岡崎、吉田が活躍する英プレミアリーグ 夏の移籍金総額は史上最高の1600億円
冬季加えると10億ポンド超えも
日本代表FWの岡崎慎司選手が独マインツからレスター・シティに移籍したサッカーのイングランド・プレミアリーグ。夏の移籍は9月1日午後6時(日本時間2日午前2時)に締め切られた。プレミアリーグの移籍金総額は昨季より4%アップし、史上最高の8億7千万ポンド(約1600億円)を突破した。冬の移籍金額を加えると10億ポンドを突破する可能性が出てきた。
移籍後初ゴールを決めた岡崎選手の活躍は辛口批評家がそろう英BBC放送のサッカー番組「マッチ・オブ・ザ・デイ」でも取り上げられている。身体能力が高く、機敏で俊敏、当たり負けしない強さがある。レスターも2勝2分の勝ち点8で堂々の3位。これから強豪チームとの対戦でも先発出場できるようになれば、岡崎選手の評価はワールドクラスになる。
サウサンプトンに所属する日本代表DF吉田麻也選手もプレミアリーグでの通算出場記録を66試合に伸ばし、稲本潤一選手のプレミアリーグ最多出場記録に並んだ。
BBCなどの報道を総合すると、プレミア夏の移籍金総額の推移は下のグラフのようになる。リーマン・ショックの後遺症がしばらく続いたものの、英国の名目国内生産(GDP)の伸びと合わせるように移籍金総額も増えている。
プレミアの大盤振る舞い
ロンドンの金融街がバブルを謳歌していたころ、イングランド・プレミアリーグはUEFA(欧州サッカー連盟)チャンピオンズリーグのベスト4に3チームが進出する黄金時代が3シーズンも続いた。
08年の世界金融危機で英通貨ポンドは暴落。ピーク時には1ポンド=250円だった為替レートは一時110円台に下がった。金の切れ目は縁の切れ目で、世界のトッププレーヤーの海外流出が続き、プレミアのクラブは欧州の強豪クラブに勝てなくなってしまった。
しかし英国経済は政策金利の利上げが視野に入るほど回復してきた。今年6月には一時、1ポンド=195円に達した。ギリシャ危機に端を発する欧州債務危機で、対ユーロでも09年1月の1ポンド=1.03ユーロから今年8月1日には1.42ユーロまでポンド高が進んだ。
欧州の他リーグに比べてもプレミアリーグの大盤振る舞いは尋常ではない。下のグラフを見てもプレミアリーグは欧州の他のサッカーリーグを大きく引き離している。イタリアのセリアAに比べても2倍以上使っている。
マンCがトップ
この夏、注目された移籍選手はASモナコ(モナコ)からマンチェスター・ユナイテッドに3600万ポンド(約66億円)で移籍した19歳のアントニー・マーシャル選手(フランスFW)。3600万ポンドは10代の選手では史上最高だ。
今季最高金額の5500万ポンド(約101億円)でVfLヴォルフスブルク(ドイツ)からマンチェスター・シティに移籍したケヴィン・デ・ブライネ(ベルギー代表MF)。マンチェスター・シティはリバプールからイングランド代表MFラヒーム・スターリング選手も4400万ポンド(約81億円)で獲得した。
マンチェスター・シティは昨季、UEFAから移籍金などの支出について4900万ポンドの上限と1630万ポンドの罰金を課せられたが、協議の末、規制は緩和された。クラブの運営が持続可能と判断されたからだ。
マンC、マンUともに景気が良いのは、原油価格は下がったとは言え中東のオイルマネーは健在で、米国の資本主義も完全に息を吹き返したからだ。
うなぎ上りの放映権料
こんな大金がどこから湧いてきたのかというと放映権料が大きい。2016/17年シーズンからプレミアリーグの放映権料(3年契約)は30億1800万ポンド(約5553億円)から51億3600万ポンド(約9450億円)にハネ上がる。
英中央銀行・イングランド銀行が利上げに踏み切ればユーロに対してポンドはさらに強くなる。強い通貨がカネを呼び込み、プレミアリーグは世界中の才能を集められる。視聴率がアップしてクラブの収益が上がり、移籍にさらにカネを投入できる。まさに上昇スパイラルだ。
最下位のクラブでもシーズンごとに9900万ポンドが手に入るのだ。国際会計事務所デロイトによれば、プレミアリーグのクラブ全体で1999年以来初めて税引き前の利益を計上した。
衛星放送やインターネット放送が普及し、プレミアリーグの視聴者は欧州にとどまらず、米州、アジア、アフリカに広がっている。巨額の放映権料だけでなく、関連グッズの販売収入も大いに期待できる。
(おわり)