日産アリアに見る、これからのオンライン新製品発表会の形
電気自動車で自動車業界をけん引する日産から、SUVでありながら、高級車であり、電気自動車であるというまたこれまでとは違うカテゴリーの日産アリアが発表されました。
特にハイパワーモデルは、2モーターで290kW。0から100km/hの加速力は5.1秒といういわゆるスーパーカークラスのモデルです。さらにハンズフリー運転までサポートする、さらに進化したプロパイロット2.0も搭載されています。
ただ、今回注目したいのは、その車の内容もさることながら、その新車発表会のやり方です。日産アリアの発表会がYouTubeなどで配信されることは事前に予告されていました。
今、振り返ってみれば、この予告が普段の日産のツイッターアカウントではなく、日産グローバルのアカウントからの予告であったことで、その後の様子を予測することは可能でした。
というのも、日産では以前より発表会の様子をライブ配信する試みは行われていました。新型コロナの影響が出始めた3月にも、休館している「日産ヘリテージコレクション」から中継をしていたほどです。
いわゆる製品発表会のことを考えると、世界でも最も注目を浴び、かつ見ている人の数も多い発表会の1つがアップルのWWDCです。WWDCといえば、豪華なゲストでも知られていたので、いわゆる無観客発表会みたいなものが予想されていた中、実際に配信されたのはハリウッドで作られたドラマばりにこれでもかと作りこまれた作品のような動画でした。
2時間弱の長さですが、お客さんの反応を待つ時間を作らなくてもいいおかげか、普段の倍以上と感じられる内容がつめこまれた圧巻の発表会でした。WWDCの上の動画が終わった時、その発表内容もそうですが、これはこれからの発表会のあり方に大きな影響を与えるだろうなあと思ったものです。
さて、話を戻します。では、日産アリアの新車発表会はなにがあたらしかったのでしょうか?
ひとつには、これはもうWWDCのアップルでも体験済みのことですが、今回もライブ配信だと思っていたら、作りこまれた動画のプレミア配信であったこと(過去2つの新車発表会では日産はライブ配信を行っていました)。
当日は、私も普通にそのプレミア配信されていた日本語の動画を見ていたのですが、あとで気づいたのが、プレミア配信されていたのは、日本語の動画だけではなく、英語の動画も同じタイミングで配信されていたのです。
▼新型車「#日産アリア」発表記者会見
▼Nissan Ariya Digital World Premiere
あ、そうか!だから発表会の予告はグローバルアカウントだったんだと納得しつつ、上記の発表会の動画でMCを野口美穂さんがつとめられたことにも合点がいったのです。
野口美穂さんはバイリンガルで国際イベントのMCなどもされている方です。そして、それ以上に運転する人たちの間では、Googleマップのナビ機能の初代の声の人として知られている方でもあるわけです。車でかつ日本語と英語で同時に発表する発表会のMCとして、実に最適な人選と言えるでしょう。
ということで、ちょっと整理しましょう。
- ミスの危険性のあるライブ配信よりもちゃんと準備のできる作りこんだ動画のプレミア配信
- 商品がグローバルなものであれば、日本語英語の同時配信
- 動画的に見栄えのする効果をいくつか仕込む(アリアではプロジェクションマッピングと透過ディスプレイ)
- 知っている人ならわかる読み込めるネタを仕込んでおく
そして、さらに付け加えるとすると、アップルのWWDCがそうであったように、新製品の発表会に登壇するエグゼクティブのみなさんには、こういった動画での表現力まで求められる時代になってきたということですね。
そりゃ、アップルだからできること、日産だからできることという声もあるでしょうが、これらの対応できるところとできてないところで、大きな差のついていく時代になったということなのだと思います。
なにしろ、アップルのWWDCのYouTubeはすでに1000万近い再生回数になっており、日産アリアのYouTube動画も2つ合わせると公開3日で20万を超える再生回数となっているのですから。