切った押し込みを貫いた。ノーサイド直前には密集へ身体をねじ込み相手のミスを誘い、ラストワンプレーのスクラムも押し切った。
4 ロック
アイザック・ロス(NTTコム)…ランナーへのサポートや展開中のパスで、グラウンド左右一杯に広がる攻撃陣形を機能させる。
5 ロック
小瀧 尚弘(東芝)…足の止まる時間帯になるほど、影のようなサポートで際立つ。腰を落とし、背中と地面を平行な姿勢を保持。相手の防御の真下へかいくぐったり、上腕を取ったり。フランカーのリーチ マイケルの突進について行った後半16分には、相手の反則を誘ってペナルティーゴールを獲得した。2分後、1点だったリードを4点に広げる。
6 ブラインドサイドフランカー
リアム・メッサム(東芝)…前半の終盤。自陣22メートルエリアでランナーの腕に手をかけ、落球を誘う。前半22分、センターのリチャード・カフィがキヤノンのアダム・トムソンへタックル。そこでできた接点へリーチとともにサポートへ入る。日本代表キャプテンのリーチ以外は、皆、ニュージーランド代表経験者。大物同士の真っ向勝負。
7 オープンサイドフランカー
リーチ マイケル(東芝)…球を持てば突進して相手の反則を誘い、合間、合間にはゲームキャプテンとして仲間を集めて次なるプレーの指示を出す。後半13分には互いが入り乱れるグラウンド中盤で、ジャッカルを試みる相手を腕力で引きはがす。攻撃を継続させる。
8 ナンバーエイト
アダム・トムソン(キヤノン)…7点差をつけられた直後の前半終了間際。敵陣の深い位置まで蹴り込まれたキックオフの弾道を追い、捕球した選手に猛チャージを仕掛ける。球に腕を絡め、ノット・リリース・ザ・ボールの反則を誘う。4点差につめハーフタイムを迎えた。後半12分には、自陣ゴール前の相手ボールラインアウトでスティール。ピンチとチャンスで顔を出す。
9 スクラムハーフ
田中 史朗(パナソニック)…前半24分、敵陣中盤左ラインアウトから中央、右端と順にラックを形成。折り返した先で、密集戦を主体としたボールキープを促し、徐々に左前方へ進む。球を持ち出しながらゴールラインと平行なパスをさばきながら、最後の最後、飛び出す守備網と味方選手の配列を見比べて深い角度のついたパスに切り替える。後方から勢いよく駆け込んだナンバーエイトのテビタ・ツポウを走らせる。後半22分にはベリック・バーンズのキックとタンゲレ・ナイヤラボロの捕球(いずれも後述)で敵陣の深い位置へ入ると、タックラーを引きつけながら森谷圭介(新人インサイドセンター)のトライを引き出す。一般的に言われる「優れた状況判断」とは、このようなプロセスを指すような。
10 スタンドオフ
ベリック・バーンズ(パナソニック)…エリアを獲得。自由なようで型のある攻撃を規律よく指揮。
11 ウイング
山田 章仁(パナソニック)…前半18分、田中が接点付近から守備網の背後へキックを蹴るや、鋭い出足でチェイスを仕掛ける。乱れた弾道をゴール前中央まで追いかけ、相手の苦し紛れのキックを誘う。以後、パナソニックは敵陣で球を保持。攻撃に加わっても着実な突破と接点作り。
12 インサイドセンター
立川 理道(クボタ)…キャプテンらしい仕事をしたのでは、と聞かれ、「それは観ている方の判断です」。8点差を追う後半32分、新人スクラムハーフの岡田一平のサイドアタックを皮切りに敵陣深い位置へ進むや、クボタはゆったりと攻撃を継続。渦中、左大外で守備網の凸凹を見定めた立川がボールをもらうと、一気に、ギアを入れる。トライ。ゴール成功と相まって1点差に迫り、試合終了間際の逆転勝利を導いた。守備時の接点への絡みでも試合を締めた。
13 アウトサイドセンター
タンゲレ・ナイヤラボロ(パナソニック)…大外からせり上がってのビッグタックル、相手をなぎ倒すランと、身長194センチ、体重125キロのパワーをいかんなく発揮。NECに勝ったブラッキン・カラウリアヘンリー(NTTコム)も、しばし右中間、左中間のスペースを射抜く。
14 ウイング
山下 楽平(神戸製鋼)…タッチライン際を駆けたJJ・エンゲルブレヒト(豊田自動織機)やハイパントチェイスや自陣からのビッグゲインなどで魅せたディグビー・イオアネ(ホンダ)も出色。そんななか、一昨季トライ王の日本人はコカ・コーラ相手に3トライを挙げる。特に1本目は、左タッチライン際の狭い区画で右斜め前に立つタックラーの死角でパスを待つ。球を受けた後は一直線でインゴールへ進んだだけ。速さや強さに頼らず、位置取りとコース設定の妙でスコアを奪う。
15 フルバック
コーリー・ジェーン(東芝)…先発の快足フルバック、コンラッド・バンワイクに代わって、後半15分から登場。攻撃ラインに参加し、パスをもらっては相手を引きつけ、大外の味方の大きな突破を誘う。緊迫した場面で簡潔なスキルを発動し、後半33分の豊島翔平のトライを導く。18-19と迫る。ノーサイド直前、逆転勝利。
<備考>
・ポジション解説は以下のURLのテキスト文中の「■」部分をご参照ください。
2019年W杯に向け…。ラグビー版「ドラフト会議」スカウティングレポート?(前編)
2019年W杯に向け…。ラグビー版「ドラフト会議」スカウティングレポート?(後編)
・背番号4、5(両ロック)、背番号6~8(フォワード第3列)と背番号11、14(両ウイング)は、ポジションの類似性から当日のゲームとは異なる背番号で選出させていただいていることがあります。
・基準は独断ですが、なるべく「その試合での勝利(もしくは勝利を目指す過程)に貢献した選手」をご紹介します。
・次節以降の詳細などはこちら。