男子よりイケメンで男性恐怖症で母親が過干渉。松井愛莉が主演ドラマで「辛い役で放心状態になりました」
男性恐怖症のイケメン女子と、女性になりすまして近づくストーカー、“秘密の同盟”を結ぶ絶世のプレイボーイ。いびつな三角関係が話題を呼ぶドラマ『シークレット同盟』に松井愛莉が主演している。髪をボーイッシュなベリーショートにして、重苦しい難役に挑んだ。10年を越えるキャリアの中でも、かつてない経験をしたという。
ここまで髪を短くして似合うか不安でした
――『シークレット同盟』の詩杏役は、「そこらの男子よりイケメン」ということもありきでのキャスティングだったんでしょうね。
松井 自分では不安でした。ここまで髪を短くしたのが初めてで「これ似合ってるの? 大丈夫?」と。いざ現場に行ってみると、みんなに「似合ってる!」と言ってもらえたので、安心しました。
――『白暮のクロニクル』でもショートですが、さらに短くして。
松井 『シークレット同盟』の撮影に入ってから、『白暮』の写真を見ると「髪、長っ!」と(笑)。感覚が全然違っています。シャンプーもちょっとで済むし、こんなに短いならリンスは要るのかなと、ずっと疑問に思っていて(笑)。ドライヤーで髪が乾くのも一瞬で、楽になりました。
――髪の長さは別にしても、松井さんも女性にモテるタイプだったのでは?
松井 そんなことはないです(笑)。ファンの方は女性と男性、半々くらいだと思います。
女子大生役でも年齢は気にしないように
――詩杏は21歳の女子大生で、27歳の松井さんとしては年齢感も意識していますか?
松井 年齢はあまり気にしないようにしていましたが、高校生の制服を着たときは、さすがにちょっと意識しました(笑)。
――回想シーンではセーラー服を着ていて。
松井 久しぶりな気がします。でも、ブレザーはちょいちょい着ていたので、「またか」と思いました(笑)。
――まだ全然お似合いでした。詩杏が悩む男性恐怖症についても、事前に調べたんですか?
松井 もちろんです。男性恐怖症でなくてもパニック障害を持つ方に話を聞いたり。そこまで深くうかがうことはできなくて、どなたからも同じお話が出るので、情報はあまり増えませんでした。その中から拾えるところを拾いながら、役作りをしました。
――原作のマンガも読み込みつつ?
松井 はい。ただ、原作と台本は違っているところもあったので、徐々に台本のほうにシフトしていきました。
過呼吸のシーンは酸欠で倒れそうになって
――生身ということもあってか、松井さんが演じる詩杏の男性恐怖症は、原作より重度のように感じます。
松井 本当ですか? 歩き方や手の仕草ひとつでも、オドオドして挙動不審な感じは意識しました。内にこもって、堂々と歩けないようなところだったり。
――男性に近づいてこられて、過呼吸になるところも本当に苦しそうでした。
松井 酸欠になります。何テイクか撮るとフラフラしてきて、倒れそうでした。
――役に入ると自然に過呼吸も起きて?
松井 自分が昔、過呼吸になった経験を思い出しながら演じました。呼吸をしようとすればするほど、苦しくなったりしたのを覚えていて。
――松井さんも恐怖症まではいかなくても、その根っこみたいなものがあったりは?
松井 最近はないです。ゴキブリが出たら怖いですけど(笑)。詩杏と私が似ている部分というと、引っ込み思案で思ったことをなかなか言えない、伝えるのが苦手なところだと思います。
自分にない感情が多く出てきて悩みました
――総じて今回の詩杏は、難易度が高い役ですか?
松井 演じるに当たって悩みました。自分にない感情も多く出てきたので……。小さい頃から母親に抑えつけられて、事件から男性恐怖症になり、友だちの少ないコミュニティで生きてきて。詩杏の悩みを考えると、自分も心がすごく辛くなります。境遇を思えば、言葉ひとつでも「こういう言い方をしてしまうのも仕方ないかな」と思ったり、逆に疑問を感じてしまったり。詩杏という人物を理解するのは難しかったです。
――役と同化していると、自分の気持ちも重くなりました?
松井 とてもしんどかったです。心にグサグサとナイフを何本も刺されている感じがありました。信じていた人に裏切られたり、傷つけられたり。それでも、こうして生きていられるのは、詩杏は意外と図太いのかもしれない、とも思いました。そんなふうにいろいろ考えながら、撮影していました。
――撮影が終わっても、重い気持ちを引きずったりは?
松井 今まで役をそんなに引きずることはなかったんですけど、今回の撮影がアップしたあとは放心状態になりました。人と会いたくなくて、1人で家にずっと籠っていて。
――撮影期間中も現場から家に帰ったら、そんな感じに?
松井 そこは切り替えていました。次の撮影の台詞を覚えてないといけないので。毎日必死で、全部終わったあと、心にポッカリ穴が開いた感じです。
不安があっても当たって砕けろ精神で
――母親に「お母さんのせいで普通の人生を送れなかった!」などと感情を爆発させたり、号泣したり、1人で荒れるシーンもあります。
松井 エネルギーをたくさん使いました。私は普段、あまり怒ったりもしないので、心にドッと来て。でも、撮影自体は楽しかったです。
――役者としては、演じる面白みはあると?
松井 ストーリーはとても重みがありましたが、現場は明るくて、少しの待ち時間でも笑いが絶えなくて。メリハリはつけながら、みんなでより良いものにしようと頑張っていて、救われました。
――爆発するシーンの前は、集中して気持ちを作るんですか?
松井 急には切り替えられないので、集中はしていました。台詞が多いと不安はありますが、当たって砕けろ精神でやっています(笑)。相手役の方と対面しないと気づかない感情もありますし、自分1人で考えても生まれてくるものは少ないので。
ブラックコーヒーを飲めるようになりました
――普段は感情の起伏は大きいほうですか?
松井 少ない気がします。怒るときはあっても、ヒステリックにならず、冷静に怒るほうだと思います(笑)。
――泣くこともあまりないですか?
松井 すごく涙もろいです。ドラマや映画を観ると、すぐ泣きます。家族もので子どもが頑張っているのを観ると、それだけで泣いてしまいます(笑)。
――詩杏が好きな卵サンドやブラックコーヒーは、松井さんはどうですか?
松井 ブラックコーヒーは去年の夏に飲めるようになりました。ずっと飲めなくてカフェラテ派でしたけど、夏の暑い日にさっぱりしたものを飲みたくなって。ブラックコーヒーを飲んだら、すごくおいしく感じたんです。それからハマりました。卵サンドは昔から好きでした。詩杏は潰した卵でなく、卵焼きスタイルが好きなんです。現場では蒸した卵サンドが出てきて、とてもおいしくて感動しました。撮り終わって2コくらい食べてしまったほどで、忘れられません(笑)。
女子として悲しくなるくらいかわいくて
――長野凌大さんが演じる、女性に扮した詩杏のストーカーの律子は、実際に女性に見えていました?
松井 見えました。すっごくかわいいんです。しかも、上目づかいとかしてきて、目がキュルキュルン、瞳はウルウル。何かを訴え掛けるように見てくるので、本当にキュンとしていました。本物の女子としては、悲しくなるくらいでした(笑)。
――撮影の合間は普通に男性に戻っていて?
松井 でも、女性の仕草をすごく研究されていて、私は撮影中は律子を女性と認識していました。逆に、ウィッグを抜いだときのほうが違和感がありました(笑)。
――今回は韓国のマンガが原作で、松井さんは韓国ドラマをリメイクした『ブルーバースデー』にも出演されていました。韓国のエンタメに馴染みはあるんですか?
松井 韓国ドラマは最近観ています。『シークレット同盟』のドロドロ感は、とても韓国らしいなと思いました。
小さい幸せをいっぱい見つけられたら
――韓国ものに限らず、ドラマや映画は普段よく観ていますか?
松井 休みのときや作品に入っていないときは、わりと観ています。最近だと『川っぺりムコリッタ』がすごく良い映画でした。
――『かもめ食堂』の荻上直子監督の作品で、松山ケンイチさん、ムロツヨシさんが出演されていました。
松井 こんなふうに生きていきたいな、と思いました。日々、小さな幸せを見つけることが大事。みんなギリギリで生きている中で、そういうものを持っていると強いなと。弱い部分も含めて人間なんだとか、いろいろなことを考えました。
――松井さんの小さな幸せもありますか?
松井 あります。お弁当が続いていたとき、健康のためにも自分で作ったごはんを食べると、おみそ汁が心に染みたり。公園に行って自然の空気に触れたときや、お風呂に浸かった瞬間にも幸せを感じます。そういう小さな幸せをいっぱい見つけられたら、大きな幸せになるなと思っています。
主演の責任感と共に演技の面白さにハマって
――今の松井さんは、女優とモデルとバランス良くやっている感じですか?
松井 そうですね。最近はありがたいことに、女優のお仕事が多くなっています。
――もともとはモデル志向でしたよね?
松井 がっつりモデル志向でした。でも、演技をしていくうちに、面白さにハマっていった感じです。奥深いというか正解がなくて、不思議で独特な世界だなと。
――何かの作品で、その面白さに目覚めたんですか?
松井 徐々にでしたけど、主演をやらせていただくようになって、「もっとちゃんとしないと」って責任感と共に、面白さが芽生えていった気がします。
――役柄的にも、どS、あざとい、お嬢様……など幅広く演じられてきましたが、特にハードルが高かった役もありますか?
松井 パッとは思い浮かびませんけど、振り返ると、あったと思います。今回の詩杏もそうですし、やっぱり感情がわからない役は悩みます。でも、難しい役を任されるのはありがたいので、ひとつずつクリアしていきたいです。
腑に落ちることとわからないことの繰り返しで
――悩んで乗り越えるために、どんなことをしてきました?
松井 たくさん考えますし、自分の人生経験や似た人に当てはめてみたりもします。
――あまり似た人がいなさそうな詩杏についても?
松井 とりあえず監督、プロデューサーやいろいろな方と話して、解釈していきました。どうしたらスムーズにできるのか。心がきれいに動くのか。かなり話し合って、腑に落ちることもあれば、結局わからなかったりもする。そんなことの繰り返しの日々でした。
――今までで監督とかに言われたことが刺さって、演技の指針になったようなこともありますか?
松井 すごく嬉しかったのは、初めて映画で主演した『癒しのこころみ』で、藤原紀香さんに「役と完全に一致して見えた」と言われたことです。
勝負ごとはじゃんけんでも負けたくなくて
――厳しい世界で、ここまで出演作が途切れないのは、自分の何が強みになっていると思いますか?
松井 何だろう? 図太さはあると思っています。反発心、やってやろう精神……。何ていう言葉が合っているのかわかりません。ただ、やっぱり難しい役ほど燃えますし、たぶん負けず嫌いなんでしょうね(笑)。自分に負けたくない気持ちがあります。
――その負けず嫌いは普段も出ますか?
松井 じゃんけんでもあっち向いてホイでも、負けたら悔しいです(笑)。『シークレット同盟』の現場でも、買い出しを誰が行くか、じゃんけんで勝負してましたけど、負けたくなくて燃えます。
――仕事なら、なおさらですか。
松井 私は0か100なんです。プライベートは基本0。仕事をちゃんとやる反動で、家ではグータラしています(笑)。だからこそ、仕事は100でやらなきゃと思っています。
今は全解放で好きなものを食べてます
――『シークレット同盟』を撮り終わって、自分にごほうびをあげたりもしました?
松井 最近、好きなものをたくさん食べているくらいです。
――どんなものを食べているんですか?
松井 お菓子が好きで、チョコレートをいっぱい食べたり。あと、唐揚げとかヘヴィなものを「いっか」と(笑)。
――たまにはカロリーとか気にせず?
松井 普段から食べたいものは食べる主義ですけど、太るものは極力摂らないようにしていて。それを今は全解放しています(笑)。
Profile
松井愛莉(まつい・あいり)
1996年12月26日生まれ、福島県出身。2013年に結婚情報誌「ゼクシィ」の6代目CMガールに選ばれる。同年に女優デビュー。主な出演作はドラマ『社内マリッジハニー』、『エロい彼氏が私を魅わす』、『ブルーバースデー』、映画『癒しのこころみ~自分を好きになる方法~』など。ドラマ『白暮のクロニクル』(WOWOW)、『シークレット同盟』(読売テレビ)に出演中。
ドラマDiVE『シークレット同盟』
読売テレビ・木曜24:59~