父子・母子世帯の半数以上が年収400万円未満という現実
今月半ばにも取りまとめられるとされるいわゆる骨太の方針(「経済財政運営と改革の基本方針」)を前に「異次元の少子化対策」もいよいよ大詰めを迎えています。ただし、具体的な財源は先送りとなっていますが...。
所得制限の撤廃、児童手当の支給対象を18歳(高校生)まで拡大、第3子以降への加算を3万円に増額等、景気のいい話が飛び交っています。
しかし、2010年当時の民主党政権が所得制限を設けない「子ども手当」を創設したことを批判して「愚か者めが」と激しいヤジを飛ばしたり、2012年に政権を奪還するや、所得制限を復活させたことからも分かりますように、元々、自民党は「(児童手当が)経済的支援であるのなら所得の低い家庭により手厚い支援をすべき」との立場でした(なお、所得制限なしの子ども手当創設とともに年少扶養控除が廃止されています(後に所得制限が再導入され、年少扶養控除が廃止されたままの実質増税になっています)。そして今回も高校生までの所得制限なしの児童手当と引き換えに特定扶養控除が廃止されようとしています)。
疑問だらけの「子ども手当」(自由民主党)
もちろん、限られた予算を低所得の子育て世帯に集中しようとする旧来の自民党の立場も一理あります。要は、政策目的次第だからです。
では、より弱い立場にあると思われる父子・母子家庭の所得分布はどうなっているのでしょうか?
総務省統計局「全国家計構造調査(令和元年)」によれば、夫婦と子供のいる世帯と父子・母子家庭の所得分布は下図のようになっています。
明らかなように、父子・母子世帯では低い所得階層に偏っていまして、もっとも多い所得階層は200万円から300万円未満であるのに対して、夫婦と子供の世帯では600万円から700万円未満の層が最も多く、400万円ほどの開きがあります。
また、同じデータを累積度数分布で見れば、父子・母子世帯では年収400万円未満の所得階層までで全体の過半数を超えていますが、夫婦と子供の世帯で年収400万円未満では全体の7%に過ぎず、過半数となるのは800万円未満の所得階層となっています。
このように、父子・母子家庭は夫婦と子供のいる世帯より、はるかに経済的に恵まれない環境にあることが分かります。
児童手当の拡充は、出生増というよりは子育て対策の側面が強いので、児童手当法の目的「児童を養育している者に児童手当を支給することにより、家庭等における生活の安定に寄与するとともに、次代の社会を担う児童の健やかな成長に資することを目的とする」に鑑みれば、所得水準に応じたメリハリのある児童手当も検討の余地があるのではないかと思いますがいかがでしょうか?