42歳なのに職場で自分の存在価値を見出せません。給料泥棒の気分です(「スナック大宮」問答集23)
「スナック大宮」と称する読者交流飲み会を東京・西荻窪、愛知・蒲郡、大阪・天満のいずれかで毎月開催している。2011年の初秋から始めて、すでに90回を超えた。お客さん(読者)の主要層は30代40代の独身男女。毎回20人前後を迎えて一緒に楽しく飲んでいる。本連載「中年の星屑たち」を読んでくれている人も多く、賛否の意見を直接に聞けておしゃべりできるのが嬉しい。
初対面の緊張がほぐれて酔いが回ると、仕事や人間関係について突っ込んだ話になることが多い。現代の日本社会を生きている社会人の肌からにじみ出たような生々しい質問もある。口下手な筆者は飲みの席で即答することはできない。この場でゆっくり考えて回答したい。
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「今までの経験をフルに活かすつもりで転職しましたが、同い年の女性からイジメを受けて体調を崩しました。運良く異動できたグループ会社はとても恵まれている職場環境です。本当にありがたかったな……。でも、異動して3年目になっても『自分の存在価値』を見出せません。給料泥棒の気分なんですよね。このマイナス気分を早く脱却して、少しでも仕事している気持ちになれたらと思います」(42歳の独身女性)
「自分の存在価値」ではなく、顧客の満足と職場の発展に目を向ける
仕事はできるけれど、性格はあまり良くない人はどの職場にもいる。目上の人には媚びへつらい、目下とみなした人には当り散らす。ワガママで、陰険で、嘘つきだ。
対照的な人も想定しよう。仕事ができるとは言い難いけれど、誰に対しても丁寧で誠実で優しい。常に感謝の気持ちを持ち、明るい笑顔を職場にふりまいている。
冒頭のつぶやきを聞かせてくれた女性に問いたい。あなたはどちらの人と一緒に働きたいだろうか。そして、あなた自身はどちらの人間をロールモデルにしたいのか。
理想としては「仕事ができて性格も良い」人を目指すべきだろう。しかし、そんなエース級社員、将来の役員候補は職場に1割もいない。ちょっと意地悪く言えば、彼らは「私は同僚から信望を集めている。注目されている」との自覚があるので優しく堂々と振る舞えている。野球に例えれば、エースやキャプテンはチームに1人だけしかいないのだ。
あなたはエースやキャプテンを目指しているわけではないだろう。選手でなくてもいいので、チームに貢献したいと思っているのではないだろうか。ならば、自分がチームにできることを淡々ときっちりやればいい。例えば、職場の整理・整頓・清潔が保たれるように心を配ること。みんなが納期や約束を守れるようにこまめに連絡をすること。
自分は「稼ぎ頭」だと思っている人はなかなか足元を見ることができない。働きやすい環境は当然だと思っていたりする。本当は誰かがその環境を整えてあげているのだ。
あなたには、いまの職場は「とても恵まれている」という感謝の気持ちがあり、自分は給料泥棒だという謙虚さもある。足りないのは、明るさだけだ。「自分の存在価値」を探し求めるのではなく、目の前にいる顧客の満足と、愛する職場を維持・発展することに目を向けよう。すると、きっと気分も明るくなる。その姿を見て和み、励まされる同僚は少なくない。