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サインを伝達する「ピッチコム」を投手がスタンドへ投げ入れる。打ち込まれた怒りからではなく…

宇根夏樹ベースボール・ライター
マイケル・キング(ニューヨーク・ヤンキース)May 23, 2023(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 5月23日、マイケル・キング(ニューヨーク・ヤンキース)は、1点ビハインドの9回表からマウンドに上がった。

 先頭打者を三振に仕留めた直後、キングは、捕手との間でサインを伝達する「ピッチコム」をベルトから外し、チームメイトがいる一塁側のダグアウトに向かって投げた。うまく作動しなかったため、使わないことにしたらしい。

 キングが投げた「ピッチコム」は、ダグアウトではなく、スタンドへ飛んでいった。手にしたのは、ヤンキースのキャップをかぶった女性だ。APのロナルド・ブラムらによると、キングは試合後に「ちっちゃな長方形の電子機器を投げることには慣れていないんだ」と語ったという。

 ただ、この「暴投」後も、キングの投球に乱れは生じなかった。内野ゴロ、四球、内野フライで9回表を終わらせ、その裏、チームがアーロン・ジャッジのホームランで同点に追いつくと、10回表は、三振、三振、内野ライナー。二塁にいたオートマティック・ランナーを、進塁すらさせなかった。試合は、10回裏にアンソニー・ボルピーの犠牲フライで決着した。

 スタッフにより、「ピッチコム」は観客から回収された。紛失すると、5000ドルが科される。

 キングは、今シーズンがメジャーリーグ5年目だ。今月25日に28歳となる。昨シーズン、34登板の51.0イニングで防御率2.29を記録したのに続き、今シーズンはここまで、16登板で27.2イニングを投げて防御率1.95だ。シンカー、スウィーパー、4シームに加え、チェンジアップも織り交ぜる。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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