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岸田内閣の支持率低迷で、注目される都内首長選挙と永田町で噂される解散総選挙日程は

大濱崎卓真選挙コンサルタント・政治アナリスト
岸田内閣の支持率が低調ななか、永田町の関心は来年の衆院解散総選挙の時期に移った(写真:つのだよしお/アフロ)

岸田内閣の支持率は下がる一方

岸田内閣の支持率は、秋の補欠選挙以降も下落傾向に歯止めがかかりません。モーニング・コンサルト社の世論調査では、岸田内閣の支持率は18%と各社調査の中では最も低い数字を叩き出しており、退陣ラインと呼ばれる「20%」を切りました。

内閣支持率と自民党支持率の合計が50%を切ると内閣退陣の目安とされる、いわゆる青木率も、報道各社の調査では50%を伺うような状況になってきており、厳しい状態であることには間違いありません。

当初言われていた解散総選挙

岸田総理は今年6月、「会期末の間近にいろいろな動きがあることは見込まれ、情勢をよく見極めたい」と発言し、解散総選挙の可能性を匂わせましたが、結果的には解散総選挙を行いませんでした。春の補欠選挙では4勝1敗と比較的良い成績を残した岸田内閣でしたが、秋の補欠選挙では1勝1敗とやや厳しい結果に終わったほか、秋の臨時国会では、改造内閣の政務三役から既に2人の辞任を出すなど不安定さが目立っています。

このことから、当初岸田首相は、早い段階での解散総選挙を検討していましたが、 時間の経過とともに、 内閣支持率が大きく下落したことで、解散のタイミングを失ったともいえます。 既に衆議院の任期は折り返しを過ぎたことで、いつ解散があっても不思議ではないと言う、まさに常在戦場の状況ではありますが、 年内解散を事実上否定したことで、来年以降いつ解散総選挙となるか、永田町の注目は集まっています。

気になる東京都内各級選挙の動向

その上で注目するべきなのは、今年から来年にかけて多く行われる東京都内の首長選挙です。

来年は夏に東京都知事選挙が控えていますが、都知事選挙までの間にも都内では多くの首長選挙が控えています。11月12日投開票の青梅市長選挙では現職で自民・公明推薦の浜中啓一さんが、国民民主・都民ファーストの会推薦の無所属新人で元市議の大勢待利明さんに敗れたばかりですが、今月中には木村弥生区長の辞職に伴う江東区長選挙が行われるほか、松下玲子武蔵野市長の辞職に伴う武蔵野市長選挙も近日中に行われる見込みです。

さらに来年には萩生田政調会長の地元八王子市長選挙からはじまり、目黒区長選挙や港区長選挙なども都知事選挙より前に控えており、各首長選挙で自民党東京都連が組織力を用いて候補者擁立・当選できるのか、はたまた野党系候補や都ファ系候補、維新系候補の台頭を許すのかに注目が集まります。各首長選挙で自民党都連推薦候補が落選すれば、小選挙区が5つ増えた東京都内における自民党の議席増は厳しくなるとの見方もあり、解散総選挙戦略への影響もあるとみられます。

来年考えられる解散のシナリオ

これらを踏まえて、来年考えられる衆議院解散総選挙のシナリオを検討したいと思います。

1:来年通常国会冒頭

来年1月の通常国会冒頭が、現時点では理論上最も早い日程ではあります。しかしながら、「まずは経済対策、先送りできない課題一つ一つに一意専心取り組んでいく。それ以外のことは考えていない」と11月9日に岸田総理が述べたコメントからは、年内解散はもちろん、経済対策に一定の結果や見通しが立たなければ解散はしないと捉えることもできます。国会は年明け早々から来年度予算の審議に入るわけですが、1月の通常国会冒頭で解散をした場合、解散総選挙後の日程が非常に窮屈になり、予算の年度内通過に向けた審議スケジュールが極めて厳しくなることから、通常国会冒頭解散は普通に考えてほぼ無いとみられます。

2:予算成立後の春

来年度予算が成立した春には春闘の結果も出揃い、岸田内閣が狙う賃上げが実現している可能性もあります。また、4月は衆参補欠選挙の時期です。細田博之前衆院議長の死去に伴い、少なくとも島根1区では補欠選挙が執行される見込みですが、公職選挙法の問題が取り沙汰された柿沢未途衆院議員の東京15区なども仮に補欠選挙となった場合には、今年4月の衆参5補選、今年10月の衆参2補選と同様に、岸田政権を占う補欠選挙となります。この結果が厳しいとみた場合、補欠選挙を行わずに解散総選挙に打って出るという戦略も考えられます。

3:東京都知事選とダブル選挙

来年の東京都知事選挙は、前回(令和2年)が7月5日に投開票日だったことから、6月末から7月頭に投開票日となる見込みです。まだ東京都知事選挙の構図は全く見えてきませんが、小池百合子都知事は再出馬するとみられ、自民党東京都連が独自候補の擁立に動くのか、それとも小池都知事を支持するのかに注目です。日本維新の会も独自候補の擁立を目指しているとされていますが、都知事選挙が首都東京決戦でもあり、仮に自民党東京都連が小池都知事に相乗りする形にした上で、この都知事選と衆議院議員総選挙をダブル選挙にすることで与野党対決を制するというシナリオもあるでしょう。一方、日本維新の会にとっては、東京におけるプレゼンスの拡大を目的とする衆議院議員総選挙が、都知事選挙とダブルになると焦点がぼやけて厳しいという事情があり、一部で言われている説ではありますが、今回に賭けて橋下徹氏の都知事選出馬の期待も高まるとの観測もあります。

なお、6月には所得税の減税が開始しているはずで、減税の恩恵を受けたことによる支持率アップを期待するという見方もあるでしょう。

4:総裁選挙直前の解散総選挙

最後のシナリオとしては、自民党総裁選挙の前の解散総選挙が考えられます。

自民党総裁選挙は来年9月に行われる予定ですが、 総裁選挙の直前と言う時期に解散総選挙を打って出ることによって、岸田総裁の求心力が高まっている時期という戦略も考えられます。 一方で、岸田総裁の求心力が高まっていればと言う前提の通り、必ずしも求心力が高まっている状態になるかは分かりません。 この時期になれば、総裁選挙に名乗りを上げる自民党内の総裁候補予定者も出てきており、 総裁選挙への動きが活発になればなるほど、岸田総理のリーダーシップが問われるような事態にもなります。 最新の「総理大臣になってほしい人」の世論調査では、岸田総裁は、 石破元幹事長や河野デジタル担当大臣、小泉元環境大臣らの後塵を拝しています。 総裁選挙の行方によっては、総裁選挙直前に解散総選挙を打とうと思っても、総裁選の情勢がそれを許さないと言う可能性も否定できません。

5:解散総選挙ができない(=総辞職)

そして、念のため触れておかなければならないのは、岸田総理が解散総選挙をできずに内閣総辞職する可能性です。

現時点で岸田総理が内閣総辞職する可能性は、極めて低いと考えられます。 確かに 内閣支持率が傾向にあり、低調な中での政権運営は厳しいものと思われます。 しかしながら、経済対策を前に進めると強いメッセージを訴えた上で、来年の通常国会で予算審議を控えている中で、辞職をする理由は特に思いつきません。

一方、菅義偉前首相がまさにそうだったように、 総裁選挙を前にして、自らの総裁再選が厳しいと言うことになれば、 総裁選挙不出馬表明と同時に、総辞職をすると言う可能性もありうるでしょう。 この場合は、岸田総裁の誕生の際と同じく、新しい自民党総裁が選挙の顔となり、新総裁が総理就任後、速やかに解散総選挙となると考えられます。

内閣支持率が低調のまま夏を迎えることになり、かつ、その夏にも解散するとができなければ、最終的には総裁選挙前に岸田内閣が総辞職し、新たな顔(総裁)で秋に解散総選挙を行うという展望も永田町では言われはじめています。

選挙コンサルタント・政治アナリスト

1988年生まれ。青山学院高等部卒業、青山学院大学経営学部中退。2010年に選挙コンサルティングのジャッグジャパン株式会社を設立、現在代表取締役。不偏不党の選挙コンサルタントとして衆参国政選挙や首長・地方議会議員選挙をはじめ、日本全国の選挙に政党党派問わず関わるほか、政治活動を支援するクラウド型名簿地図アプリサービスの提供や、「選挙を科学する」をテーマとした研究・講演・寄稿等を行う。『都道府県別新型コロナウイルス感染者数マップ』で2020年度地理情報システム学会賞(実践部門)受賞。2021年度経営情報学会代議員。日本選挙学会会員。

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