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【新春特別企画】斎藤ちはる、夢を叶える~念願のNFL現地取材で、憧れのトム・ブレイディとも対面~

三尾圭スポーツフォトジャーナリスト
ペイトリオッツ対タイタンズ戦を現地取材した斎藤ちはる(三尾圭撮影)

 今年7月に国民的アイドルグループの「乃木坂46」を卒業した斎藤ちはる。明治大学の現役女子大生でもある彼女は、グループ卒業後は大学生活に専念している。大学4年生で、大学卒業後には新たな道を歩み始めることになるが、その前にどうしても叶えておきたい夢があった。

 それはNFLを現地で取材すること。

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 父親が現役のアメリカン・フットボール選手で、幼い頃からアメフトに親しんできた。乃木坂46のメンバーになってからは、アメフト関係の個人仕事の機会も増え、芸能界きってのアメフト好きとして知られるようにもなった。

 今年5月には大学アメフトで事件が起き、アメフトが望ましくない形で連日のように取り上げられた。アメフトを愛する彼女は心を痛め、アメフトの真の姿、アメフトが持つ本当の魅力を多くの方に知ってもらいたいと強く願っていた。

 大学を卒業する前に夢を叶え、アメフトの面白さを伝えるという課題をクリアするために、斎藤ちはるはアメフトの本場ーーアメリカーーに旅立った。

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 斎藤ちはるが向かった先はテネシー州ナッシュビル。テネシー・タイタンズの本拠地、ニッサン・スタジアムで行われるテネシー・タイタンズ対ニューイングランド・ペイトリオッツの試合を取材に訪れた。

斎藤ちはるが取材に訪れたのはテネシー・タイタンズ対ニューイングランド・ペイトリオッツの試合(三尾圭撮影)
斎藤ちはるが取材に訪れたのはテネシー・タイタンズ対ニューイングランド・ペイトリオッツの試合(三尾圭撮影)

 アメリカでは野球よりもバスケットボールよりも人気が高いスポーツがアメリカン・フットボール。鍛え上げられた肉体を激しくぶつけ合う肉弾戦に、綿密な作戦を遂行しながら相手の陣地を奪う頭脳戦の要素も加わる奥の深いスポーツ。

 アメリカ人の気持ちを理解して距離を縮めるには、アメフトの試合に足を運ぶのが近道と言われるほどにアメリカ人から愛されている国民的スポーツだ。

 アメリカではフットボールの試合に行って、試合だけを観戦しても、アメフト観戦の醍醐味全てを満喫できたとは言い難い。

 ほとんどのスタジアムには大規模な駐車場が備わっており、ファンは試合が始まる何時間も前にスタジアムの駐車場に来て『テールゲート・パーティー』を楽しむ。

 家から屋外用グリルを持って来てBBQを楽しんだり、美味しい料理を食べ、お酒を飲みながら試合開始前から盛り上がる。そのスケールの大きさが日本では想像できないほどに大きく、「これぞアメリカ!」的なスケールの大きさを体感できる。

 このテールゲート専用の車を持っている熱狂的ファンも珍しくはなく、大型テレビやバー設備を備え付けた豪華な車でテールゲート・パーティーをする筋金入りのファンも多い。

アメリカン・フットボール観戦の醍醐味は試合開始前から始まっている。テールゲート・パーティで気分を高めてから、スタジアムへ乗り込むのがアメリカ流の楽しみ方(三尾圭撮影)
アメリカン・フットボール観戦の醍醐味は試合開始前から始まっている。テールゲート・パーティで気分を高めてから、スタジアムへ乗り込むのがアメリカ流の楽しみ方(三尾圭撮影)

 本場アメリカでのNFLの楽しみ方を体験するために、テールゲート・パーティーをしているファンに声をかけてみた。遥々日本からNFLを観に来たことを伝えると、すぐにパーティーの仲間に入れてもらい、本場のテールゲート・パーティーを満喫した。この日は気温が低かったために、ホームメイドの暖かいスープが冷えた身体に染み渡り、現地ファンとの交流で心も身体も温かくなった。

 「まったく知らない人とその場で初めて出会って、そこで同じ鍋をつつきながらアメフトの話題で盛り上がるのがアメリカならではの楽しみなのかなと思いました。日本のスポーツにはないアメリカならではのスポーツ文化をテールゲート・パーティを通して体験できました。敵のファン同士であっても、テイルゲート・パーティーでライバリティを盛り上げながら、楽しんでいるのが印象的でした」

 NFLのスタジアムでは、ファンが自分たちで準備するテールゲート・パーティーだけでなく、スタジアムの外では開門前から様々なイベントが行われている。

 フェイスペインティングや体験/参加型のブースが多数用意されており、入り口前には特設ステージが作られ、生バンドの演奏でファンの気分を高めていく。そこにチアリーダーがやってきて、記念写真を一緒に撮ったり、華麗なダンスパフォーマンスを間近で観られる。

 斎藤ちはるも日本人NFLチアリーダーの曽我小百合さんと試合前に会い、一緒に写真を撮っていた。

 「NFLのチアリーダーの方々と間近で交流できることに驚きました。スタジアムでは遠くからしかパフォーマンスを観られないかもしれませんが、ファンの方が近くでパフォーマンスを観られる機会を作られているのはさすがNFLだなと思いました。試合前から一度も暇な時間がなく、ずっとワクワクする時間を提供してくれるところにNFL人気の理由の1つを見ました」

テネシー・タイタンズの本拠地、ニッサン・スタジアムのフィールドに立つ斎藤ちはる(三尾圭撮影)
テネシー・タイタンズの本拠地、ニッサン・スタジアムのフィールドに立つ斎藤ちはる(三尾圭撮影)

 試合開始前からテンションが最高潮まで高まったところで、いざスタジアムに入場。

 小さいころから父親の試合は何度も応援に行っていたが、NFLの試合を生で観るのは初めて。試合前のスタジアムに足を踏み入れると、その大きさに圧倒された。

 「7万人収容のスタジアムを満員にできるのは、日本だとサッカーの代表戦くらいしかありませんが、NFLは毎週、全米各地で7万人以上収容の巨大スタジアムを満員にします。満員のスタジアムを見て、NFLが全米で最も愛されているスポーツであることを体感しました。スタジアムのファンが持つ熱気を肌で感じて、ファンがチームの後押しするのだと思いました。[アイドル時代に]私もファンの人の声援が大きければ大きいほど、より大きな力を受けました。ファンの方たちの声援がわたしの活力になりました。毎回公演に足を運んで応援してくれるファンの方や、初めて公演に来てくれた方、わざわざ遠くから来てくれる方。いろんなファンの方がいますが、そんな皆さんの声援に支えられてきました。同じようにNFL選手にとっても、ファンの方の声援が力となることを感じました」

 炎が上がるド派手な演出の中、選手紹介が行われ、選手たちがフィールドに揃うと、国歌斉唱が行われる。

 この日の試合はアメリカの祝日である「復員軍人の日」に開催され、試合前の国歌斉唱ではフィールド一杯に広がる星条旗を約100名の軍人さんたちが持ち、スタジアムの上を3機のヘリコプターが飛んで行った。これもまた、アメリカのスポーツ観戦ならではのスケールの大きさだ。

 ペイトリオッツとタイタンズは昨シーズンのプレーオフ2回戦で対戦しており、このときは35対14でペイトリオッツがタイタンズを撃破。

 タイタンズはオフに元ペイトリオッツの選手として3度のスーパーボウル優勝に貢献して、昨季は同地区のヒューストン・テキサンズで守備面最高責任者のディフェンシブ・コーディネーター(DC)を務めていたマイク・ブラベルを新監督として招聘。ブラベル監督(HC)はペイトリオッツが持つ『王者のメンタリティ』をチームに浸透させて、チーム改革に取り組んでいる最中だ。

 ブラベルHCの古巣相手に昨季のリベンジを果たせれば、タイタンズの選手たちに大きな自信を植え付けられることもあり、ブラベルHCは最高のゲームプランを準備して、本拠地に常勝軍団を迎え入れた。

健闘を称え合うトム・ブレイディ(左)とタイタンズのマイク・ブラベルHC。2001年から08年までの間、2人は攻守の要としてペイトリオッツを4度のスーパーボウル出場に導いた。(三尾圭撮影)
健闘を称え合うトム・ブレイディ(左)とタイタンズのマイク・ブラベルHC。2001年から08年までの間、2人は攻守の要としてペイトリオッツを4度のスーパーボウル出場に導いた。(三尾圭撮影)

 試合はペイトリオッツのキックオフでスタート。

 タイタンズのダリアス・ジェニングスが58ヤードリターンという見事な走りを見せ、好ポジションからタイタンズの攻撃が始まった。タイタンズのクオーターバック(QB)のマーカス・マリオタは、このチャンスを見事に生かしてタイトエンド(TE)のジョンヌ・スミスへのタッチダウン・パスを成功させて先制。幸先良いスタートを切った。

ペイトリオッツ戦の1Qに2本のタッチダウンパスを決めたタイタンズQBのマーカス・マリオタ(8番)(三尾圭撮影)
ペイトリオッツ戦の1Qに2本のタッチダウンパスを決めたタイタンズQBのマーカス・マリオタ(8番)(三尾圭撮影)

 ペイトリオッツの攻撃をフィールドゴールに抑えたタイタンズは、次の攻撃シリーズでも78ヤードのドライブでタッチダウンを決めると、このクォーター3回目の攻撃もフィールドゴールを決めて、17対3と予想外のリードで1Qを終えた。

 2Qに入ると、ペイトリオッツがタッチダウンを奪って、得点差を1タッチダウン差に詰める。

 その後は両チームのディフェンス陣が踏ん張り、両軍合わせて4度の攻撃が無得点に終わった。その沈黙を破ったのは、またしてもタイタンズでランニングバック(RB)のデリック・ヘンリーがタッチダウン・ランを決めて24対10でハーフタイムに突入した。

 3Qは両チームともに動きがなく、タイタンズがフィールドゴールを1本決めて27対10とリードを少しだけ広げる。

 4Qに突入して後がなくなったペイトリオッツは、残り11分41秒時点のサードダウン、7ヤードの場面でトム・ブレイディがジュリアン・エデルマンにパスを通したが、ファーストダウンには1ヤード足りず。タイタンズ陣地37ヤードからのフォースダウン、1ヤードでランプレーを狙ったが、ここで右タックル(RT)のマーカス・キャノンが痛恨のフォルス・スタートの反則を犯してしまって、5ヤード罰退。フォースダウン、6ヤードでブレイディはエデルマンへの短いパスを狙ったが、タイタンズの堅いディフェンスに封じられた。

4Q残り7分でペイトリオッツが仕掛けたフォースダウン・ギャンブルが失敗に終わり、トム・ブレイディはベンチに下がった(三尾圭撮影)
4Q残り7分でペイトリオッツが仕掛けたフォースダウン・ギャンブルが失敗に終わり、トム・ブレイディはベンチに下がった(三尾圭撮影)

 

 自軍42ヤードという好ポジションで攻撃権を得たタイタンズは、マリオタのパスで前進を続け、最後はヘンリーの10ヤード・タッチダウン・ランで34対10とダメ押し。

 ここで試合を諦めたペイトリオッツは試合時間を7分残しながらも、エースQBのブレイディをベンチに下げた。

 レギュラーシーズンとプレーオフを合わせてNFL通算300試合目を勝利で飾れなかったブレイディは、41回パスを試みて21度成功の254ヤード。パスによるTDもなく、3度のサックを食らってしまった。

 対するマリオタは24パス中16回成功。パス獲得ヤードは228ヤードとブレイディよりも少なかったが、2タッチダウン・パスを決めて、QBレイティングは70.6のブレイディを大きく上回る125.0を記録した。

 勝敗を分けたのは、ラン攻撃の差。ペイトリオッツは僅か40ヤードに抑えられたのに対して、タイタンズはチーム合計が150ヤードとパスとランをバランス良く使い分けた。

 また、タイタンズのディフェンス陣はペイトリオッツのランを封じ込めただけでなく、ブレイディに対して常にプレッシャーを掛け続けて、ブレイディにも仕事をさせなかった。ブレイディの3被サックは、今季最多の数字である。

 ペイトン・マニングが持つレギュラーシーズンとプレーオフ合計で通算579タッチダウン・パスのNFL歴代最多記録に3と迫っていたブレイディだが、新記録達成は持ち越しとなった。

トム・ブレイディをサックするタイタンズ・ディフェンス陣。ブレイディにプレッシャーを掛け続けて、パス成功率を51.2%に抑え、タッチダウンを許さなかった(三尾圭撮影)
トム・ブレイディをサックするタイタンズ・ディフェンス陣。ブレイディにプレッシャーを掛け続けて、パス成功率を51.2%に抑え、タッチダウンを許さなかった(三尾圭撮影)

 '''「スタジアムで試合を生で観て、選手たちの『勝ちたい』という気持ちが強く伝わってきました。選手が醸し出すエネルギーも感じられ、一度NFLをスタジアムで観たら、また観たくなってしまうNFLが持つ醍醐味を感じました。ファンの声援が試合に影響を及ぼすことも、スタジアムで観たからこそ感じられたことでした。大声援で相手チームの選手たちがコミュニケーションを取れないように邪魔をするクラウドノイズの凄さは、スタジアムに来たからこそ体験できたものでした。

 ブレイディ選手は冷静さを常に保ちながら、持ち前の負けず嫌いの熱さも感じられました。フィールドだけでなく、ベンチに下がっても、いろいろな選手に声をかけ、チームメイトのやる気を引き出そうとしていました。思うように試合が進まない状況でも、諦めることなく、最善の道を探ろうとするブレイディ選手の姿から真のリーダーとは何なのかと考えさせられました」'''

 試合後にはトム・ブレイディの記者会見に潜入。今季最悪の負けを喫した直後だったが、スーツをかっこよく着こなして会見に現れたブレイディは記者たちからの鋭い質問にも丁寧に対応。

 「タイタンズは素晴らしかった。ラッシュィングもパス・カバレージも良く、ゲームプランを完璧に遂行したけど、僕たちにはそれができなかった。試合開始から相手チームにプレッシャーを掛けることができずに、それを最後までできなかった。チームの全員にとって最悪の試合となった」

 会見終了後、斎藤ちはるがブレイディに突撃成功。憧れのブレイディに挨拶をした彼女は、「ほんの少しの短い時間でしたけど、ブレイディ選手と話せたことは夢のようでした。一生に一度は会ってみたいと思っていた人でしたので、夢が叶った瞬間でした」と笑顔を見せた。

NFLのスタジアムでカメラを構える『のぎ天写真部』初代部長の斎藤ちはる(三尾圭撮影)
NFLのスタジアムでカメラを構える『のぎ天写真部』初代部長の斎藤ちはる(三尾圭撮影)

 試合の結果は彼女が望んだようなものではなかったかもしれないが、筋書き通りに行かないのもスポーツの醍醐味の1つ。NFLの歴代最高選手と呼ばれるブレイディの神がかり的なスーパープレーも見れなかったが、そんな中でもブレイディが見せるスーパースター独特のオーラと凄さは感じられた。

 彼女が生で見たNFLの試合は、両チームの選手たちが知力と体力を振り絞りながら、全力で戦う魅力的なゲームだった。初めて生でNFLを観戦したことで、これまで以上にアメフトとNFLが好きになり、このスポーツが持つ素晴らしさを多くの人たちに伝えていきたいとの思いもさらに強くなった。

 「人生で初めてのNFL観戦で、わたしが一番好きなチーム、選手のプレーが見られただけでなく、ブレイディ選手とお会いすることもできて本当に嬉しかったです。これまで以上にNFLが好きになり、これからもっと多くのスタジアムでNFLを観てみたいなと思いました。日本ではまだアメフトが持つ素晴らしさが浸透していないので、これからもNFLとアメフトの魅力を自分ならの方法で伝えていきたいです」

 

スポーツフォトジャーナリスト

東京都港区六本木出身。写真家と記者の二刀流として、オリンピック、NFLスーパーボウル、NFLプロボウル、NBAファイナル、NBAオールスター、MLBワールドシリーズ、MLBオールスター、NHLスタンリーカップ・ファイナル、NHLオールスター、WBC決勝戦、UFC、ストライクフォース、WWEレッスルマニア、全米オープンゴルフ、全米競泳などを取材。全米中を飛び回り、MLBは全30球団本拠地制覇、NBAは29球団、NFLも24球団の本拠地を訪れた。Sportsshooter、全米野球写真家協会、全米バスケットボール記者協会、全米スポーツメディア協会会員、米国大手写真通信社契約フォトグラファー。

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