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【掃除の裏技】頑張ってても出る風呂の黒カビとピンクヌメリ、発生を激減させる必殺技は?

藤原千秋ライター、住生活ジャーナリスト
(提供:necoji/イメージマート)

我が家のお風呂はどんな風呂

nikuQさんによる写真ACからの写真
nikuQさんによる写真ACからの写真

 自宅にお風呂があるのは当たり前、という感覚でいる人が今や大半だと思いますが、実際、全国の住まいの浴室保有率は平成20年の段階で91〜98%に至っています(平成20年 住宅・土地統計調査)。お風呂がある以上必須になる風呂掃除。しかし往々にして住まいの水場というのは厄介な感じに汚れます。

 生命の源である「水」が常在することによって、独特の汚さをもたらす細菌、カビといった生物系の汚れが勝手に育ちやすいのです。

ここ20、30年ほどの間に普及した浴室の構造に「ユニットバス」というものがあります。相対するのは「在来(工法の)浴室」というものです。あまり一般的にはどっちがどう、ということを気にしながら暮らしている人はそういないかも知れません。ただ掃除をするにあたっては汚れ方や掃除の強度(大変さ)が若干異なるので、自分の家のお風呂はどういうものかの把握は、しないよりはしておくほうがいいでしょう。

「ユニットバス」は、あらかじめ工場などで壁、天井、床、浴槽などを成型し、現場では組み立てるだけになっているタイプの浴室のことです。工業製品なのでサイズや素材等がある程度画一化されています。一方「在来浴室」は在来工法で作る浴室なので、洗い場の広さや天井高、壁や浴槽の素材なども臨機応変に作れます。

 「ユニットバス」か「在来浴室」かの違いは見る人が見れば一目でわかり、おおむね「点検口」と呼ばれる人が通れるくらいの蓋が天井についているのが「ユニットバス」です。住まいの図面があれば「ユニットバス」の場合は「UB」と描いてあります。

今どきの風呂汚れ事情

J.Jさんによる写真ACからの写真
J.Jさんによる写真ACからの写真

 じつは「ユニットバス」の普及に伴うように風呂の汚れの種類も変化しています。

 近年、風呂掃除の際にあげつらわれやすい汚れのひとつは「フォーマ」という独特な黒カビ。もうひとつは「メチロバクテリウム」と呼ばれる細菌によるヌルヌルしたオレンジピンクのヌメリなのですが、いずれも実際に頻繁に目にして困っている方も多いのではないでしょうか。

 風呂場によく生える、いわゆる黒カビは従来「クラドスポリウム」という種類が一般的でした。黒い糸状の菌糸が浴室のタイル目地などによく見られましたが、掃除する際、比較的もろい印象を与えるタイプでした。一方「フォーマ」というのは変わった形状をしており、キノコのようなツボ状の子実体の中に胞子を内蔵しています。フォーマの菌糸は今どきの浴室に多用されているシリコン樹脂を好んで入り込み、中で子実体を形成してしまうのですが、この子実体が堅牢なのです。フォーマはユニットバスの環境に適応したカビともいわれ、その普及とともに隆盛を誇っています。

 一方オレンジピンクのヌメリは、「赤カビ」などという呼び方をされることもありますが、実のところこれはカビではありません。ごくわずかに残った洗い残しの汚れや微量の水分で生きて繁殖できてしまう「メチロバクテリウム」という細菌なのです。メチロバクテリウムは乾燥に強く、なんとカビ取り剤の主成分である「次亜塩素酸ナトリウム」にすら抵抗性を示します。つまりまじめにカビ対策をしていてもピンクヌメリは生えてしまうという難しい存在なのです。

天井、壁、浴槽、蓋、洗い桶、椅子、棚……すべてを掃除できるアレ

藤井志紀さんによる写真ACからの写真
藤井志紀さんによる写真ACからの写真

 なんという徒労感。しかしお風呂場をお風呂場として日々快適に使用するためには、カビやヌメリ含めてあらゆる汚れを「落としながら」使い継ぐほかありません。このお風呂場を汚す汚れには皮脂、石鹸カス、抜け毛、水道水に含まれるミネラル、屋外から身体に付けて持ち込む泥砂や煤煙など多様なものが含まれます。細菌でもメチロバクテリウム以外に黄色ブドウ球菌や大腸菌、緑膿菌などまで検出されるのが「身体の汚れを落とす」お風呂場という場所です。

 これら多様な汚れ(生き物含む)を確実かつ効率的に、できる限り安全に落とすにはどうしたらいいのでしょうか。「安全に」というのがポイントで、それはお風呂場という場が非常に家庭内事故の多い場所であることに因ります。掃除の際に不用意に発生させるガス、洗剤による化学やけどや高温水などによる火傷などのリスクは低く抑えるに越したことはありません。

かえるWORKSさんによるイラストACからのイラスト
かえるWORKSさんによるイラストACからのイラスト

 そのために普段から用意しておきたいのは浴室掃除用の「中性洗剤」です。そんなものと侮るなかれ、うまく使いさえすれば、お風呂場の構造問わず無難に状態を整えることができます。

 またそんな中性洗剤の底力を実感できる大掃除法が「洗剤1ボトル使い切り風呂掃除」です。騙されたと思って一度試してみて欲しい掃除法です。特別な出費も少なく抑えられこれからの大掃除の時期にもぴったりです。

<用意するもの>

・満タンの「浴室用中性洗剤」ボトル1本。スプレータイプ

・清潔な(下ろし立ての)浴室掃除用のスポンジ(安価なものでも可)

・清潔な浴室掃除用ブラシ(安価なものでも可)

・薄手のタオル(洗濯済み)

 「中性洗剤」は安全性が高く、浴室そのものの素材や小物を選ばず使用できるためマストです。スポンジは壁面等の広域掃除に、ブラシは浴室内の鋭角掃除に必須で、タオルは天井等に使用します。ちなみに身長の高い人が掃除を執り行う場合、ユニットバスの天井は腕を伸ばせば手が届くことが多いのですが(実質2メートル弱)、天井が高い場合などは床掃除に使用するフローリングワイパー本体を一時流用すると便利です。

<具体的な掃除方法>

 1)まず空の浴槽に浴室用中性洗剤を噴霧し、そこにすべての小物、シャンプー類含めて移動させます。造り付けの棚なども分解できることが多いので分解できる限りはバラバラにします

 2)タオルを折って中性洗剤をスプレーしたもので天井を拭きます。垂れてくるほど多量ではなくてもいいですがしっかり液剤が行き渡るように拭きます。カビ汚れなどが確認できれば拭き取り、タオルの別の面で拭き直しましょう 

 3)三面の壁面に中性洗剤を満遍なく吹き付け、汚れの少ない天井近くから腰上までをスポンジで洗い、残った一面のドア上部までも同様に洗っていきます。洗剤は心持ち多めに、見えない汚れも泡で包むイメージで洗っていきましょう

 4)壁面の腰から下を洗っていきます。この位置は大変汚れが多いので、洗剤量も増して丁寧に擦り洗うといいです。ドアは細部の汚れが気になりますがとりあえずざっと壁同様に洗ってしまいます。これが終わったタイミングで一度壁全面にシャワーを当てて濯ぎ流します(天井はそのままで良い)

acworksさんによる写真ACからの写真
acworksさんによる写真ACからの写真

 5)洗い場に洗剤を吹き付け、今度はブラシを使って擦っていきます。壁と床の継ぎ目、床と浴槽の継ぎ目などの鋭角には汚れが溜まりやすいので特に念入りに行いましょう。浴槽に逃がしておいた棚や椅子、小物類も床がざっと終わったところで中性洗剤とスポンジで洗っていきます。細部や鋭角はブラシで。一通り終わったらここでもシャワーですべて濯ぎ、一旦定位置に戻します

 6)浴槽蓋に洗剤を吹き付け、ブラシで掃除します。蓋の形状は様々ですが、掃除しづらい「じゃばらタイプ」の場合は別日を設けて細部までの掃除を行うか、カビがすでにひどい場合には買い替えを検討しましょう。洗ったら濯いで洗い場に立てかけます

 7)浴槽をスポンジで洗い、濯ぎます。洗剤が流れてしまって足りないところは足しながら行いますが、おおむねこの時点で1ボトル使い切ってしまっているのではないかと思います

 8)冒頭で天井を拭いたタオルを綺麗に洗い濯いだもので、天井を拭き、再び濯いで洗い場床の水滴も拭きあげます

この「洗剤1ボトル使い切り風呂掃除」、一度がっつり行えば、お風呂場のそこはかとない悪臭やカビ発生、ヌメリ発生頻度が激減します。見えない、見えにくい部分の汚れを一気呵成に除去できるためです。

 また可能であればこの掃除に使う中性洗剤は、効果が増すので除菌を謳うものを使いましょう。この掃除では落としきれない汚れ(水道水に含まれるミネラル由来の、鏡などにつく白いうろこ状の汚れ)については「浴室用酸性洗剤」か「クエン酸」を利用して落とします。掃除法は回を改めてご説明します。

【この記事は、Yahoo!ニュース個人編集部とオーサーが内容に関して共同で企画し、オーサーが執筆したものです】

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ライター、住生活ジャーナリスト

「家のなか」の事をテーマにウェブ、雑誌、新聞等で執筆。大手住宅メーカー営業職を経て2001年よりAllAboutガイド。主な著・監修書に『人生が整う 家事の習慣』(西東社)、『ズボラ主婦・フニワラさんの家事力アップでゆるゆるハッピー!!』(オレンジページ)、『この一冊ですべてがわかる! 家事のきほん新事典』(朝日新聞出版)等。2020年1月より東京中日新聞にてコラム『住箱のスミ』連載中。

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