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学校は経済界・産業界の「道具」をつくる場ではない

前屋毅フリージャーナリスト

小学校でプログラミング教育を必修科目にするための検討を、文部科学省(文科省)がはじめたそうだ。ほんとうに子どものためになるのだろうか。

小学校での必修化にあわせて、中学校でも内容を強化し、現在は選択科目となっている高校でも必修科目にしていく予定のようだ。ますますIT(情報技術)が幅をきかす社会になるなかで、ITに強い人材を育てていこうというのが文科省の方針なのだろう。

高度成長期にモノ作りのための人材を大量生産するために工業高校をはじめとする職業学校が多く新設されたように、IT社会にあわせた人材を多く送りだそうというわけだ。高度成長期には高校から対応だったが、少子化がすすんでいることもあってか、小学校からという徹底ぶりである。

それを誰が望んでいるのか。高度成長に向かうなかで各地に工業高校が新設されていったのは、経済界・産業界の要請によってであった。そして今回の小学校でのプログラミング教育必修化は、政府の産業競争力会議の指示による。

産業競争力会議は日本の産業力を強めるために設置されたもので、民間議員として経済界・産業界の大御所たちが顔をそろえている。つまり小学校でのプログラミング必修化も、経済界・産業界の要請なのだ。

ITが主力の産業構造へ世界的に動くなかで、日本の経済界・産業界が勝ち抜いていくためにはIT技術者が必要であり、そのための人材を小学校から育てろ、というわけだ。大学で文化系学部が軽視されされ、経済界・産業界の活動に直接貢献する可能性の高い理系学部ばかりが優遇される動きに拍車がかかっているが、それが小学校にまでひろがろうとしているのだ。

小学校から大学まで学校が、経済界・産業界のための存在になろうとしている。経済界・産業界にとって都合のいい人材の供給場所になろうとしている。

これは、学校にとっての危機である。人を育てる場である学校を、経済界・産業界の「道具」をつくりだす場にしてはならない。

フリージャーナリスト

1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。立花隆氏、田原総一朗氏の取材スタッフ、『週刊ポスト』記者を経てフリーに。2021年5月24日発売『教師をやめる』(学事出版)。ほかに『疑問だらけの幼保無償化』(扶桑社新書)、『学校の面白いを歩いてみた。』(エッセンシャル出版社)、『教育現場の7大問題』(kkベストセラーズ)、『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『全証言 東芝クレーマー事件』『日本の小さな大企業』などがある。  ■連絡取次先:03-3263-0419(インサイドライン)

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