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レジェンド羽生善治九段、ついに竜王戦で1組から陥落 1組以上連続32期、通算34期は歴代最高記録

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 2月21日。東京・将棋会館において第37期竜王戦1組出場者決定戦▲丸山忠久九段(53歳)-△羽生善治九段(53歳)戦がおこなわれました。

 10時に始まった対局は21時57分に終局。結果は127手で丸山九段が勝ちました。

 本局の結果、丸山九段は1組残留が決定。1組5位、決勝トーナメント進出の可能性を残しました。

 一方、羽生九段は2組への降級が決まりました。羽生九段は通算では竜王位に7期、1組に27期在籍。1組以上には史上最長の32期、連続して在籍していました。

 羽生九段の偉大な記録は、ここでいったん区切りを迎えました。

1組残留をかけた戦い

 前期竜王戦において、羽生九段は1組準優勝、丸山九段は1組4位という立場で決勝トーナメントに進んでいます。

 今期1組ランキング戦1回戦。羽生九段は久保利明九段と対戦しました。後手の久保九段は三間飛車で、相穴熊に。中盤から終盤にかけて、久保九段が先に羽生玉に迫る形を作り、優位に立ちます。羽生九段も追い込んだものの、最後は久保九段が一手勝ちを収めました。

 丸山九段は渡辺明九段と対戦。角換わりから後手の渡辺九段が先攻し、ペースをつかんで快勝を収めています。

 竜王戦はどの組においても、ランキング戦1回戦の比重がとても重く、ここを勝つか負けるかで大きな差があります。勝てば残留は確定。負けると降級の危機に近づきます。

 1組ではランキング戦1回戦で敗れると出場者決定戦(5位決定戦)に回ります。そこでもまた初戦で敗れると、合計2連敗で、2組への降級が決まります。

羽生九段、ついに1組から陥落

 羽生九段と丸山九段は、黄金世代を形成してきた同い年。これまで多くの舞台で名勝負を繰り広げてきました。

 本局は後手の羽生九段が横歩取りに誘導。丸山九段は「青野流」の構えで一触即発の布陣となりました。そして互いに中段に飛車を置いたまま端歩を伸ばし合い、すぐに戦いが始まっています。

 中盤、丸山九段は小技をおりまぜ、飛車を成り込んで龍を作ります。このあたりでは丸山九段がペースをつかんだようです。

 丸山九段リードで迎えた終盤。羽生九段が手段を尽くし、白熱した攻防が続きます。しかし丸山九段は誤ることなく、着実にゴールへ。最後は飛車を成り捨てて、羽生玉をきれいに詰ましました。

 丸山九段は1組における優勝回数は最多の5回を誇ります。来期は26期目となる1組以上も確定。これは羽生九段(34期)、佐藤康光九段(来期で30期目)に次ぐ記録です。

 羽生九段の1組連続在籍記録は32でストップしました。改めて、偉大な記録というよりありません。この記録はおそらく、かなり将来まで残り続けるでしょう。

 羽生九段と丸山九段の対戦成績はこれで、羽生43勝、丸山22勝となりました。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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