「LGBT見るのも嫌だ」荒井首相秘書官が差別発言。首相や秘書官全員も同じ考えか?
荒井勝喜首相秘書官が3日、性的マイノリティについて「僕だって見るのも嫌だ。隣に住んでいるのもちょっと嫌だ」などと発言したことが報じられている。
岸田首相が国会で同性婚について「社会が変わっていく問題だ」と述べた点について、荒井氏は「社会に与える影響が大きい。マイナスだ。秘書官室もみんな反対する」と発言。さらに「人権や価値観は尊重するが、同性婚を認めたら国を捨てる人が出てくる」といった趣旨の発言をしたという。
荒井氏による差別発言が報じられた直後、同氏は記者団に対し発言を撤回すると答えているが、責任は免れないだろう。
同性愛嫌悪に基づく差別発言
「僕だって見るのも嫌だ。隣に住んでいるのもちょっと嫌だ」というのは、同性愛嫌悪に基づく差別発言にほかならない。オフレコとはいえ、政権の中枢にいる人物から、記者団の取材に対してこのような差別発言が平然と出てしまうこと自体、非常に憤りを覚えるのと同時に、日本の政治のレベルに対して驚きを隠せない。
「同性婚を認めたら国を捨てる人が出てくる」という発言も非常に怒りを感じるものだ。
すでに性的マイノリティの中には、「同性婚」が認められていないことで国外に出て行かざるを得なかったという人もいる。特に国際同性カップルの中には、コロナ禍にパートナーが入国できず、海外に行くしか選択肢がなかったという人もいるのだ。
荒井氏の発言は、そうした「マイノリティの人権を守る」のではなく、むしろ「マイノリティの人権を侵害したい人たちを守りたい」という姿勢が色濃くでている。
「人権は尊重するが」と荒井氏は枕詞のように述べているが、これを言えば差別発言が許されるわけがない。そもそもの「人権」に対する基本的な認識が誤っている。
差別思想が「普通の感覚」か?
NHKの報道によると、経済産業省出身の荒井首相秘書官は「岸田首相のスピーチライター」を務めており、同氏は「『普通の感覚』を大事にしている」のだという。
岸田首相をはじめ政権中枢にとっては、このような差別思想が「普通の感覚」なのだろうか。
性的マイノリティに関する全国意識調査によると、近所の人が同性愛者だった場合に「嫌だ」と答えた人の割合は、2015年時点で39.4%だったのが、2019年には27.6%に減少している。
一定数残っているとはいえ、荒井氏のような認識が社会の「普通の感覚」ではないことはデータを見ても明らかだろう。
岸田首相は、国会で同性婚について「社会が変わっていく問題だ」と答弁している。
荒井氏も「社会に与える影響が大きい。マイナスだ」などと発言しているようだが、すでに「同性婚」への賛成割合は全体でも約6割を超え、2-30代では約8割を占めている。この点からも、いかに政治と世論がかけ離れているかがわかる。
秘書官全員が同じ考えか
荒井氏の差別発言は言語道断だが、さらに問題なのは、同性婚をめぐり「秘書官室もみんな反対する」と述べている点だ。
荒井氏のみならず、岸田首相を支える複数の首相秘書官全員が、同性婚に反対しており、ましてや性的マイノリティについて「見るのも嫌だ。隣に住んでいるのもちょっと嫌だ」と思っているのだろうか。
岸田首相は「異次元の少子化対策」などと打ち出しているが、政権中枢がこのような差別的な認識の人物で固められているとなると、例えば育休に関して的外れな発言をし、多くの批判が集まるのは自明と言えるだろう。
荒井氏は当然辞任すべきだが、このような差別認識や言動が横行しているとすれば、秘書官全体を変えるべきではないだろうか。さらに、岸田首相の任命責任も追及されるべきだろう。
今年5月には「G7広島サミット」が予定されている。しかし、G7各国のうち、性的マイノリティに関する差別禁止法や、同性カップルの法的保障などがないのは今や日本だけだ。そんな国が「議長国」として、G7サミットを開催する資格はないだろう。