ジダンの「プランB」と「プランC」の提示。クラシコで生まれた差とは。
タイトルレースの行方が、この一戦に大きく懸かっていた。
今季のリーガエスパニョーラはアトレティコ・マドリー、バルセロナ、レアル・マドリーの3チームが優勝を争う展開になっている。その状況下で迎えたリーガ第30節、レアル・マドリー対バルセロナは、2-1でマドリーに軍配が上がった。
■タイトルへの機運
「レアル・マドリー、生き残ったリーダー」(『マルカ』)、「不滅のレアル・マドリー」(『アス』)「マドリーと対峙したバルサが論争を残して足元から崩れる」(『スポルト』)、「レアル・マドリーが勝利してリーガにプレッシャーを掛ける」(『ムンド・デポルティボ』)とスペインメディアはマドリーの勝利を報じている。
クラシコ後の『マルカ』のアンケートでは、「リーガの優勝チームは?」の問いに4万9084票(現地時間午前5時30分時点)が集まり、マドリー(73%)、アトレティコ(14%)、バルセロナ(13%)とクラシコの勝者への期待感が高まっている。
「レアル・マドリーに勝つためには、ベストのバルセロナでなければいけない。そして、ベストの(リオネル・)メッシが必要だ」と試合前にロナルド・クーマン監督は語っていた。
メッシにとって、これは45回目のクラシコだった。セルヒオ・ラモス(クラシコ出場数45回)が欠場していたため、彼に並びクラシコ最多出場選手になった。
ただ、メッシの最後のクラシコ出場になったかもしれない。メッシとバルセロナの契約は今季終了時に満了を迎える。メッシのクラシコにおける戦績は45試合19勝11分け15敗で、その間に26得点をマークしている。なお、メッシはクリスティアーノ・ロナウド(18得点)とアルフレド・ディ・ステファノ(18得点)を上回り、クラシコの歴代最多得点者となっている。
■メッシという中心
バルセロナの中心はメッシである。2021年に突入してから、メッシは公式戦21試合で19得点8アシストと波に乗っていた。そのメッシを止められたら、マドリーとしては優位になる。
だがジネディーヌ・ジダン監督の考えは異なった。「バルセロナは中盤に素晴らしい選手を抱えている。なので、フェデ(フェデリコ・バルベルデ)を入れて中盤の枚数を増やした。フェデはスピードがあり、ライン間でプレーできる。スペースに走り込めるし、それは先制点のシーンで表れた」と試合後にジダン監督は語っている。
バルベルデの起用でマドリーの選手たちの役割は明確化した。カゼミーロとナチョ・フェルナンデスがメッシを、バルベルデとルーカス・バスケスがジョルディ・アルバを封じた。身体能力に優れたエデル・ミリトンがウスマン・デンベレをマークして、フェルラン・メンディが1対1の強さとカバーリング能力の高さを見せ付けた。
L・バスケスの負傷でアルバロ・オドリオソラが出場することになり、マドリーの戦術の機能性は落ちた。それでも、ジダン監督は変化を恐れなかった。試合終盤にはマルセロ、イスコ、マリアーノ・ディアスを投入して3バックシステムに変更した。
■プランBとプランC
マドリーは「プランB」や「プランC」を提示しながら試合を進めた。それはジダン監督にとって予想外だっただろう。だが普段は勝利を求めて保守的になりがちな指揮官が、勇敢に打って出ていた。
また、この試合ではジャッジが物議を醸した。注目されたシーンは2つだ。84分、ペナルティーエリア内でマルティン・ブライスワイトが倒されPKの疑惑がかけられた場面と、アディショナルタイムの分数である。
試合後には、ジェラール・ピケがヒル・マンサーノ主審に詰め寄った。そこにモドリッチが介入して「これから喋りまくるんだろう」とピケに言い放ち、両軍はヒートアップしている。クーマン監督は「なぜスペインにVARがあるのか分からない。バルセロナのサポーターであれば2つのジャッジに熱くなり不満を抱くだろう。PKは明らかだったし、主審が後半に機械のトラブルで試合を止めたことを考えればアディショナルタイムはもっとあったはずだ」と述べた。
一方で「それぞれの感じ方がある。私は主審が笛を吹かなかったのならPKではないと思う。大事なのは、ピッチ上で何をしたかだ。バルセロナは偉大なチームなので、我々は苦しんだ。だが審判のおかげで勝ったとは言えないはずだ」というのがジダン監督の説明だ。
「(リヴァプール戦とバルセロナ戦は)ハードワークが必要な試合だった。いまは休まなければならない。状況は変わらないよ。まだ多くの試合が残されている。肉体的に我々は限界に達している。どういう形でシーズンを終えられるかは分からない」
クラシコで勝利したマドリーは公式戦13試合で無敗を貫いている。2016-17シーズン以来のドブレテ(2冠)の可能性を残して、彼らは次戦のリヴァプール戦に挑む。