大分女性行方不明、2年経過。実は年間8万人も行方不明に!?
大分市の若い女性が行方不明になって2年が経ちます。この事件、地元大分では当時、大きく取り上げられ、2年経った今でも地元紙、あるいは地元のテレビ、ラジオ放送局で取り上げられています。この女性の失踪事件が大きく取り上げられる理由は、大分で若い女性が失踪したという事実からだけではありません。もちろん、失踪する理由がなく、犯罪に巻き込まれた可能性があるというだけではないのです。逆に犯罪に巻き込まれたことが確実でないことに由来している部分があります。その理由を説明しましょう。
彼女の失踪事件解決を困難にしている理由は、彼女の失踪に関係する交友関係の少なさです。実は手掛かりとなる交友関係がないのはリアルな社会のみであって、ツイッターやインスタグラム等、SNSでは数多くの人との交友関係が確認されています。失踪と全く関係がない投稿や書き込みばかりではないことも確認されているようです。捜査当局でもSNSには注目していて可能な限りの捜査を行っています。公開されているSNSの情報から名寄せを行い、連絡が取れるSNSユーザの協力を得てSNSでの交友関係を探っているようです。しかし公開されている情報だけでは限界があります。SNSの利用者の特定や利用している携帯電話等の契約者名が判明すれば、大きな手掛かりになり、捜査が大きく進展する可能性があるのです。ではなぜ、それができないのでしょうか。SNSの運営会社や携帯電話会社が積極的に協力できない理由は個人情報の扱いにあるのです。彼女が犯罪に確実に巻き込まれ、自身の意思に反して失踪に至っていることが明確であるならば、法律的な手続きに従って、必要な情報が公開されます。今回の場合、自分の意志ではなく、かつ犯罪に巻き込まれている可能性が高いとはいえ、確実にそれが実証されているとは言えません。捜査機関が法的な手続きに基づいて公開要請を執行した場合ではなく、単に捜査協力として個人情報を公開した場合、運営会社等の個人情報管理について疑義を持たれる可能性があり、さらに公開した個人情報の対象者自身から訴えられる可能性も否定できないのです。
今回の件とは別にしても、失踪自体は一般の人が考えているように極めて少ない事例であるわけではありません。全国の警察に届け出ている失踪捜索願だけでも毎年8万件以上あるのです。警察庁生活安全部の「平成29年における行方不明者の状況」では、84,850人が行方不明者として届けられています。男性が64.3%、女性が35.7%です。その中で、10代、20代は合わせて33,464人で39,4%となっています。しかし、死亡確認も含めて7日以内に、所在確認が約70%以上取れています。逆に、2年経っても、約2%、2,000人程度の人が所在不明のままです。これらの人がすべて犯罪に巻き込まれているとは決して言えず、ほとんどが犯罪とは無関係で自分の意思で失踪している可能性が高いのです。もちろん、すべてが自分の意志とは限らず、1%と見ても、年間数十人が自分の意思に反して、それも犯罪に巻き込まれていると考えられなくはありません。
大分の女性行方不明事件でも犯罪に巻き込まれている可能性が低くないとしても、それ以上に事故を含めて犯罪以外の理由に寄ることも否めません。本人だけの個人情報に留まらず、他の人のそれに及ぶ場合は極めて慎重な問題であって、例え当該者の肉親の要請であっても容易に応じられないのです。