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ウクライナ軍、1台約60万円の「神風ロボット」でロシア軍の戦車などを破壊へ:米報道

佐藤仁学術研究員・著述家
(ウクライナ政府提供)

「敵の大型の戦車に比べると遥かに安い」

2023年11月に米国のメディアABCニュースがウクライナ製のリモートで動くラジオコントロールに地雷を搭載して敵軍の陣地の目的地まで行き標的に突っ込んでいき爆発する"神風ロボット"を紹介していた。

リモートからの無線操作で動き、爆弾や地雷を搭載してロシア軍の戦車などの下に入り込んで爆発して破壊する。1台約4000ドル(約60万円)の「神風ロボット」で1台数億円の大型戦車を破壊することができるのでコストパフォーマンスはとても高い。開発したエンジニアも「敵の大型の戦車に比べると遥かに安い」と語っていた。

2023年10月にはウクライナの副首相のミハイロ・フェドロフは自身のSNSで「神風ロボットを操縦することによって安全な遠隔地から敵軍の設備を爆破させることができます。既にフィールド試験を終えて、大量生産を進めています」とコメントしていた。

ドローンに爆弾を搭載して標的に向かって突っ込んでいき爆破するドローンは神風ドローンと呼ばれており一般用語として全世界で使用されている。いわゆる神風ドローンの地上版である。それにちなんで対戦車地雷や爆弾を搭載したラジオコントロールロボットを「神風ロボット(Kamikaze robot)」と副首相は称していた。

ABCニュースの動画の中ではフィールド試験で、草原に置かれた自動車を爆発させる様子を収めた動画も紹介していた。

▼ウクライナ製の「神風ロボット」を報じる米国メディア

攻撃だけでなく人間や物資の輸送にも

「神風ロボット」は人間の兵士がラジコンカーをリモートで操作して、目的地まで到着し標的を発見するとラジコンカーが突っ込んでいき対人地雷が爆破する。兵士が入れない危険な場所や敵軍の陣地の最前線にも無人車両なので入っていき攻撃することができる。そのため味方の兵士が犠牲になるリスクを軽減することができる。副首相は大量生産を開始していると伝えているが、標的に突っ込んでいき爆発するので、大量生産しても1回使用したら再利用はできない。

ウクライナ紛争では多くのドローンが兵器として利用されており、戦場の無人化が進んでいる。従来、戦場で人間(軍人)が行っていた「4D業務」(単調:dull、汚い:dirty、危険:dangerous、人間が入れないところ:distance)の任務の多くは既にロボットが行っている。

また「神風ロボット」は地雷や爆弾を搭載して、敵軍の軍事設備を破壊するだけでなく、同じシステムで無人地上車両として人間の兵士が入れないような場所への物資の輸送や負傷した人間の輸送などもできる。ABCニュースの動画の中でも人間を横にして載せて運んでいる様子も報じられていた。

▼"神風ロボット"「Ratel S」を紹介するウクライナ副首相のSNS

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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