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帰省時、ちょっと心配な高齢の親の生活を確認するには? ~7つのチェックポイント

宮下公美子介護福祉ライター/社会福祉士+公認心理師+臨床心理士
年末年始に帰省したら、高齢の親の生活に異変がないか、よく確認しておこう。(写真:アフロ)

親の気持ちに配慮しながら、生活や心身の状態をチェック

年末年始、高齢の親が暮らす実家に帰省する人も多いだろう。親の言動や家の中の様子に何となく違和感を覚えたとしたら、元気そうに見えても、もしかすると何らかのサポートが必要な状態になっているかもしれない。滞在中、親の様子をよく気をつけて見てみよう。ここでは、認知症の可能性なども意識し、気をつけたいチェックポイントを紹介したい。

チェックポイントの前に伝えておきたいことがある。

親子であっても、親の気持ち、生活に土足で踏み込まない配慮が必要だということだ。親にもプライドがある。子から気にかけてもらえるのはうれしくても、心配される=能力が衰えたと思われている、と感じ、受入れがたく思う人もいる。

子の配慮が足りず、プライドを傷つけられたと感じた親が態度を硬化させ、子の言うことに耳を貸さなくなるケースは、実は多い。子から見ればサポートが必要でも、いつまでも親らしくありたい、威厳を保ちたいと思う親もいる。そういう親には、その思いに配慮した対応を心がけたい。

では、チェックポイントを見ていこう。

親といい関係を保つためには、親の気持ちへの配慮が必要だ(フリー画像)
親といい関係を保つためには、親の気持ちへの配慮が必要だ(フリー画像)

チェックポイント1

家の中の様子に変化はないか

きれい好きでいつも家の中をきちんと整えていた親だったのに、部屋が雑然としている。そう感じたら、片付けようという様子は見られるのに片付けられないでいるのか、片付ける気がないのかを見極めよう。

「家の中の様子、ちょっと変わったね」など、やんわりと声かけをして、親がどう答えるか反応を見るのもいい。「そんなことはない!」と拒否的な反応なら、そのときは無理に踏み込まないことだ。「困っていることがあったら力になりたいと思っているから、声をかけてほしい」と、サポートしたいという気持ちだけ伝えておこう。そうすれば親の方からも相談しやすくなる。

【片付けられない場合】  

膝が痛い、腰が痛い、手が上がらないなど、体の不調によって片付けられない場合がある。体の具合を聞いてみよう。体の機能の低下がある場合、介護保険の要介護認定を申請すれば、要介護度がつくかもしれない。申請の方法などについては、実家の近くの「地域包括支援センター*」に相談してみよう。

片付け始めたと思ったら、すぐに別のことに気が行って集中できず、片付けられないこともある。以前はそんなことはなかったのに、と感じたなら、もしかすると認知機能が低下して、集中力が続かないのかもしれない。

認知症の可能性を考え、「神経内科」「老年科」「物忘れ外来」「メモリークリニック」などの受診を検討したい。まず、かかりつけ医に相談し、前述の診療科への受診が必要なら紹介状をもらうとスムーズだ。

かかりつけ医が特になく、最寄りの受診先がわからない場合は、「地域包括支援センター」に相談するといいだろう。

*地域包括支援センター……中学校区に1カ所ある、高齢者の介護や困りごとについての総合相談窓口。エリアごとに担当のセンターが決まっているので、インターネットの検索サイトで、実家がある市町村名と「地域包括支援センター」を入力し、担当のセンターを調べるといい。

【片付ける気がない場合】  

認知機能が低下し、散らかっているという感覚が乏しくなっているのかもしれない。やはり、認知症の可能性を考え、受診を検討した方がいいだろう。

いずれにせよ、部屋が散らかり、雑然としていると、家の中での転倒・骨折のリスクが高くなる。できるだけものを減らして、つまずいて転ぶことがない環境にしておきたい。

片付けられないのか、片付ける気がないのかで対応は異なる(フリー画像)
片付けられないのか、片付ける気がないのかで対応は異なる(フリー画像)

チェックポイント2

郵便物がたまっていないか

たくさんの郵便物が、開封されないまま放置されてはいないだろうか。重要な郵便物と不要なDMが見分けられなくなっているのに、子に大量の郵便物を見られたくなくて、布をかけて隠していたというケースもある。次項で詳しく伝えるが、督促状の見落としなどがあると怖い。

郵便物がたまっていたら、「うちでもそうだけど、DMって、ちょっと放っておくとたくさんたまって困るよね」など、親のプライドを傷つけない声かけをして郵便物を見せてもらおう。

チェックポイント3

請求書は処理できているか

年金が振り込まれる口座と、電気やガス、電話代などの引き落としの口座が違う場合など、うっかりすると引き落としの口座が残高不足になることがある。引き落としできないと督促状が来るが、それに対応できずにいると、電気などのライフラインがストップするという怖い事態になる。請求書や督促状などが放置されていないか、よく確認しておきたい。

また、通販などでの買い物好きな親は要注意だ。同じ商品を何度も注文していたり、買ったものの代金を支払っていなかったりという場合もある。督促状が来ている場合は、自分で支払い手続きをするのが難しくなっている可能性が大きい。

といって、これを声高に指摘したり、とがめたりすると、言い争いになりかねない。認知機能の低下は、本人も気づいていることが多く、だからこそ認めたくないと思っている場合もある。あえて指摘せず、黙って支払っておくことも考えよう。

DMがたまりすぎると、大切な郵便物を見落としてしまう恐れがある(フリー画像)
DMがたまりすぎると、大切な郵便物を見落としてしまう恐れがある(フリー画像)

チェックポイント4

冷蔵庫に消費期限切れ食品がたまっていないか

高齢者の家庭では、消費期限切れの食品が冷蔵庫に入ったままになっていることがしばしばある。帰省したら、冷蔵庫の中を確認して、消費期限切れの食品を処分しておきたい。調味料などであれば、それほど大きな問題はないかもしれないが、生鮮食品などは食中毒の恐れがある。

「もったいない」といって処分したがらない高齢者も多いので、見つけたときはこっそり処分した方がいいかもしれない。同じ食品がいくつも入っている場合は、認知症の可能性もある。受診を検討しよう。

チェックポイント5

持病の状態はどうか

親に持病があるなら、今、体の状態はどうなのか、医者から何に気をつけるよう言われているか、まず本人に確認してみよう。そのとき、あやふやな答えしか返ってこないようなら、一度かかりつけ医の受診に付き添うといい。

しっかりしているようでも、年齢が高くなると、医師の説明を十分理解できていないこともある。本人が子どもに付き添われるのをいやがる場合は、事前に医師に連絡の上、本人とは別に挨拶に行くといいだろう。

高血圧など、親の持病の状態もよく確認しておこう(フリー画像)
高血圧など、親の持病の状態もよく確認しておこう(フリー画像)

チェックポイント6

処方薬の飲み忘れがないか

処方薬がきちんと飲めているかどうかも確認しておきたい。処方された日から計算して、大幅に薬が余っているようなら飲み忘れが多いということだ。医師に相談すると、1日3回服用の薬を、朝晩の1日2回や1日1回の薬に変更してもらえることもある。

また、複数の薬を服用している場合は、特に飲み間違いが起こりやすい。医師に相談し、飲み間違いが起こらないよう「一包化*」してもらおう。

*一包化……朝昼晩それぞれに飲む薬を、包装から出した錠剤やカプセルの状態で小袋にひとまとめにすること。医師の指示により、薬局で「12月31日 朝」など、服用1回分ごとに日付などを印刷した小袋にまとめて出してもらえる。ただし、薬が包装から出されているので、指示通りに飲みきらずに取っておくと、薬が変質する恐れがある。注意したい。

【飲み忘れが多い場合】  

飲み忘れ、重複服用を防止するグッズに、月~日の各曜日×朝・昼・晩・寝る前の28のポケットが付いた「お薬カレンダー」というものがある。ポケットに服用1回分の薬を入れ、飲み終えたら薬の飲み殻を入れておけば、飲み忘れも重複服用も避けやすい。薬局などに売っているので、活用したい。

薬の飲み忘れや重複服用の防止に役立つ「お薬カレンダー」を活用し、朝晩、「薬飲んだ?」と電話を入れると服用リズムがつきやすい(フリー画像)
薬の飲み忘れや重複服用の防止に役立つ「お薬カレンダー」を活用し、朝晩、「薬飲んだ?」と電話を入れると服用リズムがつきやすい(フリー画像)

チェックポイント7

近所づきあい、趣味の活動はできているか

親の近所づきあいや趣味の活動については、把握できているだろうか。もし知っているなら、その話題を出してみよう。

【話をしてくれる】  近所づきあいや趣味の活動の話をいろいろ聞かせてくれるなら、おそらくそれまで通りうまくいっているのだろう。できれば、親が親しくしている人に挨拶に行き、「何かあったら連絡してほしい」と、自分の連絡先を伝えておくと安心だ。

【話をしようとしない】  もともと近所づきあいや趣味の活動をしていない場合はともかく、それまでは付き合い、活動をしていたのに、聞いても答えない場合は、何かトラブルがあったか、付き合いや活動の意欲を失っているのかもしれない。これも少し心配だ。認知機能が低下したために、トラブルが起きたり、意欲を失っている可能性もある。

付き合い、活動をしなくなった理由について、やんわりと聞いてみよう。答えてくれない、答えられない場合は、元々親しかった近所の住民にそれとなく話を聞いてみるのもいい。

番外

できれば家計、資産の状況の確認を

帰省した際に、聞きにくいけれど聞いておきたいのが、家計や資産の状況だ。貯蓄額や年金受給額、負債額、月々の生活費、通帳や印鑑、保険証の保管場所などは、できれば親がしっかりしているうちに把握しておきたい。

親が急に倒れたり、認知症の症状が出てきたりしたとき、家計の状況、通帳等の保管場所がわからないと、医療費や介護費をどうやって支払うかなど、対応が難しくなるからだ。

家計と資産のことは、親が元気なうちに聞いておきたい(フリー画像)
家計と資産のことは、親が元気なうちに聞いておきたい(フリー画像)

しかし、お金の話はデリケートだ。聞こうとすると、「今から遺産目当てか!」など、怒る親もいる。そう言われると、つい言われた側も腹を立ててしまいがちだが、親の怒りに過剰に反応しないことが大切だ。

少し時間をおいてから、「何かあったときに支えていきたいと思っているから、元気なうちに教えてほしい」と、冷静に誠意を持って話してみよう。一度の帰省では、教えてもらえないかもしれない。しかし、親を思う気持ちが伝われば、いずれは理解してもらえるだろう。

以上、帰省時に確認しておきたいことをまとめてみた。親子という近い関係だからこそ、聞きにくい、言いにくいことは多い。しかし、急に親が倒れて、「早く聞いておけばよかった」「もっと気にかけておけばよかった」と嘆く子世代の声は多い。そういう日が、いつ来るかわからない。後悔することがないよう、行動したい。

介護福祉ライター/社会福祉士+公認心理師+臨床心理士

高齢者介護を中心に、認知症ケア、介護現場でのハラスメント、地域づくり等について取材する介護福祉ライター。できるだけ現場に近づき、現場目線からの情報発信をすることがモットー。取材や講演、研修講師としての活動をしつつ、社会福祉士として認知症がある高齢者の成年後見人、公認心理師・臨床心理士として神経内科クリニックの心理士も務める。著書として、『介護職員を利用者・家族によるハラスメントから守る本』(日本法令)、『多職種連携から統合へ向かう地域包括ケア』(メディカ出版)、分担執筆として『医療・介護・福祉の地域ネットワークづくり事例集』(素朴社)など。

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