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M-1グランプリで名前が売れた芸人ランキング2022

鳥海不二夫東京大学大学院工学系研究科教授
ニュージーランド ウエストランド国立公園(写真:イメージマート)

計算社会科学敗れる

M-1グランプリ2022が12月18日に行われ,ウエストランドが見事優勝しました.

毎年盛り上がるM-1グランプリですが,今年も折角なので計算社会科学的にツイートを分析してみました.

ちなみに,計算社会科学的M-1グランプリといえば,東京大学と吉本興業とのコラボイベントで計算社会科学者の浅谷先生が今年の夏に「計算社会科学による分析で今年のM-1王者を予想する」という分析を行い,オズワルドの優勝を予想していました.

残念ながら予想は外れてしまったので本人に聞いてみたら「あの時は空気を読んでみたんですが,今年はレベルが高かったですね」とのこと.個人的にはオズワルドのネタは大変面白かったので行けるんじゃないかと思ったんですが残念です.予想が当たれば計算社会科学の名前ももっと売れた気がするのに.来年も同じ企画があれば,是非当てて欲しいものです.

M-1グランプリ当日のツイート分析

事前の予想は外れたようですが当日のツイートの分析は事後なので外れようがないわけで,安心して分析に励めます.

というわけで,M-1グランプリ当日の各コンビ名の1分ごとのツイート数を分析してみました.その結果がこちらです.

1分ごとの各コンビへの言及数(筆者作成)
1分ごとの各コンビへの言及数(筆者作成)

漫才を行っている最中位にピークが来るのはどのコンビも同様です.また,最終決戦時には最終決戦に出た3組の名前でスパイクが見えますが,このときはさや香がダントツトップのようです.ロングコートダディ・・・

そして,ウエストランドの優勝が決まった瞬間に一気にウエストランドツイートが増加し,ピーク時には1分間に30000回もツイートされたようです.さすがにこれはすごい.

最大瞬間ツイート速

次に,最大瞬間ツイート速(ツイートがピークの瞬間のツイート数)について見てみましょう.ただし,漫才は5分弱行われることが分かっているので,各コンビのツイート数についてピークの5分におけるツイート数を計算してみました.ただし最終決戦は除いています.

ピーク時のツイート数(筆者作成)
ピーク時のツイート数(筆者作成)

この結果から1stラウンドではさや香が最もツイートが多くなっており,次にオズワルドウエストランドヨネダ2000の順になっていたことが分かります.

オズワルドは敗者復活だったということもありますので,言及数が増えるのは分かりますが,ツイート数的にはさや香の方が上だったようです.

なお,審査員の合計得点との相関係数を計算してみたところ,0.535となりツイート言及数と得点との間にはそこそこ相関があることが分かりました.ちなみに,敗者復活というノイズのあるオズワルドを外すと相関係数は0.619となりさらに相関は高くなるようです.

知名度はどのくらい上がったか?

さて,最後にM-1グランプリは優勝することもそうですが,やはり芸人さんにとっては知名度を上げることも重要な事かと思います.

そこで,翌日以降M-1グランプリ前と比べてどのくらい言及数が増えたかを見てみましょう.ここでは,M-1グランプリが開催される直前1週間(12月11~17日)における1日平均言及数からどのくらい変化したかを算出しました.まずは翌日12月19日です.

12月19日の言及数上昇率(筆者作成)
12月19日の言及数上昇率(筆者作成)

流石に翌日はM-1グランプリの興奮冷めやらぬ感じでどのコンビも事前に比べて多く言及されていることが分かります.もちろん優勝したウエストランドは多数の言及がありますが,それ以外のコンビも軒並み上昇しています.ただし,ダイヤモンドだけはほぼ変わらないですが,これはダイヤモンドが一般名詞としても使われていることが大きな原因だと思います.一般名詞をコンビ名や芸名に使うの,マジやめて欲しい

しかし,M-1グランプリ終了直後はまだM-1グランプリの影響が大きく出ているので,言及数が増えるのは当たり前.それから少したってからも言及数が上昇していてこそ,知名度がアップしたといえるでしょう.

そこで,少し時間を置いた12月21~24日の1日平均ツイート数と事前の11~17日の平均ツイート数を比較してみました.その結果がこちら.

各コンビの言及数上昇率(筆者作成)
各コンビの言及数上昇率(筆者作成)

これより,ほとんどのコンビでツイート数上昇率が1.0程度となっていることが分かります.つまり,M-1グランプリ決勝前後でほとんど言及数は変わらなかったということになります.M-1グランプリ決勝に出たからと言って言及数が増えるというわけではないということで,芸人さんたちって本当大変だなと思います.

その中でも言及数を大きく上げていたのは,優勝のウエストランド,準優勝のさや香でした.この辺は順当なところでしょう.ロングコートダディ・・・

それに続いて言及数の増加率が高かったのはヨネダ2000男性ブランコでした.ヨネダ2000が約3倍,男性ブランコが約2倍の言及率となりましたので,この2組についてはM-1グランプリ前後で知名度が結構上がったのではないかと推測されます.その意味では,優勝は逃したもののこの2コンビについてはM-1グランプリ決勝進出は大きくプラスに働いたと考えられるのではないでしょうか.もちろん,今後どうなるかはまだまだ分かりませんが.

以上,ツイッターからM-1グランプリ2022を振り返ってみました.

今年はずいぶんレベルが高く面白い漫才が多かった気がします.来年も面白い年になりますように.そして,願わくは一般名詞が名前のコンビが減りますように(分析のしやすさ的な意味で).

東京大学大学院工学系研究科教授

2004年東京工業大学大学院理工学研究科機械制御システム工学専攻博士課程修了(博士(工学)),2012年より東京大学大学院工学系研究科准教授,2021年より現職.計算社会科学,人工知能技術の社会応用などの研究に従事.計算社会科学会副会長,情報法制研究所理事,人工知能学会前編集委員長.人工知能学会,電子情報通信学会,情報処理学会,日本社会情報学会,AAAI各会員.「科学技術への顕著な貢献2018(ナイスステップな研究者)」

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