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慶応義塾大学・古田京キャプテン「最後の最後まで勝ち切る」の意味語る。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
夏はイングランド代表ヘッドコーチのエディー・ジョーンズから特別セッションを受けた

 持ち前のしぶとさを見せつけた。

 日本ラグビー最古豪の慶應義塾大学ラグビー部は、11月4日、東京・秩父宮ラグビー場で加盟する関東大学対抗戦Aの明治大学戦で28―24と勝利。対抗戦での同カード2連勝を決めた。

 対する明治大学は昨季、19シーズンぶりに大学選手権決勝へ進み、今季は大学選手権9連覇中の帝京大学に春季大会、夏合宿の練習試合で連勝するなど好調を維持していた。もっともこの日は、慶応義塾大学がタフなタックルを繰り出し接戦に持ち込む。スクラムで自軍ボール確保に苦しみながら、後半終了間際に逆転。以後はボールキープを重ね、逃げ切った。

 これで対抗戦の戦績を4勝1敗とした。10月21日には王者・帝京大学に19-24と迫りながら悔し涙を流していたとあって、今度の勝利は貴重な成功体験になったと見られる。

 試合後、金澤篤ヘッドコーチと古田京キャプテンが会見した。

 以下、共同会見中の一問一答の一部(編集箇所あり)。

金澤

「こういった接戦になるだろうと思っていましたが、勝負どころのスクラムでフォワードが一体となってくれたことがよかった。先々週は接戦で悔しい負けをしたので、勝利したのは良かった」

古田

「まず、秋の対抗戦の試合で最後に僕たちの方が点数で勝っていたことを喜びたいです。80分間、最後の最後まで勝ち切るという練習をしてきたので、本当によかったと思います」

――後半36分の逆転トライについて。敵陣ゴール前右のスクラムの脇を、ナンバーエイトの山中侃選手が抜け出した形でした。

古田

「色んなオプションがあるなか、(スクラム)ハーフと(ナンバー)エイトがそのプレーを選んだという形です」

――「最後の最後まで勝ち切る」。具体的に何をしようとしたのでしょうか。

古田

「まずアタックではボールを継続。外に回す明治大学さんに対し最後までいいディフェンスをする。最後、4点差で勝っているシチュエーションもしっかり考え、ああいう風に時間を使いながらボールを継続するところまで(事前に)練習していました。それが、最後の最後まで勝ち切る、ということです」

――選手起用および交代策について。

金澤

「スタートの15人は、その週で一番パフォーマンスがいいであろう選手を並べています。交代については、ゲームの様子を見て自分たちがどこのエリアで勝っていて、どこのエリアで負けているのかを踏まえ、少しずつ(選手を)入れていく。最初から『こう』と決めるのではなく、微調整しながらやっています。ただフロントロー(フォワード第1列)のところは(ポジションの特性上)80分間持たせるのは難しいので、何となく(交代させるタイミングは)頭のなかにあります。そのうえでセットプレーの状況を見ながら、決めます」

――きょうはそのフロントロー3名のうち2名を後半10分に交代しました。それまで、自軍ボールスクラムを何度もターンオーバーされるなど苦しんでいました。

金澤

「一番は、後半最初と、2つ目のスクラムです。相当、食い込まれていたので。自分はフロントロー出身ではないのですが、やはり(対戦するフロントローとの)相性もある。フレッシュな人を入れて流れを食い止めたいなと、(リザーブの安田裕貴、大山祥平を)予定より早めに投入しました。

(逆転劇を生んだ際は)自分たちのスクラム、フォーカスしている低さにこだわれた。代わった選手が意識統一して自分たちのスクラムが組めたと思います」

――リーダー陣の成長について。

金澤

「帝京大学にあと一歩のところで勝てなかったことなど、いい経験をしていると思っています。そしてきょう勝てたことは、リーダー陣が出ている選手を意思統一させて出ている成果だと思います。これからもいろんな経験をしなくてはならないと思いますが、一歩、一歩、ステップアップしたい」

――フィジカル面で自信を持てたのでは。

古田

「背が低い、体重が軽いというところはあるかもしれませんが、それでフィジカルで負けると考えたことはないです。普通にやれば、普通にやれる」

――次は11月23日、秩父宮で早慶戦(対早稲田大学戦)を迎えます。

古田

「今日は勝って嬉しいですけど、対抗戦のひとつの試合です。次も対抗戦のなかですごく大事な試合なので、今日までのようにしっかりいい準備をして、80分、勝ち切るラグビーがしたいです」

金澤

「1月12日の大学選手権決勝に行くまでのひとつのステップ。プロセスを大事にしたいですし、早稲田大学にも勝ちたい。しっかりいい準備をしたいと思っています」

 クレバーなスタンドオフとして定評を集める古田は、簡潔な指針を打ち出すリーダーとしても知られる。帝京大学戦での惜敗を受けてテーマを「最後の最後まで勝ち切る」とし、そのメソッドを細かく設定していたあたりにらしさがにじんだ。伝統の早慶戦でのプランも注目される。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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