老後はろうご(65歳)からの時代に完全に変わる~確定拠出年金は65歳まで積立可能に
なぜ確定拠出年金は65歳まで加入に舵を切るのか
日本経済新聞8月31日付け朝刊の一面は「確定拠出年金 納付を延長 厚労省検討」でした。「なぜ、このタイミングで?」と感じた人も多かったかもしれませんが、私は意外性を感じませんでした。実はこれ「老後は65、つまり“ろうご(65)”から」に完全に変わっていくために欠かせないステップのひとつと考えるべきだからです。今日はそんな話をしてみたいと思います。
まず、確定拠出年金制度については「65歳まで積立可能」にするべきタイミングです。確定拠出年金制度は、国が用意した老後資産形成の枠組みですが、個人が任意で加入するiDeCo(個人型確定拠出年金)と、企業が退職金制度の一部として導入する企業型確定拠出年金に分かれます。
このうち、iDeCoについては、国民年金の保険料納付が60歳であることなどを勘案して「60歳までしか積み立てられない」仕組みとなっています。
企業型確定拠出年金については60歳まで加入が原則としつつ、企業が引き続き正社員として雇用するのであれば65歳まで積み立てを継続できるようになっています(ただしグループ会社に転籍などするとダメだったり、60歳以降の新入社員は加入できないなど縛りが多い)。
実はこれらについてはすでに国の「規制改革実施計画」が6月15日に公表されており、iDeCoも企業型も65歳まで加入可能とするよう項目があげられています。2022年1月までの見直しを検討するよう求めています。
新聞記事に書かれていること自体は業界では周知のことでした。すでに検討が決まっている話題について、実際の議論に入る直前に取り上げたアドバルーン記事の類いです。
60~65歳までの3人に2人が働く時代に、老後の準備は60歳までというギャップが残っている
しかし、この記事はもっと深く理解することが必要です。それは、もとの日経新聞記事でも指摘があるとおり、「日本全体が65歳まで働き、老後に向けて備える時代」になりつつあるということです。
公的年金の受給開始年齢が65歳に順次引き上げられることは誰でも知っていると思います。これにあわせて60歳に達する人は65歳まで会社が継続的雇用をすることが義務づけられています。
実際、60歳以上65歳未満の男性の79%が働いている世の中になっており(「平成30年高齢社会白書」による)、65歳から70歳未満男性でみても54.8%が働いているのが今の日本です。
しかし、働けるようになったというのに、お金を備える仕組みのほうはまだ整備が不十分です。60歳代をとりまく老後への備えの法的制限は以下のように「60歳」に線引きがあります。
・国民年金制度の加入は60歳まで(65歳からもらう)
・iDeCoの積立も60歳まで(60~70歳のあいだにもらう)
特に問題なのは、「お金の準備」を支援する枠組みであるiDeCoのほうがどのような理由であろうと60歳で積立を停止しなければならないことです。これはNISAやつみたてNISAが60歳以降でも利用できるのとは大違いです。
つまり、今回の報道は、「65歳まで働ける社会の完成」→「65歳まで老後に備えて資産形成に励む社会の実現」というステップを踏む中で現在欠けているピースをはめこもうとしていると理解できます。
理屈としては「やるべきか、否か」ではありません。「やるのは当然で、いつやるか」の議論になるでしょう。もちろんできるだけ早いほうがいいことは間違いありません。
老後は65(ろうご)歳に始まり、65(ろうご)の年まで貯める時代になる
今まで、私たちが生きてきたのは
「貯めるのは60歳まで」
「働くのは65歳まで(でも年収は下がる)」
「年金は65歳から」
というステージでした。
しかしこれからのステージは
「貯めるのは65歳まで」←これから改正
「働くのは65歳まで(年収はあま下がらない)」←現在切り替わり中
「年金は65歳から」←改正済み
ということになります。
しかも「65歳以降も働けるチャンスが増える」ことも間違いありません。
私たちはまず、「65歳まで貯める」という意識に切り替えをしていきましょう。そして55歳よりも若い人であれば、あなたの老後は65歳よりもっと遅くなることを考えてもいいでしょう。おそらくその時代は予想より早く到来します。
たった20年前、60歳になった人は文字通り「おじいちゃん」でした。体に衰えが来ており、仕事をするのは難しかろうと考える年齢だったかもしれません。
今、身体的にも知能的にも10年くらい「若さが長持ち」しているといわれます。だとすれば今の引退年齢は75歳であってもいいくらいです。
語呂合わせで覚えておけば忘れないでしょう。「ろうごは65」からなのです。