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高校生を失望させない選挙にする覚悟がありますか?

前屋毅フリージャーナリスト

高校生は選挙に関心をもっている、という選挙権を強引に18歳以上に引き下げた安倍晋三政権にしてみれば、泣いて喜ぶようなアンケート結果がでた。

『毎日新聞』が5月18日付の朝刊に載せたもので、同紙が16歳から20代前半までの高校生と大学生約3000人を対象に行ったアンケートの結果である。それによれば、今年夏の参院選の投票に行くかどうかの問いに、18歳では「必ず行く」が23%、「たぶん行く」が46%を占め、合わせると「投票に行く」が69%に達したというのだ。19歳でも、「投票に行く」は62%を占めた。

もちろん、それは「自民党や公明党に投票する」を示しているわけではないのだが、18歳以上に行き下げれば自党への投票数が増えると踏んでいるにちがいない自民党や公明党にすれば、ニヤニヤしたくなる結果だろう。しかし、そうそう18歳や19歳を甘くみないほうがいいかもしれない。

まず、アンケートで「投票に行く」と答えたからといって、その言葉どおりに行動するとはかぎらない。訊かれたから、とりあえず「行く」と答えたにすぎない可能性もある。可能性としては大きい、といったほうがいいかもしれない。

そして、「行かない」と答える理由が見あたらなかったから「行く」と答えておいた、という可能性もある。なにしろ政治には感心をもたせない、タッチさせないのが文部科学省の方針なので、行かない理由を明快に答えられる18歳や19歳はごく少数なはずである。文科省教育の「成果」だ。

さらに同紙のアンケート調査では、「必ず行く」と答えた人に、その理由を自由記述で尋ねている。記事によれば、「楽しそうだし、選挙に参加できる最初の若者だから」とか「権利を行使しないのはもったいない」など、「選挙史上初めて10代で有権者となる高揚感」(同記事)が投票動機につながっているらしい。わからないではないが、選挙というものを考えれば首をひねらざるをえない理由である。

ここにも、選挙の本質を理解させずに、ただ10代を選挙に駆り立てようとしている文科省の「成果」がありありと表れている。

こんなことで、18歳の高校生や19歳の大学1年生の投票意欲が高まっていくのだろうか。それが、自党への投票が増えることにつながっていくと自民党や公明党は本気で考えているのだろうか。

今回は「初めて」ということで投票所に足を運ぶにしても、「投票の無意味さ」を実感すれば次の選挙で投票所に向かうはずがない。「楽しい」とか「もったいない」とは違ったところで投票の意義を感じなければ、若者は投票所に足を運ばない。

若者が足を運ぶ意義を感じる選挙、政治をやる覚悟が自民党や公明党にはあるのだろうか。与党ばかりではない。野党の政治家にも、その覚悟があるのだろうか。それが問われていることを、いまいちど自問してもらいたい。

フリージャーナリスト

1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。立花隆氏、田原総一朗氏の取材スタッフ、『週刊ポスト』記者を経てフリーに。2021年5月24日発売『教師をやめる』(学事出版)。ほかに『疑問だらけの幼保無償化』(扶桑社新書)、『学校の面白いを歩いてみた。』(エッセンシャル出版社)、『教育現場の7大問題』(kkベストセラーズ)、『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『全証言 東芝クレーマー事件』『日本の小さな大企業』などがある。  ■連絡取次先:03-3263-0419(インサイドライン)

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