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『脱ハンコ』の『ハンコレス』行政。『福岡市』にできて他の市ができない理由はどこにもない!

神田敏晶ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント
出典:いらすとや

KNNポール神田です。

どうやら、『ハンコレス社会』がついに本当にやってきたようだ…。やたら、かけ声だけでおわりそうだった政府や行政の『行政改革』や『DX』が本当に始まりはじめたように見えるが…。

■1万1,000種類のハンコ書類の壁の撤廃を目指す!

□(2020年10月)7日の政府の規制改革推進会議で、菅義偉首相が行政手続きの「脱はんこ」などを押し進めるよう指示した。

□民間に押印を求める行政手続きは現在1万1,000種類以上あるとされ、経済産業省や総務省など各省庁は仕分け作業を加速する。

□各省庁で押印が必要な手続きの種類は経産省が最多で約2,000。次いで厚生労働省が約1,900、財務省が約1,600、国土交通省が約1,500とされる。

□「脱はんこ」は菅首相が掲げる「デジタル化」と表裏一体の看板政策。首相官邸関係者は「押印撤廃を前提とした見直し以外、選択はない」と断言する。

□梶山弘志経産相は今月初旬、経産省手続きでの押印について「原則撤廃ということで指示を出した」と表明。農林水産省は、農地転用や漁船登録など年間処理数が1万件以上の手続き(約40種類)について「廃止可能」(担当幹部)と判断し、作業を進めている。総務省も住民票の写し関連手続きの押印について「本人確認を厳格にした上、廃止する方向」(担当幹部)とした。

出典:行政手続き、1万超見直し 作業加速、信頼確保も課題 各省庁

菅政権に変わり、各大臣が一新した事により『脱ハンコ』『ハンコ廃止』の動きは、かなり加速度をあげている。そう、『GoToキャンペーン』などの景気を刺激する経済政策や『通信料金値下げ』でアメをばらまきながら、一方で、『デジタル庁』や『行政改革』などの政府DX陣営が、最も成果の見えやすい『脱ハンコ』に取り組んでいるからだ。そう顔の見える大臣の動きが顕著である。

そんな政府の動きを後押しするかのように、福岡市では、さっそく成果の狼煙をあげた。

■福岡市の扱う書類は4,700種。市で扱える3,800種類(80.8%)はハンコレス化完了!残りは国と県

□福岡市は去年から、市民の負担を軽減するとともに、行政手続きのオンライン化を進めるため、市に提出される書類への押印義務を廃止する、いわゆる「ハンコレス化」を段階的に進めてきました。

□その結果、市に提出される申請書などおよそ4700種類のうち、市で見直しができる保育所の入所申請書などおよそ3800種類について、9月末でハンコレス化を完了するとしています。

出典:「ハンコレス化」福岡市 法令で義務付け以外の書類は完了へ

□脱ハンコ化した申請書類は「就学援助申請書兼世帯表」「現況届」「高齢者乗車券等交付台帳」など。福岡市ではそれぞれ年間1万8000件、3万2000件、15万5000件の書類を処理している。

出典:福岡市、行政手続きの“脱ハンコ”完了 市単独で見直せる3800種類全てで

『やればできる』を実証した福岡市の施策を担当課長に聞いて驚いた!

出典:福岡市
出典:福岡市
出典:福岡市
出典:福岡市

https://www.city.fukuoka.lg.jp/data/open/cnt/3/77422/1/hankoresukanryou.pdf

いったい、なにをどうやれば、こんな3,800種類もの、押印を必要とした書類から『脱ハンコ』を実現したのか?福岡市総務企画局行政部総務課で伺った…。しかし帰ってきた言葉に驚いた。

「スマート行政を推進するために、押印を『各担当部署』ごと、本当に『押印』が必要かどうかの丁寧な見直しをお願いしました」

「ただ、それだけですか?」

「はい。丁寧に現場に見直しをお願いした積み重ねです」

「他の市区町村にもそのノウハウを、提供してほしいです」

「福岡市の事例は、他の市区町村でも可能かと。ぜひとも『福岡方式』をご参考にしていただければ幸いです」

大手ベンダーやコンサルタントの力を借りての答えを想定した質問したが、拍子ぬけするほどの『担当部署の現場力』でのムダな『押印』の洗い出しという基本の『キ』という回答だった。

「しかし、今までと違うことを一番やりたがらないのが役所さんだと思うのですが…」という意地悪な質問にも、

「『スマートシティ』を推進するという強いビジョンのおかげかと…」という答えが聞けた。

https://smartcity.fukuoka.jp

■福岡方式を事例に自治体向けマニュアルを作成し配布する 河野太郎行革大臣

□行政手続きでのはんこ使用廃止に取り組んでいる河野太郎行政改革担当相は(2020年10月)6日の閣議後記者会見で、全国に先駆けて「はんこレス」を既に原則完了した福岡市の事例などを参考に、自治体向けのマニュアルを作成、配布する方針を明らかにした。

□会見で河野氏は「福岡市はもう押印を廃止している。そういう押印廃止を実現している自治体の経験を横展開したい」と述べた。マニュアルの内容や配布時期は今後検討する。

出典:「はんこレス」福岡方式を全国に 河野行革相がマニュアル作成方針

河野太郎氏は各省庁に対して、必要な押印があれば2020年9月末までに申請せよと文書を配布した。

□1通の文書が、霞が関のすべての府省庁に送付された。

□押印の根拠や、存続させる場合の理由などについて回答せよ。回答までの猶予は最短で1週間足らず。年間の利用が1万件を超える行政手続きについては、(2020年)9月30日の午後5時まで。それ以外は10月9日の正午が期限とされた。

出典:最初の一手は「はんこをやめろ」

SNSを通じても、その後の進捗の個人的な感想のツイートが見える化している。

かなりポジティブすぎるほどの、霞が関の反応がかえって気になる。

菅政権のスピード感を、本当に感じさせるのは、プロセスではなく結果がすべてだ。政府指導で残りの1万余の『押印』書類が『ハンコレス』になるのはいつの日か…。

□自民党の「日本の印章制度・文化を守る議員連盟(はんこ議連)」は(2020年10月)8日、首相官邸で加藤勝信官房長官と会談。

□河野太郎行政改革担当相が行政手続きを巡る押印廃止を打ち出したことを踏まえ、「拙速で行き過ぎた『脱はんこ化』で押印に対する信頼が揺らいでいる」として、業界を含めた国民の十分な理解を得るよう求める要請書を加藤氏に提出した。

□党本部で二階俊博幹事長とも会談。二階氏は「署名を集めてしっかり反抗しろ」と述べ、要請書に賛意を示した。

出典:脱はんこ「行き過ぎ」 自民議連が政府に苦言 二階氏「署名集め反抗を」

さっそく、古参議員からの反対運動の『非・ハンコレス』が動きはじめた。『行政改革』は『既得権益』と最も相性が悪い…。それも含めて大臣のリーダーシップの腕のみせどころだ。

ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

1961年神戸市生まれ。ワインのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の出版とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送「KandaNewsNetwork」を運営開始。世界全体を取材対象に駆け回る。ITに関わるSNS、経済、ファイナンスなども取材対象。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を歴任。著書に『Web2.0でビジネスが変わる』『YouTube革命』『Twiter革命』『Web3.0型社会』等。2020年よりクアラルンプールから沖縄県やんばるへ移住。メディア出演、コンサル、取材、執筆、書評の依頼 などは0980-59-5058まで

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