台風が影響? 秋の大雨が増えている
今年の関東甲信地方の年降水量は平年比117%で、21年ぶりの多雨となった。原因は10月の台風19号による記録的な豪雨だ。長期的に見て、夏の降水量が減り、秋の降水量が増える傾向にある。
台風19号で21年ぶりの多雨
今年も残りわずか、振り返れば雨の印象が強い一年でした。実際、関東甲信地方の年降水量は平年の1.17倍(12月27日まで)となり、1998年以来21年ぶりにかなり多くなりました。とくに、台風19号の記録的な豪雨により、10月の降水量が平年の3倍となったことが大きく影響したようです。
また、東京も今年は5年ぶりに、年降水量が1,800ミリを超えました。年平均降水量(1528.8ミリ)が約20%増えただけでも、荒川や多摩川の増水、そして住宅密集地の浸水被害があったことを思えば、数字から受ける印象と実際の天気には大きな隔たりがあるように感じます。
東京管区気象台がまとめた「東京都の21世紀末の気候」では温暖化が加速した場合、滝のように降る雨(1時間に50ミリ以上)の回数が100年で2倍になるとの予測もあります。これまでと雨の降り方が変わってきたのでしょうか。
年降水量は横ばい傾向
それを確かめるために、これまでの関東甲信地方の年降水量をグラフにしてみました。記録が残る1946年以降、偏差の5年移動平均値(赤線)をみると、1960年代から1980年代は今と比べると少なく、1990年代は変動が大きく、そして2000年以降は横ばい傾向です。
年平均気温のような単純な増加傾向をイメージしていただけに、どのように考えたらいいのかわからなくなりました。雨(雪)の降り方は季節によって、地域によって違いが大きく、一年間で平均してしまうと平年との隔たりが見えにくくなるのかもしれません。
秋の大雨が増えている
そこで、季節ごとの降水量がどのように変化してきたのか、調べてみました。すると、予想していなかった結果が表れました。
この70年あまりで、冬の降水量は5%増加、春の降水量はほとんど変化なし、夏の降水量は20%減少、秋の降水量は10%増加していました。つまり、夏に雨が少なく、秋に雨が増えているようなのです。
もともと、関東甲信地方は梅雨の雨よりも、秋雨の方が多くなる傾向があります。それは秋の方が台風の影響を受けやすいからです。気象庁がまとめた、台風19号の大雨要因でも、秋の気圧配置や秋台風の特徴を指摘しています。
どちらかといえば、秋は乾燥した晴れ=秋晴れをイメージしやすいだけに、今後も秋に大雨が増えるならば、私たちの意識も変化を求められそうです。
【参考資料】
気象庁:2019年の天候と台風のまとめ(速報)、2019年12月23日
東京管区気象台:「21世紀末の気候」リーフレット、2018年5月
気象庁:令和元年台風第19号に伴う大雨の要因について、2019年12月23日