「原則として車内では折りたたまずにベビーカー使用可能」への賛否動向
育児関連商品の技術の進歩や子育てに対する関心の高まりなどと共に、ベビーカーの利用が増えるにつれ、社会環境の対応も変化を遂げている。国土交通省の発表【「公共交通機関等におけるベビーカー利用に関する協議会」決定事項の公表について】などにもある通り、安全な利用促進・啓蒙のためのマークも制定され、周知が進められている。また同協議会では原則としてバスや電車などの公共交通機関、エレベーターではベビーカーを折りたたまずに使用できるとの決定が下されている。このことについて世間一般はどのような認識を示しているのだろうか。内閣府が2016年2月に発表した、ベビーカーマークに関する世論調査の詳細値から確認していく。
「電車やバスなどの車内やエレベーターでは、原則としてベビーカーを折りたたまずに使用できる」ことについて、いかなる感想を持つか、賛成・反対の見方で答えてもらった結果が次のグラフ。全体としては8割強が賛成、反対は1割強でしかない。
男女差はほとんどなく、年齢階層別では若年層ほど賛成派が多い……ように見えるが、よく確認すると賛成派の回答率は若年層ほど高く、高齢層ほど反対派の意見が多くなるように見えるものの、一方で「分からない」の回答率も年上ほど高くなる。とはいえ、賛成派が絶対多数を占めている状況に違いは無い。
他方その賛成派の中身をよく見ると、強い賛成の意を示しているのは男性では30代がピークの一方、女性は20代がピークとなり、あとは年齢と共に漸次下がっていく。40代以外は同じ年齢階層でにおいては、男性の方が強い賛意の人の割合が多くなっている。ベビーカーに対する思惑の微妙な違いが見え隠れしているようで興味深い。
回答者の居住環境別では大きな差異は無い。ただし電車やバスの混雑が多分に生じる東京都区部では、他の都市規模別と比べるとやや否定派が多くなっているのが目に留まる。もっともそれでも8割近くが賛成派であることに変わりはない。
最後は回答者の子供の有無や、実際にベビーカーを使っていたか否か別。子供が居ても歳が上になるにつれて否定派が増える一方、子供が居ない人の場合は逆に肯定派が増えるのは興味深い。あるいは過去においては利用しなかった、できなかった事から、現在のように利用できる環境がある程度整備されたことへの羨ましさも否定派の値に反映されているのだろうか。また使用経験項目では当然、現在使用者の肯定派が極めて高い値となっている。
「電車やバスなどの車内やエレベーターでは、原則としてベビーカーを折りたたまずに使用できる」は無論原則論であり、状況に応じて個々の判断が必要となる。ベビーカーを使用している状態は、使用していない状態とすべて同じわけではないのだから、それに応じた判断を使用者側もなすべきなのは当然の話ではある。
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