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『君の名は。』の新海誠作品のパクリ事件が韓国で続いてしまったのはなぜか

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
韓国でもヒットした『君の名は。』(写真=著者撮影)

韓国の野党・正義党が制作した党の広報用PRアニメーションが盗作だった。それも日本のアニメ映画『君の名は。』のメガヒットで、今やその名を轟かす新海誠監督の作品をトレース(書き写し)したというのだから、そのニュースは日韓両国で物議を呼んだ。

ネット民は「時代遅れ」と政党を批判

広報用PRアニメの制作担当者が新海作品の大ファンで、「締め切りに追われる中、思わずトレースしてしまった」という言い訳も呆れるが、党内に盗作だったことを気づく者が誰もいなかったということも問題だろう。

正義党はすぐさま盗作の事実を認め謝罪したが、韓国のネット民たちが「新海作品を知らないこと自体が時代遅れ」と正義党の問題点を指摘したのは興味深い。

(参考記事:【画像あり】『君の名は。』新海誠作品をパクった韓国野党に、ネット民から皮肉の声炸裂!!

まるで、新海監督の作画は“一目見ればわかる”、それがわからない者たちは世の中の流行もトレンドもわかっていないと言わんばかりだった。

実は過去にもあった新海作品の盗作

実際、新海監督は韓国でも「光の魔法使い」「背景王」と呼ばれるなど、繊細なタッチと美しい色彩で描かれる風景描写に定評がある。映画『君の名は。』公開当時は、その人気からパロディなど社会現象も巻き起こしたほどだ。

(参考記事:パロディーに“迷惑行為”まで…『君の名は。』が韓国で人気のワケは?

ただ、それゆえに、模倣されることも多い。

代表的なのが、韓国の人気ウェブトゥーン『The God of High School』だ。

2017年、同作で新海監督の作画をそのままコピペした部分が見つかり、盗作疑惑が浮上。作者は疑惑に対し、「参考のために用意した資料と酷似した模写があった」と、事実上の盗作を認めたことがあった。

正義党による動画トレースもそうだが、先日紹介した『スラムダンク』騒動のように、ウェブトゥーン(ウェブ漫画)界でも新海監督の作品が盗まれることが度々発生しているのだ。

日本アニメ人気の韓国で新海ワールドが炸裂中

ただ、裏返せば韓国における新海監督の影響力が計り知れないレベルにあるとも言えるだろう。

そのひとつの例が現在、ソウル市で開催中の「新海誠展―『ほしのこえ』から『君の名は。』まで」だ。

昨年末に行われた「押井守監督展」や、最近の名探偵コナン人気にあやかった「コナン特別展」など、韓国では“ジャパニメーション”(日本製アニメーション)のイベントが増えつつあるが、現在は“新海ワールド”がソウルで展開中なのだ。

日本では2017年6月から全国を巡回している「新海誠展」だが、新海監督のデビュー15周年記念およびワールドツアーの一環として、今年7月13日から9月26日まで韓国でも開催されることになったらしく、ファンの間では好評を博しているという。

新海監督ならではの独特の世界観を堪能できるとして、韓国メディアでは「恋人同士でロマンチックな気分になれるデートスポット」とも紹介されていた。「目の保養ができる」「美しい作画に見惚れてずっと立ち尽くしていた」といった口コミも多く散見できる。

こうした反応を知っていれば、正義党の幹部も今回の盗作騒動を未然に防ぐことができたのだろうが、韓国では以前から『ワンピース』やジブリ作品など、有名な日本アニメの模倣・盗作騒動が絶えないだけに、“ポスト宮崎駿”と脚光をあびる新海監督も、著作権侵害の問題からは自由になれないかもしれない。

(参考記事:韓国アニメ業界が直視したがらない“黒歴史”と呼ばれる3つのアニメ作品

いずれにしても、韓国における新海監督の知名度は今回の件でまたまた高まった。アニメ映画『君の名は。』で韓国でもすっかりお馴染みの存在になっただけに、ニュースで取り上げる頻度も増えたのだろう。

できれば良いニュースでその名前をたくさん見かけたいものだが……。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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