Yahoo!ニュース

「アサクリは歴史フィクションです」UBIが“弥助”炎上で釈明。何が起きているのか? #専門家のまとめ

篠原修司ITジャーナリスト/炎上解説やデマ訂正が専門
アサシンクリードシャドウズの主人公は黒人の侍「弥助」。公式サイトよりキャプチャ

 7月23日、UBIジャパンは開発中の新作『アサシン クリード シャドウズ』で描写している内容が炎上している件について、「アサシンクリードシリーズはフィクションです」と釈明する文章をX(旧Twitter)で発表しました。

 まだ発売してもいないゲームでどんな問題が起きているのか? 解説します。

ココがポイント

▼アサクリ新作の主人公は黒人の侍“弥助”に。UBIは「歴史上の人物を忠実に描いた」と説明するも、侍だったかどうかは諸説ある。

『アサシン クリード シャドウズ』は、2 つの異なる体験をどのように融合させたのか(Xbox Wire Japan)

▼インタビューで開発者が「日本人ではない私たちの目になれる人物を探していた」と回答し「差別だ」と炎上。その後、説明は削除。

『アサシン クリード シャドウズ』混乱の安土桃山時代を生きる侍・弥助と忍び・奈緒江のダブル主人公、リアルに再現された日本に迫る国内独占インタビューを公開!(ファミ通.comの魚拓)

▼その後もコンセプトアートでの画像盗用の発覚、開発者の「日本で斬首は珍しくない光景」といった誤った説明などで炎上が加速した

アサシンクリードシャドウズ炎上騒動 (あさしんくりーどしゃどうずえんじょうそうどう)とは(ピクシブ百科事典)

▼最終的にUBI Japanが「アサシンクリードシリーズはフィクションです」と釈明するとともに、お詫びする文章を掲載する事態に。

エキスパートの補足・見解

 まとめたもの以外にも、弥助が満開の桜の下で「豊作だから人手がいる」と喋る季節感のおかしい映像や、日本語の吹き替えゲーム映像に中国語の字幕が使われる、江戸時代の作品を戦国時代のはずのゲーム内に使用するなど、アサクリシャドウズでは様々な問題が指摘されています。

 ただし、これらは「ゲームが歴史に忠実」ではなく「フィクションです」と改めて説明したことで、一定の理解は得られると思います。

 コンセプトアートでの画像盗用なども、当事者間で解決に向けて話し合えば良いことでしょう。

 問題は、アサクリシャドウズ開発スタッフの発言などからにじみ出る日本文化の軽視と、これまでのUBIの対応の不誠実さです。

 一番大きなもので言えば、やはり「日本人ではない私たちの目になれる人物を探していた」と発言しておきながら、それを何の釈明もなく削除して黙っている点でしょう。

 実際にそのような発言をしたのか? なぜ日本を舞台にしたゲームで日本人が主人公ではダメだったのか? そのあたりの説明をきちんとしない限り、納得しない日本のユーザーは多いと考えられます(補足すると、女性の主人公は日本人のくノ一です)。

 ゲーマーのあいだでは「トンデモ日本」は好意的に受け取られがちです。それは、日本に対して好意を持っていることが分かるからです。一方、今回のUBIは対応も含めて日本の面白そうなところをつまみ食いしただけ、文化の盗用が行われているような印象を受けます。

 このあたりの誤解と言いますか、ゲーマーのあいだに広がる不満を解消しない限り、アサクリシャドウズの炎上は収まらないものと思われます。

ITジャーナリスト/炎上解説やデマ訂正が専門

1983年生まれ。福岡県在住。2007年よりフリーランスのライターとして活動中。インターネット(SNS)で起きる炎上の解説、デマのファクトチェック、スマホやガジェットの話題、生成AIが専門。最近はYouTubeでも活動しています。執筆や取材の依頼は digimaganet@gmail.com まで

篠原修司の最近の記事