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【韓国サッカー】ソン・フンミン負傷に続き 「街頭応援中止」 メディアは「悲しいニュース続くW杯」

2010年南アW杯ベスト16進出時には40万人が街に繰り出して応援(写真:ロイター/アフロ)

21日に開幕するサッカーW杯に関し、韓国が2つの大きな出来事に見舞われている。

3日に報じられた大エース孫興民(ソン・フンミン)の負傷は言うまでもなく衝撃的なニュースだった。

韓国メディア「NEWSIS」は英国メディアの報道を引用し「本来今週末(5日~6日)だった手術予定を1日でも早め、今日4日にした」と報道。手術部位は目の周辺の「4箇所」だという。

「スポーツ朝鮮」は韓国内の専門医に取材。医師は「ソン・フンミン本人のCTスキャン映像を見ていないので断言しきれないが」と断りつつ、「負傷部位の報道が事実なら、通常は6週間の安定が必要」と伝えている。さもなくば「複視(物が二重に見えること)」などの後遺症の心配もあるとしている。

なにせ今年5月には尹錫悦大統領から体育勲章「青龍章」を授かった偉大な存在。現在の日本代表には存在しない「絶対的エース」でもある。

今年9月、韓国代表としてカメルーン戦に出場したソン・フンミン
今年9月、韓国代表としてカメルーン戦に出場したソン・フンミン写真:ロイター/アフロ

既知の通り、2021-22年のシーズンには世界最高峰のイングランド・プレミアリーグでアジア人初の得点王に。代表チームでも突出した存在として活躍しており、先のW杯アジア予選では4ゴールを記録。これはチーム全体の13ゴールの約30%を占めるとともに、最終予選得点王となる数字でもあった。

トッテナムでの左シャドーとは少し違い、韓国代表4-1-4-1の左最後が主戦場となってきたソン。はたして、大会開幕までに間に合うだろうか。韓国代表は次の日程でカタールW杯予選グループH組を戦う。

11/24(木)22:00 ウルグアイ vs 韓国 エデュケーション・シティ

11/28(月)22:00 韓国 vs ガーナ 同

12/3(土)0:00 韓国 vs ポルトガル 同

少なくとも大韓サッカー協会側は「無理はさせない」というスタンスを取ると見られる。2021年東京五輪の際にもオーバーエイジ枠での出場交渉をトッテナム側と終えた後に、ソンがメンバー外となる出来事があった。キム・ハクボム監督自らが「前年からの試合出場時間があまりにも多い」「彼は韓国サッカーの財産。先々を考えての決断」とした。

2017年の左派文在寅政権誕生後、社会全体に「人権侵害」や「上からの厳しい通達(パワハラ体質)」に関する厳しい目が向けられるようになった。つまり「個人が負傷を押して国家のために戦う」という姿は決して美談とは捉えられない雰囲気がある。

街頭応援中止の影響 

いっぽう、4日にも国内サッカーマーケットを考えるとかなり大きな影響のあるニュースが報じられた。

大韓サッカー協会がソウル市とともにプレスリリースを発行。

「社会的雰囲気を考慮し、2022年国際サッカー連盟(FIFA)カタールワールドカップの街頭応援を中止することとした」

02年W杯以来恒例となってきた「街頭応援」を行わないことを発表したのだ。日本のサッカーW杯でのパブリックビューイングの多くはあくまで「自然発生的なもの」で、日本サッカー協会が直接的に管理に関わるものではない。

いっぽう韓国は発端となった02年W杯では自然発生的に起きたものを行政がサポート。それ以降はしばらく代表チームサポーター団体「レッドデビル」がボランティアを行って実施する時期もあったが、前回大会2018年には完全に大韓サッカー協会の「管轄」に。

ここらは応援文化を「自然発生的なもの」と考える日本(つまり欧州サッカーと同じ発想)、「主催者側が管理しつつも楽しめるものに」と考える韓国(つまり韓国プロ野球独自のスタイルの影響)の違いが見られる。

大韓サッカー協会はリリースでこう続けている。

「去る2018年ロシア・ワールドカップのように今回もソウル市とともに光化門広場での応援を事前に合意した。しかし社会的雰囲気(梨泰院での事故)を考慮し、街頭応援を中止する」

「事故発生から1ヶ月も経っていない時期に同じ管内で街頭応援を行うことは国民の感情に合わないと判断した。街頭応援を中止し、遺族と心を痛めている多くの方々の慰労の時間となってほしいという意味を含め、最終決定を下した」

"街頭応援なし"は、日本と似て「一般大衆層でのサッカーが4年に一度のもの」となってきている韓国サッカーにおいて、影響は非常に大きなものだ。なにせ「サッカーが一般大衆層の目に触れる機会」を失うことになるのだ。要は「重大な露出機会を失う」ことに。

日本と同じく、2000年代までのように「大会前の盛り上がり」ができにくい状況にある。大会が始まって、自国が活躍した時に一気に盛り上がるというかたちが近年のスポーツ国際大会での流れだ。

前回大会ロシア・ワールドカップでもそうだった。大韓サッカー協会側は「大会前の盛り上がりがない」点に頭を抱えていた。代表チームがファンと触れ合い、サインや写真撮影ができる「ファン・デイ」を実施。またソウル市長前の芝生広場にブースを設けたほか、02年W杯のベスト4メンバーが積極的にテレビ出演するなど、対策を講じた。

2018年W杯前の「ファンデイ」の様子。ちなみに両手を挙げているのがソン・フンミン。こういったイベントで「一番張り切るキャラ」でもある。
2018年W杯前の「ファンデイ」の様子。ちなみに両手を挙げているのがソン・フンミン。こういったイベントで「一番張り切るキャラ」でもある。

盛り上がってきたのは大会開幕後のこと。「街頭応援が始まった」という情報が報じられ「次は行ってみようか」ということになる。そしてグループリーグ第3戦のドイツ戦で奇跡的な勝利を挙げた。この時は1戦、2戦を通じてグツグツと煮込まれるように伝わっていた「街頭応援のニュース」が一気に第3戦で「沸騰」。

結果として韓国は98年W杯以降初めての「2大会連続グループリーグ敗退」を喫したが(これは日本も恐れていることである)、大会後サッカーブームはむしろ盛り上がった。代表の親善試合で史上初の4試合連続チケット売り切れなどの記録を更新したのだ。ドイツ戦での感動的な戦い、共に応援した記憶と合わせ、大韓サッカー協会は大会後、女性のインスタ映えをターゲットにするかのように、シャツやグッズの開発に着手。一時は満員のスタンドを背景に「サッカー場に行きました」という投稿が相次ぐ状況となった。

2つのニュースが報じられた4日、メディアはこういった見出しで記事を発信した。

「街頭応援はなく、ソン・フンミンは負傷…カタールW杯は悲しいニュースばかり」(マイデイリー)

「ワールドカップでの光化門街頭応援はなし…ソウル市『(サッカー協会からの)中止レター受付』(NEWSIS)

上記「マイデイリー」の記事には17時15分の時点で378個のリアクションが寄せられている。内訳は「怒っています」が271「悲しい」が58の順となっている。

10月29日の梨泰院での事故の後、5日までの国家哀悼期間ではイベントの中止が相次いでいる。この流れに沿った決断でもあった。

参考記事=【独自調査】事故による韓国の「国家哀悼期間」 自粛コンテンツ一覧 GUCCI、TWICE、ロッテ… 筆者による

吉崎エイジーニョ ニュースコラム&ノンフィクション。専門は「朝鮮半島地域研究」。よって時事問題からK-POP、スポーツまで幅広く書きます。大阪外大(現阪大外国語学部)地域文化学科朝鮮語専攻卒。20代より日韓両国の媒体で「日韓サッカーニュースコラム」を執筆。「どのジャンルよりも正面衝突する日韓関係」を見てきました。サッカー専門のつもりが人生ままならず。ペンネームはそのままでやっています。本名英治。「Yahoo! 個人」月間MVAを2度受賞。北九州市小倉北区出身。仕事ご依頼はXのDMまでお願いいたします。

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