ヨーロッパにあらわれた不気味な色の空と雪 その正体は?
アジアに春を告げる自然現象の一つに「黄砂」がありますが、この時期、砂はサハラ砂漠からヨーロッパにも運ばれます。先週この砂の飛来によって、欧州南部で珍しい光景が見られました。
オレンジ色に染まる空
エーゲ海に浮かぶギリシャのクレタ島は、本来、青い空が美しい場所なのですが、22日(木)その島の空が一変してオレンジ色に染まりました。下の写真は、まるでセピア加工をしているように見えるほどです。
この光景をもたらしたのは、接近する低気圧と前線でした。その結果強い南風が吹き、アフリカ北部のサハラ砂漠からギリシャに砂が飛来したのです。
ギリシャ気象局によると、砂はギリシャ全土を覆い、砂の濃度は過去10年間で最も高かったということです。
↑クレタ島の空。右は22日、左は23日。
オレンジ色に染まる雪
一方ロシアでは、サハラの砂を含んだオレンジ色の雪が降りました。
下の画像は、2014年冬季五輪の開催地であったソチの光景ですが、まるで火星を思わせるような景色になっています。
春の訪れとサハラの砂嵐
サハラから飛来する砂は「サハラダスト」や「アフリカンダスト」などと呼ばれています。
冬の間は砂は東風に乗って西に運ばれ、一部は大西洋を越えてアメリカ大陸まで到達します。なんと年間2800万トンもの砂が、南米アマゾンに落下しているのだそうです。
しかし春になると風向が変わり、「シロッコ」と呼ばれる南寄りの風に乗って、砂はヨーロッパ南部に運ばれることがあります。ときにはイギリスなど北部にまで到達することもあるのです。
サハラダストのいい面・悪い面
黄砂と同じくサハラ砂漠からの砂も、飛来する中で有害物質と結びつくため、越境大気汚染物質として敬遠されています。
スペインでは、サハラダストが到達した日はそうでない日に比べ、呼吸器疾患による死亡率が高まったという報告があります。
しかし一方で、砂はカルシウム、リン、鉄といったミネラルを豊富に含んでおり、陸海両方の生態系に欠かせない現象ともなっています。
海に落ちてプランクトンなど海洋生物の栄養分になるほか、遠くアマゾンに飛来し、動植物を支える大事なミネラル源ともなっているのです。