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拝啓 明治さま。神対応の続く男子カーリングのスポンサーになっていただけませんか?

竹田聡一郎スポーツライター
SNSでファンとの交流を始めた両角友。話題はカーリングだけでなく多彩(著者撮影)

 五輪が閉幕し2週間経った。赤いサイロは依然品薄で、彼女らが食べていたイチゴは品種流出問題を燻らせ、北見市長は涙で語り、猫も杓子も「そだねー」を乱発している。カーリングの熱狂、その名残はまだまだ感じられる。

 もちろん、カーリングが話題になること、注目度が上がることはポジティブなことだが、3度目の五輪を経験したロコ・ソラーレ北見(以下LS北見)の主将・本橋麻里は「あ、これ、4年に一度、来るやつだ」と冷静だったりする。ぜひ4年に一度のブームではなく、継続した人気と、競技そのものへの注目を保ってほしい。

 定着と普及という意味では、惜しくも4強を逃した男子のSC軽井沢クラブの新規ファンのほうが地に足が付いているかもしれない。LS北見周辺に浮上するような芸能事務所だ音楽プロデューサーといった景気のいい登場人物は、真偽のほどは別にしても、彼らの近くには出てこない。しかしそのぶん、純粋にカーリング競技のファンが彼らの元に集まりつつある。

 軽井沢アイスパークで行われるカーリング体験プログラムの参加者は10倍近くなり、彼らのファンクラブの加入者は7倍に増加した。公式Facebookのイイネ!通知も連日、鳴り止まないらしい。

 そんな中、スキップの両角友佑は、ほとんど稼働させてなかった自身のTwitter(@moro_sckc)を頻繁に更新するようになった。そのほとんどは、ファンやファン予備軍からの質問への返信だ。

「先攻、リードの一投目でストーンをハウス内センターにドローするのは、ハウス外にセンターガードを置くのに対して何が違うのですか?? #真面目な質問でごめんなさい」

 という、観戦初心者を名乗る方の質問に、

「点差やエンドにもよりますが... 1投目はハウスに入っていない場合、テイクアウトができません。単純に言えば、ストーンを貯めたければ入れない、貯めたくなければ入れる、、、って感じです。 #カーリング #作戦 #字数制限の壁」

 などと、丁寧に答えている。

 他にもスイープやメンタル面、戦術についてなどなど、質問は様々で、我々、メディアにとっても勉強になるやり取りが続く。

 アイスの外に対しての質問にもフランクに回答している。

 CDデビューの可能性に関しては「女子のSODANEが出たら考えます。笑 #カーリング女子 #聴いてみたい #買わないですけど 笑」

 好きな漫画はワンピースらしい。好きな和菓子は道明寺らしい。巧妙にハッシュタグをつけて、自分の言葉でファンと交流している。

 さすがにすべてに返信はできないし、合宿中や大会中は中断するが本人いわく「今のところ続けていくつもり」とのことだ。

 また、五輪期間中に朝日新聞の実況と解説企画で、チーム東京(I.C.E.)の面々が使った「#東大カーリング」のハッシュタグもメンバーが継続を宣言した。カーリングについてのあらゆる疑問に、もちろん彼らの時間が許す限りだが、回答してゆく。

 こちらも併せて興味ある方はぜひ積極的に使用し、深淵なるカーリングワールドの入り口に立ってほしい。

 彼らが何のために、こうしたファンへの対応、回答をしているかといえば、男子カーリングをさらに盛り上げて競技力を向上させるために他ならない。

 国内に通年リンクが増えてきた昨今、もっとも欲しいのはスポンサーだろう。

 女子には全農さんがついているが、男子にはノータッチだ。代表のあるいは新規チームを立ち上げるような企業が複数、出てくれば女子並の熱狂が期待できる。

 個人的に推したいのは、株式会社明治さんだ。

 なんたって「カール」がある。

 これほどカーリングをサポートするのに適した企業もないだろう。スナック自体が曲がっているから「カール」ではないらしく、昭和30年代に流行した「カール人形」が語源なのだが、そのあたりは目をつむってもらおう。

 特筆すべきはやはりおやつタイムである。ハーフになるとオンエアでは「それにつけてもおやつはカール」のジングルが鳴り響き、その中で両角公佑あたりがおもむろにパーティー開けをして、山口剛史あたりが「コースケ、カレー味はさすがに香りが強すぎるだろ」とツッコミを入れ、両角友佑は無言でうすあじを咀嚼する。そんな光景を観た視聴者は間違いなくコンビニに走るだろう。

 明治としてはカールの全国のシェアを取り戻すチャンスである。日本一へ。そして世界へ。というポテンシャルを秘めた男子カーリングの立ち位置ともリンクするのではないか。

 スキップがヒゲを生やしていて、麦わら帽子をかぶって首には手ぬぐい……とまで書くともはや冗長なので自粛するが、ぜひ明治さんは真剣に検討してほしい。

 あとは男子にもぜひ愛称が欲しい。「そだねージャパン」は道産子女子のものとして定着したので、男子は一気に沖縄に飛びたい。うちなーんちゅのイントネーションで「そうさあ」と相槌を打てば親近感が湧き上がってくるのではないか。そうさあジャパンでは受け皿みたいなので、びっくりした時に彼らが使う方言「あぎじゃびよう」はどうだろう。いいショットが出た時に「あぎじゃびよう」、苦しい展開も「なんくるないさあ」、ちょっと難しい局面は「なんでかねえ」と、島言葉で協議すれば、ロコ・ソラーレの笑顔でそだねーに匹敵する好感を得られるだろう。

 まずは沖縄にカーリングホールを作ることから始めないといけない。暑い沖縄においてカーリングホールは極上の涼スポットになる。沖縄セルラーさん、オリオンビールさん、御菓子御殿さん、A&Wさん、どうでしょうか。

 明治さんを筆頭に本気に検討していただければ幸いです。神対応を健気に続ける男子選手の努力と思いに報いるためにも、よろしくお願い申し上げます。

スポーツライター

1979年神奈川県出身。2004年にフリーランスのライターとなりサッカーを中心にスポーツ全般の取材と執筆を重ね、著書には『BBB ビーサン!! 15万円ぽっちワールドフットボール観戦旅』『日々是蹴球』(講談社)がある。 カーリングは2010年バンクーバー五輪に挑む「チーム青森」をきっかけに、歴代の日本代表チームを追い、取材歴も10年を超えた。

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