XXハラの秘策〝D〟とは?「つらかったね」「あなたも」の話しかけでハラスメントを撃退!
ハラスメント退職者は年間87万人
「カスハラ原因で自殺」「パワハラで自殺 労災認定」といった記事を読むたびに憂鬱になります。会社や役所、自衛隊や学校で、ひとりで悩む人は増えています。
ハラスメントとは、人を不快にさせたり不利益を与えたりなど、肉体的・精神的な苦痛を与えて、人としての尊厳を侵害する行為。上司や管理者、顧客ら、優越的地位の人からなされることが多いのが特徴です。
厚生労働省の統計によれば「勤務上の問題」が原因の自殺は自殺者総数の15%に達し、ハラスメントによる労働災害認定数も近年激増。パーソル総合研究所が2022年に実施した調査によれば、2021年の1年間にパワハラやカスハラが原因となる離職数は87万人、全離職者数の10%以上にのぼります。ところが原因を会社に伝えた「被害者」は29万人、7割弱の人が退職理由を伝えずに辞めています。なぜでしょう?
その理由は、ハラスメント対策の実情から見えてきます。
対策はあるものの…
ハラスメント対策はどのようなものがあるのでしょうか。
カスハラ対策なら、怒る相手を落ち着かせる話し方、対応者の交代、通報や訴訟をすると伝えるなどがあります。パワハラ対策なら、社内に相談窓口を設置、外部機関や産業医と連携したメンタルヘルスケアなどを実施などがあります。
しかしカスハラをする人に今話しかけても、怒り心頭で火に油を注ぐことにもなりかねません。社内でモラハラをする古参社員がいても、訴える若手に「我慢しろ」と諭されるかもしれません。会社はXXハラ研修の実施でお茶を濁すのではないでしょうか。産業医から心療科の受診をすすめられ、社労士から労働災害や損害賠償の話をされても、原因解消にはほど遠いのです。
ハラスメントはケースごとに事情が異なり、対策も対処も異なります。訴えても個人の受け止め方と言われるのがオチ、しかも図2の右側「周囲で目撃した人」の4割以上が「何もしなかった」という実情もあります。だから「何もしないで辞めていく」のです。
その一方で、4割の人が「被害者の相談に乗った、声をかけた」と答えています。ここに注目、一筋の〝光〟ありです。そこで提案があります。
「つらかったね」「あなたも」の話しかけ
提案は『ハラスメントされた人に話しかけよう』です。
「相談に乗った、声をかけた」という周囲の人の行動を〝仕組み化〟して普及させませんか。カスハラであれば、現場の他のスタッフが「何かあったな」と察しがつきます。コールセンターなら、隣のスタッフが気づきます。気づいたらすぐに話しかけてください。
「何かあった?大丈夫」「よければ話してみない」
ひたすら聞くのです。思いを吐き出させるのです。アドバイスも意見も不要。「聞くだけだけど」と言って「そうだったの」とあいづちを打つのです。休憩時間に「歩こうか」もいいでしょう。散歩は心の窓を開かせます。聞いたあとのキーワードは次のひとこと。
「つらかったね」
このひと言は、あるカウンセリング上手な心療内科医から聞いた〝伝家の宝刀〟です。吐きださせたあとは、今度は聞き手が似た体験を話してください。「私もこんな思いをしたことがある」と、体験と体験を重ねるのがポイントです。
「あなたもたいへんなんだね」
こういうことばが当事者から出れば成功。攻めるか守るか通報するか、対策はそのあと立てればいいのです。まずは現場の火消しから。
合言葉は「Dに入ります!」
以上の提案は、「ありのままの気持ちを吐き出させる」という心理学の成果「自己開示」をベースにしています。自己開示をされた聞き役もまた「ありのままの気持ちを返す」作用が生まれます。この対話プロセスを「自己開示の返報性」と言います。
自己開示を英語では〝セルフ•ディスクロージャー(Self-Disclosure)〟自分を開くという意味になります。「ディスクロージャー」を社内の仕組みとして取り入れませんか。カスハラで苦しむ同僚がいれば、お茶でも飲もうかと声をかけて上司に、
「Dに入ります!」
とディスクロージャーの頭文字〝D〟を告げて、連れ出して吐き出させてください。ハラスメントの犠牲者を減らすためには、まず現場で話しかけ合うことです。お茶代は上司持ち。缶コーヒー1本が助けになります。なにしろ組織の対処や対策はすべて後追いですから。
最後に今週の話しかけドリルです。近くにハラスメントを受けた人がいませんか。ぜひ話しかけてください。今いなくても明日はいるかもしれません。ですからこの記事を朝礼で紹介してください。話しかけで助け合いませんかとあなたから提案を!