世界最速2階級での4団体統一を達成 井上尚弥の最強ランキング(PFP)1位返り咲きなるか
12月26日、WBC、WBO世界スーパーバンタム級王者の井上尚弥(30=大橋)が、WBAスーパー、IBF世界同級王者マーロン・タパレス(31=フィリピン)を破り、史上2人目となる2階級での4団体統一に成功した。
4団体統一の難しさ
井上はスーパーバンタム級に階級を上げ、わずか2戦で4団体統一を達成した。井上より先に史上初(女子ボクサーを除く)となる記録を打ち立てたのは、世界3階級王者のテレンス・クロフォード(アメリカ)。
今年7月に、WBA・WBC・IBF世界ウェルター級統一王者エロール・スペンス・ジュニア(アメリカ)と4団体王座統一戦を行い、2階級での4団体統一に成功した。
最初のベルトを獲得してから4団体統一を達成するまで、スーパーライト級では約2年4ヶ月、ウェルター級では約5年かかっている。
井上もバンタム級時代には4団体統一まで約4年半かかっているが、今回のスーパーバンタム級ではたった2戦(約5ヶ月)で統一を成し遂げた。
階級を上げた直後にタイトル戦が組まれたのも、期待が高い証拠だろう。
スーパーフライ級時代には、世界的な知名度がまだ低かったものの、バンタム級で4団体を統一して以降、大きな注目を浴びるようになった。
なかでも井上が活躍するきっかけとなったのが、2018年から行われたWBSSトーナメントだ。
バンタム級のトップファイターを集めて行われたトーナメントで、圧倒的な強さを見せつけ優勝した。これをきっかけに海外メディアも井上を大きく取り上げるようになった。
全階級を通じて最も強い選手を決めるランキングのPFP(パウンド・フォー・パウンド)の上位にも選出されるようになり、世界トップクラスのボクサーとして、不動の地位を獲得した。
PFPランキングとは
現代ボクシングはミニマム級からヘビー級までの17階級に分かれており、さらに各階級に各団体の世界王者が君臨している。
暫定王座を含め60名近くいる世界王者たちを格付けし、最強ボクサーを決めるためにできたのがPFPだ。
タイトルが乱立する現代ボクシングにおいて、もっとも価値のある称号と言っても過言ではない。PFPは様々なボクシングメディアが独自の方法でランキングを作成している。
その中でもっとも権威があると言われているのが、1922年にアメリカで創刊された月刊専門誌「ザ・リング」だ。
井上はバンタム級時代、2022年6月に発表されたリング誌のランキングで1位に選出されたことがある。今回の勝利で、再び1位になるのではないかとの見方も多い。
リング誌のPFPは、PFPランキング選定委員の投票とオンライン上で議論によって決定される。次回のランキングの更新が楽しみだ。
現在のランキング
現在、リング誌のPFPは以下の通りだ。
ランキングを見ると欧米のボクサーが多く、階級はライト級以上の中量級の選手が多い。アジアのボクサーとして、軽量級で上位に選出されたことはまさに偉業だろう。今回の活躍で再び1位に選出される可能性も高まった。
井上の今後
次戦は東京ドームでの開催も噂されている。対戦候補は、各団体の指名挑戦権を持つルイス・ネリ(メキシコ)や前王者のムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)あたりだろうか。
正直なところ、スーパーバンタム級で井上のライバルになるボクサーは見つからない。階級を上げてチャレンジする選択もあるが、井上は来年、再来年までこの階級で戦うと話していた。
自分のベストが出せる階級で戦いたいのかもしれない。階級を上げて、コンディションを崩す選手も多いため、慎重に適正階級を見極めて欲しい。
今回の偉業を達成したことで、私たちの想像を超えるボクサーになった。
筆者はこれまで多くの世界王者達に取材してきたが、「井上尚弥は今後どこまでいくと思いますか」という問いに対し、「すでに私たちの想像を超えている」「予想がつかない、だからこそ夢がある」と明確な回答を示した選手はいなかった。
これほど夢を見させてくれるボクサーはいないだろう。井上の今後に期待したい。