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中国人観光客が「爆買い」ならぬ「爆・花見」で日本旅行を満喫中

中島恵ジャーナリスト
中国人から見ても、桜は日本の象徴だ

春節が終わったのに、都内の電車や地下鉄内で、平日の昼間でもけっこう中国人観光客の姿を見かける、という人は多いのではないだろうか? 私も「大型連休でもないのに、どうして?」と一瞬疑問に思ったが、すぐにその謎は解けた。彼らの目的はズバリ「お花見」だ。

今年1~2月だけでなく、3月以降も北京の日本大使館や上海の日本領事館などでは、日本へのビザ発給件数が減少しておらず、今も続々と中国人が来日しているという。東京、大阪、京都などでは中国人の花見客の影響で、満室状態になっている。

中国人にとって、日本の代表的なイメージといえば「桜、温泉、ラーメン」だ。着物や雪景色、抗日ドラマ、アニメ、コスプレという声もあるが、何といっても多くの中国人の心をつかんでいるのはこの3つ。中でも、桜は日本の象徴なだけに「いつか日本に行って、桜の並木道を歩きたい。桜の木をバックにしてきれいな写真を撮りたい」と憧れる中国人は非常に多い。

中国にも桜の木がないわけではない。上海などは東京や大阪と気候が似ているので、お花見で有名な公園もがいくつもあるのだが、日本人のように地面にシートを敷いて、お弁当やビールを持ちこんで宴会をする、といった独特の風景はあまり見られない。それに、植樹してから何十年という古い木や桜の種類も日本ほど豊富ではなく、東京の千鳥ヶ淵や隅田川沿い、上野公園のように桜の木が大量に植えられている名所も多くない。

そうした理由もあって、自然と「やはり日本に行くなら桜の季節。桜の本場、日本に行って、日本人みたいにお花見を体験してみたい」という願望が強くなるのである。

私も東京・四谷にある土手を通りかかった際、中国人観光客を見かけた。桜の名所ではないので「えっ、こんなところにも?」と思ったが、今やどこにでもいるのが中国人観光客である。人がそれほど多くなく、かつ、人間の背丈に近い位置で花が咲いている桜の木は、写真撮影にはうってつけ。歓声をあげながらカメラを片手に、ポーズをとって写真撮影をする中国人たちの姿は、微笑ましくもあった。

以前取材した上海の20歳の青年は、日本のアニメがきっかけで日本好きになったが、まだ来日したことはないという。その彼が「いつか満開の桜をこの目で見てみたい。日本人の生き方を表すものとして、僕はいつも桜を思い浮かべる。日本人は毎年桜が咲くのを心待ちにして、桜が咲いたらみんなで喜び、散った花びらまでも愛おしむのでしょう?そんな日本人の生き方に憧れています」と、率直に話してくれたことを思い出した。

今週はちょうどお花見に最高の天気だ。中国のみならず、欧米や東南アジアからも大勢の花見客が来日している。彼らが母国に帰って、日本のよさや、日本の美しい風景を少しでも伝えていってくれたらいいなと思っている。

ジャーナリスト

なかじま・けい ジャーナリスト。著書は最新刊から順に「日本のなかの中国」「中国人が日本を買う理由」「いま中国人は中国をこう見る」(日経プレミア)、「中国人のお金の使い道」(PHP新書)、「中国人は見ている。」「日本の『中国人』社会」「なぜ中国人は財布を持たないのか」「中国人の誤解 日本人の誤解」「中国人エリートは日本人をこう見る」(以上、日経プレミア)、「なぜ中国人は日本のトイレの虜になるのか?」「中国人エリートは日本をめざす」(以上、中央公論新社)、「『爆買い』後、彼らはどこに向かうのか」「中国人富裕層はなぜ『日本の老舗』が好きなのか」(以上、プレジデント社)など多数。主に中国を取材。

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